【Global Economy】(17) 習近平政権、経済も力で統制…減速中国、改革開放に逆行か?

中国の習近平政権の特徴は、力の行使を躊躇わないことだ。経済もまた、政治の力で統御しようとしているかに見える。市場経済化を進めながら発展に全力を注いだ改革開放路線とは、明らかに異なる。経済の減速が深刻化する一因は、その習路線にある。 (本紙中国駐在編集委員 杉山祐之)

20161226 10
中国のインターネット通販最大手『アリババ集団』の馬雲会長が先月、上海での講演で唐突に語った。「今後30年、計画経済(の比重)が益々大きくなっていくだろう」。インターネットを舞台に、浙江省の一教師から大実業家に駆け上がった改革開放の風雲児の発言は、大きな話題となった。嘗て、計画経済下の苦境を味わった中国で今、「市場経済化の流れが逆行しつつある」(エコノミスト)との不安が、水面下で急速に広がっているのは確かだ。習氏は改革開放の継承を明言しつつも、嘗てのように成長速度だけに拘りはしない。経済の減速を“新常態(新たな通常の状態)”と言い換えて容認し、構造改革を命じる。貧富の格差拡大・腐敗の蔓延・環境破壊等、発展至上主義の歪みの是正も強調する。持続的な安定成長を目指す方向性は妥当と言える。しかし、習氏の実際の政策はどうか。株式市場への露骨な介入・人民元レートの不透明な変動・国有企業を更に強めて民間企業を圧迫する“国有企業改革”、インターネットを始め経済や社会活動の全般に対する引き締め――。一言で言えば、“中国共産党が主導し、統制する経済”だ。複雑で巨大な中国経済を軟着陸させるには、国家のコントロールと市場の調整機能の双方を調和させた舵取りが大事になるのは、言うまでもない。だが習氏は、党の意思を市場の上に置いている。日米両国や『ヨーロッパ連合(EU)』は、中国を『世界貿易機関(WTO)』が定める“市場経済国”と認めていない。来月就任するアメリカのドナルド・トランプ次期大統領は、中国を“為替操作国”とまで呼ぶ。

今月、IT企業が集まる北京の“起業通り”を訪ねた。大学生らの就業先を確保する為、若者の起業を重視する習政権の後押しで、起業者が自由に利用できるカフェが立ち並んでいる。2年前は夢見る学生らで溢れていた店の多くは閑散としていた。「成功する人は何%か? 1000人に数人だ」。インターネット商取引の拡大を目指す北京の男性(37)は、苛立たし気に話した。福建省から来た大卒2年目の25歳の若者は、パソコンを操作しながら「毎日、『今日は何を食べようか?』と考えている」と言う。これが現実だろう。起業に限らず、党が市場から離れた理屈で打ち出した施策は、至る所で現実の壁にぶち当たっている。“製造業強国”・“民衆重視”を掲げる政権は、ロボット・自動運転車・宇宙開発等、付加価値の高い高度技術産業の育成を強力に指導し、半ば強制的に労働者の質金を上げる。これも方向性は正しい。しかし、新産業が育つ前に、中国経済を支えてきた労働集約型産業は沈没寸前になっている。習政権は今年、「計画経済時代の遺物であり、政府の支援で生き永らえている国有“ゾンビ企業”を淘汰する」と宣言した。予想される100万単位の「失業の大波」(経済専門家)は、労働市場での吸収を図るしかないが、労働者との衝突を予感し、党の足は竦んだ。結果として、“ゾンビ”の多くは安泰だ。半数以上の企業がゾンビという鉄鋼業界は、余剰生産分を安値で世界に垂れ流している。旧ソビエト連邦や中国の社会主義計画経済が崩壊した一因は、官僚の無気力や虚偽報告といった“体制病”だった。似たような症状が、習政権内でも見え始めている。習氏の反腐敗闘争の暴風が吹き荒れる中、官僚は「安全第一で指示待ちに徹する」(党幹部)状況だ。習氏は最近、「幹部・大衆の積極性を引き出す改革を進めよ」と指示した。また、国家統計局長は党機関紙の『人民日報』で、「統計をでっち上げる地方がある」と公に認めた。中国の今年第3四半期(7~9月)の経済成長率は6.7%だったが、報道によると、各省の数学は大半がこれを上回っている。習氏への権力集中も不安要因だ。市場経済化を目指す趙紫陽・朱鎔基・温家宝の各首相が、経済政策のリーダーシップを取った改革開放期と違い、今は、『文化大革命』を発動した毛沢東流の政治を好む習民が、経済も直接指揮している。来秋の第19回党大会で、習氏への権力集中が更に進む見通しだ。党による市場支配の動きが加速する可能性も否定できない。来年の世界経済は、トランプ大統領が就任するアメリカや、イギリスのEU離脱手続きが進むヨーロッパと共に、中国が引き続き大きな波乱要因になるだろう。「中国経済の最大の不安要因?――政治だ」。党関係者が断言した。

■「市場や政府が関わるほど不安定に」  張維迎氏(北京大学国家発展研究院教授)

中国の市場経済化の重要性を訴える著名な経済学者の張維迎氏に見解を聞いた。

中国の市場経済化は、三十数年間に亘って非常に大きな成果を上げてきた。ただ現在は、その速度が遅くなり、後退した分野さえある。例えば、国有企業の比重が大きくなっている。民間企業(の発展)や技術革新にはマイナスだ。過剰生産能力の削減は、淘汰される企業は市場によって決定されるべきだ。政府の命令でやると、「国有企業は守られる一方、(民間の)優良企業が倒され、新規参入もできない」ということになりかねない。長期的発展の為の潜仕力が損なわれてしまう。補助金や税制優遇等で企業を育てる政府の産業政策は、実際には不公平な競争を生み出している。国有企業と民間企業との間の不公平だけでなく、民間企業同士でも「政府と良い関係を持つ企業が優位に立つ」という不公平がある。製造業の転換も、市場を通じたものでなくてはならない。真の“製造業強国”は、政府の手で作り出すことなどできない。株式市場は、依然として政府が主導している。これも変えなければならない。昨年の株価変動が示すように、政府が関与するほど市場は不安定になる。不動産相場も、市場に委ねればもう少し落ち着くだろう。

■EU離脱にトランプショック…揺れた2016年市場
2016年は、年明けから中国経済への不安をきっかけに世界的な株安となり、波乱の幕開けとなった。イギリスのEU離脱や、アメリカ大統領選でのドナルド・トランプ氏勝利等、歴史上の転機となる出来事も相次ぎ、世界を揺さぶった。1月下旬には、上海総合指数が昨年末から約25%も下がり、中国の通貨・人民元は大きく売られた。ニューヨーク市場のダウ平均株価も、2月中旬には昨年末から10%以上値下がりした。世界に大きな衝撃を与えたのが、6月下旬に決まったイギリスのEU離脱だ。投資家の不安心理の高まりから、安全な資産とされる円を買う動きが強まった。ドイツやイタリアの金融不安も重なり、円相場は一時、1ドル=99円台まで急騰した。過激な言動を繰り返すトランプ氏が先月のアメリカ大統領選で勝ったことも、市場を驚かせた。今のところ、トランプ氏が掲げるインフラ(社会資本)投資や減税等への期待が先行し、日米等の株価は大幅に回復している。だが、来月20日の大統領就任後、どのように政権を運営するのか、市場は警戒している。来年は、3月にオランダ下院選挙、4~5月にフランス大統領選、秋にはドイツの連邦議会選挙が行われる。イタリアで今月、憲法改正を巡る国民投票を受けて首相が辞任したように、来年はヨーロッパの政治リスクが市場で強く意識される1年になりそうだ。今月、追加利上げを決めたアメリカの『連邦準備制度理事会(FRB)』の“次の一手”や、中国経済の行方も焦点になる。


⦿読売新聞 2016年12月23日付掲載⦿

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