【電通事件の衝撃】(04) 「労基法は悪くない」

20161229 07
首相が社名と個人名を挙げ、一企業の問題に踏み込むのは珍しい。10月19日、首相官邸で開いた働き方改革に取り組む人たちとの意見交換会。首相の安倍晋三(62)は、参加者に語りかけた。「先般、電通の高橋さんが、長時間労働によって、過酷な状況の中で自ら命を絶つという大変悲しい出来事が起こった。このようなことは二度と起こしてはならない。やはり、働き方改革を進めていかなければならない」。『電通』の新入社員・高橋まつりさん(当時24)の過労自殺は、何故防げなかったか。そして、自殺に追い込まれる若者をどう救うか――。政治家の目はそこに向く。「心許無いね。今のままでいいの?」。先月21日、東京都千代田区永田町で開いた過労死防止を考える議員連盟の会合。会長を務める前文部科学大臣・馳浩(55)が、厚生労働省労働基準局長の山越敬一(57)に、労働時間規制への国の関与を質した。

山越が「労使の取り組みを支援する」と話すに止めると、馳は同僚議員が「今日はこの程度で」と収めるまで指摘を続けた。厚労省幹部からは「労働時間には厳しい上限規制が必要」との強硬論も出るが、政府内には「問題企業は現行法の枠内で取り締まるべきだ」との慎重論もある。「悪いのは電通。今の労働基準法が悪いのではない」(内閣官房幹部)。「捜査の行方を見極めたい」との思惑も滲む。官の態度は、働き方改革実現会議の運びにも響く。政府自身が目玉とした労働時間を巡る議論は、年明けに持ち越し。労働時間の上限規制や、労使で決めれば残業時間を延ばせる“36協定”見直し等は、事の是非を問う間も無かった。反対の出難い非正規雇用の処遇改善を優先したように映る。政官の押し引きだけが続き、労働時間を巡る改革論議は膠着。働く時間を短くして済む問題ではない。経済団体からは、「(時間でなく成果で賃金を払う)脱時間給等を盛る労基法改正案の審議入りも難しいだろう」との悲観的な見方も出る。『日本商工会議所』会頭の三村明夫(76)は、今月1日の記者会見でこう説いた。「色々な動機を持って働きたい人に、色々な働くタイプを提供し、生産性も上げる。企業・労働者に好ましい制度設計が、働き方改革に求められる」。個の力を生かした上で企業の活力に繋げる。善は急げ――。だが、その“善”が中々見えてこない。 《敬称略》 =おわり

               ◇

辻征弥・高城裕太・伴正春・小川和広・中村亮・三木理恵子・大淵将一が担当しました。


⦿日本経済新聞 2016年12月3日付掲載⦿
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