【労基署ショックが日本を襲う】(02) “ガリバー”野村に労基署のメス…花形部門の競争力が急低下?

証券業界最大手の『野村證券』に労基署のメスが入り、長時間労働が常態化していた投資銀行部門が、大幅な残業削減を含む働き方改革を追られていたことが、本誌の調べでわかった。

20161229 01
野村證券の投資銀行部門に勤務する中堅社員は悩んでいた。「平日は大体、18時から遅くても20時には退社しなければいけなくなった。このままでは、うちのビジネスが成り立たなくなってしまう」。一見、ワークライフバランスが取れたいい会社のように思えるが、どうしてここまで強い危機意識を持っているのか。この中堅社員によれば、今年の夏頃、同社に労基署のメスが入り、投資銀行部門の長時間労働が問題化した為、それまでとは一転、残業が厳しく制限されるようになったという。残業の大幅削減でビジネスモデルの転換を迫られているのは、大手広告代理店の『電通』だけではないのだ。「1ヵ月に45時間までしか残業できない上、外部からリモートログインしている時間もチェックされる」と同社関係者は明かす。深夜残業が当たり前だった同社の投資銀行部門においては、事実上の“残業禁止令”と言えた。

抑々、投資銀行部門とは、M&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務や資金調達(株式・債券の発行)に関する引き受け業務等、機関投資家向けの証券業務を担う花形部門である。「各社とも激務で知られ、夜中の2時・3時までプレゼン資料作りに追われるのは当たり前。バリバリ働きたい知的肉食系が集まる」(外資系証券幹部)。そんな長時間労働が大前提の職場で残業ができないとなれば、ビジネスに影響が出るのは必至だ。グローバルに展開している同社のライバルは、残業規制などお構いなしの海外の大手金融機関であり、1人当たり労働投入量で劣る同社の競争力低下は避けられない。だからこそ、冒頭の中堅社員は、ビジネスモデルの崩壊リスクを意識するまでの危機感を抱いたのだろう。同社社内からは、「海外出張させて、日本の労働基準法の枠外で仕事をさせている」「自習室を設定して、そこで自主的にプレゼン資料作りをさせている」等、残業減少分を補完する為の“裏残業”に関する話題も漏れ聞こえてくる。だが、投資銀行の世界は、そんな抜け道を使って対応できるほど甘くはない。会社側も、その点は十分理解していたようだ。本誌の取材によると、同社は問題発覚後に大規模な人事異動に踏み切り、投資銀行部門の中でもM&A部門の人員を増強。今年3月末と比較して、人員を20%も急増させているのだ。異動の規模からは、会社側の危機意識の高さが窺えた。更に、案件獲得の生命線となる資料作成については、海外の子会社との連携を強化して、生産性を向上させていく考えだ。

20161229 02
“証券業界のガリバー”のビジネスの在り方を激変させた労基署のメス。勿論、労基署の長時間労働是正の取り組みに問題がある訳ではない。日本では、これまで長時間労働が横行していた訳で、是が非でも進めるべきだ。左図の通り、主要企業の多くも労基署の動きを歓迎しており、「長時間労働の是正は個人・会社のみならず、国を挙げて取り組むべき重要な課題」(飲料大手)等、支持する声が多い。ただ、社員の長時間残業を前提としたビジネスモデルを持つ日本企業は、実のところ少なくなく、野村證券と同様に労基署のメスが入るリスクを抱えている。一方、長時間労働撲滅に向けた労基署の動きは、一過性のものではなく、政府の“働き方改革”推進という後押しもあって、寧ろこれから本格化してくる筈だ。同社幹部が「『嵐が過ぎ去るのを待てばいい』という訳じゃない。本腰を入れて対応すべき」と指摘する通り、そうしたビジネスモデルからは一刻も早く脱却しなければ、淘汰の憂き目に遭うかもしれない。しかし、残業を減らせば競争力を維持できないのも事実。社員の働き方と企業の競争力のバランスをどう取るか――。そのジレンマと向き合いながら、生産性を高めていくしかない。


キャプチャ  2016年12月17日号掲載

スポンサーサイト

テーマ : 働き方
ジャンル : 就職・お仕事

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR