【衝撃トランポノミクス・識者に聞く】(中) 2国間協定、時代に逆行――渡辺頼純氏(慶應義塾大学教授)

20161228 02
アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は当選後、『環太平洋経済連携協定(TPP)』からの離脱を改めて明言し、2国間で貿易協定を結ぶ交渉を進める考えを示した。1970~1980年代にアメリカで起こった“ユニラテラリズム(単独行動主義)”を想起させる。アメリカでは当時、通商法301条等を制定し、2国間の貿易赤字が拡大すると、相手国の振る舞いを“不公正”と見做し、一方的に制裁を発動した。日本も自動車や農産物の市場開放を迫られた。世界貿易は、2国間だけの収支で完結するものではない。日米の貿易には、中国や『東南アジア諸国連合(ASEAN)』の国々も関係している。例えば、製造業の生産ネットワークは国境を超えており、日本から東南アジアや中国に部品が運ばれ、そこで作られた完成品がアメリカに輸出されているケースもある。日米間の貿易協定では、経済活動を十分に捉え切れない。

世界では既に約280件の『自由貿易協定(FTA)』が発効し、効果が限られる2国間FTAから、TPPや『東アジア地域包括的経済連携(RCEP)』といった“メガFTA”に収斂していく傾向にある。2国間協定は時代に逆行している。トランプ氏が通商政策と産業振興を統括する『国家通商会議』の新設を表明したことも気がかりだ。この組織のトップに就くカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナバロ教授は、対中国政策で“タカ派”の理論的指導者だ。「アメリカの製造業が衰退したのは中国が原因だ」というレトリックを駆使して、危機感を煽ってきた。中国製品等に高関税をかけて自国産業を守る保護主義的な政策を実施すれば、米中貿易摩擦に発展し、貿易の縮小を通じて世界経済も危うくなる。共和党は従来、経済活動の国家の強い関与を嫌い、自由な貿易秩序を作ることに積極的だ。トランプ氏は異例の大統領となりそうだ。TPPの発効が不透明になり、日本と『ヨーロッパ連合(EU)』の『経済連携協定(EPA)』の年内妥結が見送られたことで、メガFTAを推進する流れにブレーキがかかった。しかし、自由貿易は失って初めてその重要性に気付く、世界の無形の公共財だ。だからこそ、日本は自由貿易を守る為に、あらゆる選択肢を引き続き追求すべきだろう。TPPが塩漬け状態になっても、日本はRCEPや日中韓3ヵ国のFTA等を積極的に進めるべきだ。中国の市場をより自由化していくように働きかけることが重要だ。自由貿易の恩恵が大きいことが明白になれば、トランプ氏の翻意を促すことになるかもしれない。 (聞き手/国際部 青木佐知子)


⦿読売新聞 2016年12月24日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR