【ヘンな食べ物】(18) ワニ肉は“進化の味”

野生動物の中で、ワニほど“優秀な食品”はない。先ず、捕獲が面白い。アマゾンでは、漁師のワニ狩りに同行した。夜中にボートを出し、草が生えている岸辺を懐中電灯で照らすと、沢山の目が反射して光る。どれもワニだ。2つの光の間隔で、個体のサイズがわかる。なるべく大きめのを狙い、スーッと突っ込んでいき、銛でズバッと突く。ワニは銛が刺さったまま、物凄い勢いで暴れて逃げるが、クジラ漁と同様、銛にはロープが付いており、漁師は少しずつ手繰り寄せる。弱ってきたワニを陸地にズルズルと引き上げると、「ウッ、ウッ」と唸り声を上げながら近付く。ワニが恐れるジャガーの声だという。こちらがハラハラして見守る前で、漁師はワニの後ろから近付き、いきなり頭をバコッと足で踏みつけた。間髪入れずに、首をナイフで掻き切る。流れるように見事な手際だった。ワニは便利でもある。アフリカのコンゴでは、川旅の途中で“ワニ市場”に遭遇した。生きたまま口と足を縛られたワニが、十数匹も川岸にゴロゴロ転がっているのだ。私も1匹買い込み、そのまま丸木舟に放り込んで旅を続けた。ワニは、1週間くらい餌も水もやらずにいても元気で生きているから、好きな時に捌けばいい。いつでも新鮮な肉が食べられる。そして、肝心のお味はというと、これが最高に美味い。固い皮で覆われているせいか、野生動物の肉と思えないほど柔らかい。口に入れた時は白身魚のようで、でも噛んでいると段々歯応えが出てきて、飲み込む時には鶏肉そっくりの味になる。なるほど、魚類が進化して爬虫類になり、更にそれが進化して鳥類になった訳だ。味覚で進化の道筋を辿れてしまう。便利で美味しくて面白い。ワニほど“優秀な食品”はないという所以だ。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月21日号掲載
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