【揺れる退位】(05) 問われる憲法との関係

20161228 01
天皇陛下が退位の意向を示唆されて4ヵ月。大きな議論になっているのは憲法との関係だ。『天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議』のヒアリングでも、専門家16人の大半が憲法問題に触れた。最大の論点は、陛下が退位の意向を示唆された後に政府や国会が立法化に動くことが、天皇は「国政に関する権能を有しない」と定める憲法第4条に違反するかどうかだ。退位に反対か慎重な考えを示した7人の内、フリージャーナリストの櫻井よしこ氏ら3人は、「陛下のお言葉は憲法に抵触しかねない」と踏み込んだ。お言葉を受けて政府が検討に乗り出したのであれば、「陛下の意向により、政府が(退位という)新しい制度を作ることは、憲法が禁止する天皇の政治的行為を容認することになる」(麗沢大学の八木秀次教授)という理屈だ。これに対し、退位を容認する9人は、「慎重に事を運べば違憲性は回避できる」との見解で概ね一致した。日本大学の古川隆久教授(日本近現代史)は、「お言葉は飽く迄も問題提起と捉え、国民がこれを主体的に検討し、判断する過程が必要だ」と述べた。「お言葉が契機だとしても、飽く迄も主権者である国民と、国民の負託を受けた国会・内閣が自ら判断して法整備に動くのであれば、憲法に抵触しない」という考え方だ。皇位継承は「ロイヤルファミリーとしての私的な側面もあり、(退位に関する)天皇の発言が直ちに憲法違反になるとは考えていない」(京都大学の大石眞教授)との意見もあった。

天皇の「退位したい」という意思を退位の要件とすることも、憲法第4条等との関係で議論になった。国士舘大学の百地章客員教授(憲法)は、強制退位を避ける為に「陛下の意思が先ず尊重されなくてはいけない」と、意思確認は合憲と強調した。これに対し、東京大学の高橋和之名誉教授(憲法)は、「退位制度は憲法上認められる」としたものの、「(国事行為でない)象徴的行為が十分に行えなくなったから退位するというのは、憲法の趣旨に反するのではないか」と指摘した。退位の立法形式についても、憲法との整合性が問われた。ヒアリングでは、政府が軸として検討している、陛下に限って退位を実現する特例法制定を巡り、賛否が激しく対立した。ここで論点となったのは、皇位継承を「皇室典範の定めるところ」によると明記した憲法第2条だ。内閣法制局の横畠裕介長官は今年9月30日の衆議院予算委員会で、「皇室典範の特例を定める別法も(憲法第2条の『皇室典範』に)含み得る」と述べ、特例法での対応も可能との認識を示している。特例法を容認する専門家の多くはヒアリングで、陛下が82歳とご高齢であることを踏まえ、早急に対応する必要性を強調した。また高橋氏は、「天皇制自体が特例的性格のものだ」として、「例外的に認められる」と結論付けた。これに対し、皇室典範改正を主張する大石氏は、「憲法が皇室典範と単一の名称まで特定している訳だから、(特例法は)それに合致しない嫌いがある」と異論を唱えた。一方、「特例法で1代限りの退位を実現することは、『退位を示唆した陛下の意向に沿うよう立法化した』と受け取られかねない」として、「特に急ぐことを理由にすると、憲法に抵触する可能性がある」(古川氏)との指摘も出された。憲法は第1条で、天皇の地位を「国民の総意に基づく」と定めている。陛下の退位を実現したとしても、国民に合憲性への疑念を残したままでは、天皇制の将来に禍根を残しかねない。政府と国会は今後の議論の中で、国民に十分な判断材料を示しながら、慎重に検討を進める必要がある。

■国政への関与認めず
政府は過去の国会答弁で、憲法第4条の趣旨について、「天皇の行為により、事実上においても、国政の動向に影響を及ぼすようなことがあってはならない」と説明している。小泉内閣時代の2005年11月、政府の有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を纏めたが、天皇陛下や皇族に意見を求めることは無かった。当時、官房長官だった安倍首相は、2006年3月1日の衆議院予算委員会第1分科会で、「皇位継承制度は、まさに国政に関わる問題だ。『天皇陛下や皇族方が国政に関与した』と見られることになりかねない為、(意見聴取を)差し控えた」と説明した。今回の有識者会議の進め方についても、政府は慎重だ。首相は今年9月30日の衆議院予算委員会で、有識者会議設置の経緯について、「天皇陛下が国民に向けてお言葉を発せられたことを重く受け止めている。その中において、国民的な議論があり、その国民的な議論を受け止めて、有識者会議を設けて議論したい」と述べた。「政府は陛下のお言葉ではなく、飽く迄も世論を受けて対応している」との説明だ。 =おわり

               ◇

栗林喜高・寺口亮一・比嘉清太・田島大志・岡部雄二郎が担当しました。


⦿読売新聞 2016年12月13日付掲載⦿

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テーマ : 天皇陛下・皇室
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