【霞が関2016冬】(03) 厚労省『ジョカツ部』、働き方改革で苦悩

厚生労働省は今年10月、女性活躍推進に向けて『ジョカツ(女活)部』を立ち上げた。省内に部屋を割り当てられるような部局ではないが、塩崎恭久大臣が直々に20~30代の若手職員を部員に任命。若手の有識者等の話を聞いて、女性活躍推進に向けた“特効薬”を探るのがミッションだ。ジョカツ部は、創部から約2ヵしか経っていないが、今月中に中間的な結論を出す方針だ。政府が年度内に纏める働き方改革の実行計画にも反映させたいからだ。同省幹部は「奇策でも構わない」と発破をかけるが、ジョカツ部は「そう簡単に見つからない」と苦悩している。創部のきっかけは、内閣官房から「働き方改革の目玉として、女性の活躍に繋がる施策を何か考えてほしい」と厚労省へ依頼があったことだ。厚労省は、4月に『女性活躍推進法』を施行したばかり。推進法には、女性の働き易い職場作りをするよう、大企業に実行計画を提出させる内容が盛り込まれている。更に発展させるとすれば、大企業に限っていた実行計画の提出義務を、中堅企業等にも広げることが真っ先に浮かぶ。ただ、この政策は経済界からの反対の声が根強く、調整が進んでいない。厚労省幹部は、「“何れは”という但し書き付きで、実行計画の提出を中堅企業にもお願いするというのはどうか?」と内閣官房に提案した。返答は「NO」。政府の働き改革の目玉で、“何れは”といった中途半端な政策は通用しない。厚労省には、「女性の労働参加を30年間推し進めてきた」という誇りがある。何も出さないのでは、厚労省の面子が潰れる。そこで、厚労省は若手を集め、塩崎大臣直属の女性活躍推進チームであるジョカツ部を創部した。経営者側から反対されず、且つ女性の活躍を後押しする新政策を絞り出すことが求められている。

ジョカツ部は、10月下旬から有識者のヒアリングを開始。重鎮の学者ではなく、若手・中堅に絞り、所謂“ブラック企業”のアナリストである新田龍氏や、ミニ保育所を手掛けるNPO法人『フローレンス』代表理事の駒崎弘樹氏らを招いた。手垢が付いていない“奇策”のヒントが出てくることを期待した。だが、両氏が言及した具体策は、36協定の特別条項廃止やインターバル規制の導入等。36協定は労働基準法36条に基づき、労使協定を結べば残業や休日労働が認められる仕組みで、特別条項を付けると残業時間を制限なく延ばせるというもの。政府は残業時間に上限を設ける検討をしているが、“特別条項の廃止”となると経済界の抵抗は強い。インターバル規制は、従業員が職場を退社してから翌日に出社するまで一定時間を空ける制度だが、こちらもルールの強制的な導入には経済界が難色を示す。共に、奇策と言うより“王道”に近い。しかも、経済界との調整が一筋縄にはいかない政策だ。ジョカツ部の1人は、「わかったのは、奇策が必要なのではなく、経済界等との調整から逃げずに王道の政策を進めることだ」と語る。だが、厚労省内のベテラン官僚の間では、労使の反発を呼ぶような過度な規制導入や抜本的なルール改正には、慎重な意見が強い。ジョカツ部は今月下旬、塩崎大臣に、仕事と育児等の両立を目指す部下を支援する“イクボス宣言”をしてもらうことを予定している。同省幹部らの参加も呼びかけ、「土日・定時以降に仕事を依頼しない」等6項目を宣言してもらう。柵の少ない“奇策”だが、飽く迄も上司の自主的な行動に頼っている。功を奏すかは未知数だ。経済界等との調整から逃げずに王道の政策を推すか、調整が必要ない奇策を立てるか――。厚労省幹部が「労使の難しい調整を回避しながら、内閣官房を納得させる対策を考える」というミッションを丸投げしたというのが真実だとすれば、ジョカツ部の苦悩は簡単に晴れそうにない。 (矢崎日子)


⦿日本経済新聞電子版 2016年12月20日付掲載⦿
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