【ブラック企業をブッ潰せ!】(03) 投資家目線で問う働き方改革注目15社の本気度

少子化に対応して変化できない企業は、投資対象として評価できない。新卒採用が困難な時代に、育児・介護で離職する従業員を放置する企業は、人手不足に苦しむ。 (『楽天証券』経済研究所長 窪田真之)

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働き方改革や女性の活用に真剣に取り組む企業は“買い”だ。働き方改革の進んでいる企業に投資することで、『東証株価指数(TOPIX)』を上回るパフォーマンスを得られる傾向が強まると考えている。その視点から、働き方改革の進んでいる企業を具体的に紹介したい。産業別では、銀行・保険等の金融業に先進的な企業が多い。大手金融機関では、結婚・子育ての為に退職した女性に、子育てが一段落したところで、職場復帰的に呼びかけている。更に、今いる女性従業員が結婚・出産を機に退職せずに働き続けられるように、産休や育児休暇、育休後に職場復帰した場合の手当てを充実させている。『三井住友フィナンシャルグループ』は、『三井住友銀行』で1万8000人を対象に在宅勤務を導入しており、育児・介護支援として、自宅最寄りの支店に出勤できる制度を設けた。金融機関の先進例では、男性の育休取得比率が6割を超えた企業がある。今の20代・30代が共働きで、育児・家事・介護を分担していく世代であることを理解して、それに対応できる人事制度への作り替えに取り組んでいる。地方銀行の中には、共同で人材活用ネットワークを作るケースがみられる。例えば、夫の転勤に伴い、転居・退職せざるを得ない女性従業員を、転居後の提携先地方銀行で雇用する取り組みだ。製造業では、未だ働き方改革が進んでいる企業は多くない。工場を日本に作っても、働く人材を集めることができない為、新規の設備投資は殆ど海外で行うようになっている。結果的に、働き方改革への取り組みが遅れている。製造業でも、一部には働き方改革に積極的に取り組んでいる企業もある。「元日の午前中を除いて365日働く」という日本を代表する“モーレツ社員”として知られる『日本電産』の永守重信会長兼社長が、「2020年に残業ゼロを目指す」と企業方針の大転換を宣言した。また、『ダイキン工業』は“フレックス”や勤務時間を一定期間で捉える“変形労働時間制”等、働く時間を柔軟に設定できる制度を導入している。その他の業種では、長時間労働が当たり前だった『リクルートグループ』で“リモートワーク”(職場外での勤務)の本格導入や事業所内保育所を整備する等、ここ1~2年で急激に変化の兆しがみえる。『ヤフー』の宮坂学社長は、全従業員を対象に週休3日制を検討していることを表明。在宅勤務『どこでもオフィス』を月5回に拡大する等、新しい制度を導入する働き方改革の先進企業だ。

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長期的な投資銘柄を選ぶに当たり、その企業の働き方改革がどこまで進んでいるかを見極めるには、どうすればいいだろうか。企業の制度や職場の雰囲気を直接見ることは難しいが、幾つかの指標から判断することができる。長時間労働から脱し、多様な働き方を促進することで多様な人材を活用し、生産性を高めている企業は、次の2つの特徴がある。1つは、男性の育休取得率が高い。そういう企業は、必然的に残業時間が短く、全従業員の有給休暇取得率が高くなる。そしてもう1つは、女性従業員の平均勤続年数が男性の75%以上。短時間勤務・フレックス・テレワーク等、多様な動き方が定着した結果、女性の離職率が下がり、男女の平均勤続年数の差が縮小する。抑々何故、働き方改革への取り組みを投資基準として重視すべきなのか、説明したい。「『結婚で辞める女性が出たら代わりを採ればいい』なんて能天気なことを言っていられる時代は終わった」――。大手金融機関に勤めている筆者の知人の言葉である。簡単にいい人材を採用できない時代だ。新卒の大学生を戦力にするにはコストがかかるし、折角育てたとしても若手は簡単に辞める。採用に力を入れるより、今いる人材が辞めないようにする為にコストをかけたほうがずっと合理的だ。少子化が、企業の採用活動に深刻な影響を与えるようになっている。日本の人口ピラミッドを見ると、人口が多い団塊ジュニア世代は既に40代になった。40代から30代・20代・10代と若い世代になるほど、人口が減る。景気の良し悪しに関わらず、日本で新卒の一括大量採用は不可能になりつつある。こうした背景から、政府が構造改革の柱と位置付ける働き方改革に、企業も真剣に取り組み始めた。少子化による労働力減少を補うのは、女性・高齢者・外国人の活用である。中でも、女性の長期雇用は重要な課題である。今の20代・30代は、結婚後も夫婦共働きの比率が高い。共働きが一般的となれば、労働力の減少をカバーできる。但し、そこには大きな壁がある。日本企業には、慢性的な長時間労働を当たり前とする風潮が根強く残っていることだ。共働き世帯が家事・育児・介護を分担できる人事制度に、早急に変えていく必要がある。①子供を育てる従業員に対して1日6時間に短縮した勤務を認める短時間勤務制度・②勤務時間を柔軟に変更できるフレックスタイム制度・③自宅等会社以外で仕事をするテレワーク――等、多様な働き方ができるよう、家事・育児・介護を抱える従業員の為に制度を整える必要がある。産休・育休・介護休暇を充実させる必要もある。それが、結婚・出産や、介護による退職を防ぐ対策となる。

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働き方改革には、生産性を高める効果もある。“会社にいる”ことではなく、“決められた役割を果たす”ことが問われるようになるからだ。従業員の役割分担を明確にし、多様な働き方で貢献できるようにすることで、多様な人材が会社に貢献できる“働き方の構造改革”が必要となる。筆者がある会合で、「働き方改革や女性の活用に真剣に取り組む企業は“買い”だ」と話したところ、「業績が良く、株価が上昇している企業だからこそ、働き方改革にコストをかけるゆとりがあるのでは?」と反論した人がいた。未だに採用の現場で起こっている現象を理解できていない経営者も多い。投資基準としての企業評価に当たり、“ESG”を重視する流れがある。“環境経営(Environment)”・“社会的責任(Social Responsibilities)”・“企業統治(Governance)”の3つである。ESGに対して日本の機関投資家は、欧米の投資家とは異なる対応をしている。“E”と“G”は、短期的な株価を大きく左右する事例が増えており、銘柄の選別において重視している。特に、ガバナンスは企業価値に及ぼす影響が大きく、専任のアナリストを置いて重点的に調査する機関投資家も多い。日本では、働き方改革について、企業が取り組む社会的責任――つまり“S”と見做して、投資家は目を向けていないのだろう。“S”について日本の機関投資家が重視しているとは、未だ言えない。長期的に見れば、企業価値に大きな影響を与えることもあるが、短期的な影響は限られるからだ。日本では、年金基金ですら短期的な運用成果を厳しく問われる。筆者は、働き方改革に対する姿勢について、「企業のガバナンスの問題だ」と考えている。5年・10年先の企業経営を考えると、少子化への対応は待ったなしだ。そういう状況にあって働き方改革に取り組んでいないということは、経営にとって必要な手を打っていないことになり、ガバナンス上の問題がある。日本の機関投資家は、その重要性に気付いていないのではないだろうか。「働き方改革に取り組む企業は、長期的視野を持って経営をしている」ということであり、投資において重要な判断基準だ。実際、中期経営計画の説明会でも、働き方改革に積極的に取り組んでいる企業は、長期的な経営戦略を具体的に語る。今後は、働き方改革の進捗状況が投資基準としてより重要になる。中長期的な投資先企業は、成長や配当等株主還元だけでなく、働き方改革の先進性にも是非注目してほしい。


キャプチャ  2016年12月13日号掲載

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