【霞が関2016冬】(04) 国債減へ繰り出した“奥の手”…2017年度予算案

「主計局が国際局から“ぶんどった”ような予算編成だった」――。政府が今日閣議決定した一般会計の歳出総額が97兆4547億円の来年度予算案について、財務省主計局のベテラン職員は自嘲気味に振り返る。“ぶんどった”という穏やかでない表現を使ったのは、外国為替資金特別会計の運用益2.5兆円を一般会計の歳入に繰り入れたこと。財務省で為替政策等を担当する国際局は、過去の円売り・ドル買いの為替介入で得たドル建て資産を同特会で管理している。同局としては、相場の急変動に備えて、運用益をある程度は特別会計に残しておきたい。ところが、財務省内で最も力が強く、予算編成を担当する主計局は、「一般会計が苦しいから」(幹部)との理由で、同特会の運用益の一般会計繰り入れ率を、前年の約6割から全額へと引き上げた。特会からの繰り入れ増額によって、来年度予算案の税収以外の歳入である“その他収入”は5兆3729億円と、前年から6871億円増。高齢化による社会保障費の自然増という歳出の増大を帳消しにできる規模だ。税収が前年比1080億円増に伸び悩む中で、新たな借金となる新規国債発行を僅かに減らせたのは、外為特会の“おかげ”に他ならない。今回の予算編成は、社会保障費や公共事業といった歳出の行方が先月末までに大筋見えた。半面、税収やその他収入という歳入は、今月に入って目まぐるしく揺れた。口火を切ったのは、今年度税収の下方修正だ。財務省は今月1日、57.6兆円と見込んだ今年度税収の見積もりを2兆円近く下方修正する方針を安倍晋三首相に伝えた。年初からの円高で、上半期の企業業績は振るわなかったのが主因だ。

“アベノミクスの失敗”という批判は避けたいものの、「実態に即した税収の下方修正は仕方ない」(財務省幹部)という判断に傾いた。来年度予算案に盛り込む税収見積もりは、今年度の直近見通しを土台に弾く。今年度税収が大幅に落ち込んだ以上、政府経済見通しの名目2.5%成長を前提にすれば、来年度税収のV字回復は難しい。そんな相場観を裏切る形で、財務省は今月半ばに「来年度税収が57.7兆円になる」というサプライズな見積もりを纏めた。“精緻”が売りの主税局の予測によると、円安基調への反転に伴う企業収益の改善で法人税が持ち直し、政府が旗を振る賃上げ効果で所得税が伸びる。結果、下方修正後の今年度税収に比べて1.8兆円増…というV字回復が実現するというシナリオだ。今年度と来年度の当初予算同士を比べても、税収は0.1兆円増。安倍政権が掲げてきた税収の増加路線を辛うじて守った。0.1兆円の税収増では到底追い付かない歳出の自然増を賄ったのが外為特会。「やっぱり外為特会か…」と感じる関係者は多い。実は、同特会を“隠し財源”として期待する声は、政権内でちらついていた。最近では、消費税率10%時に生活必需品の税率を8%に据え置く“軽減税率”の導入に必要な財源を賄う秘策として、外為特会の積立金の活用論が持ち上がった。特会の活用について、旧民主党政権時代の“霞が関埋蔵金”という奇策と重ね合わせる向きもある。何れにしてもはっきりしたのは、税収増や国債減という財政の基本指標の改善を示す数字に対する政府の強い拘りだ。だからこそ、“見かけの数字”を作る為に形振り構わず、特会活用という“奥の手”を繰り出したのだろう。今年度と大枠が変わらない来年度予算案の編成に四苦八苦した関係者の動きは、アベノミクスの財政運営が限界に近付いていることを物語っているようにも見える。 (上杉素直)


⦿日本経済新聞 2016年12月22日付掲載⦿
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