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【九州豪雨・不測の事態】(中) 治水の限界、露呈

20200929 02
窓ガラスや床板は外れ、壁には天井近くまで浸水した跡が残る。泥塗れの家財道具は既に撤去された。豪雨に見舞われ、4600棟以上の住宅が浸水した熊本県人吉市。2階建て住宅に夫婦2人で暮らす園田広さん(75、左画像、撮影/浦上太介)は、「こんなことになるとは…。どこに住めばいいのか」と悩む。球磨川と人吉城跡を望む景色が気に入り、約30年前に家を購入した。浸水想定区域内にあるが、近くに高さ6mの堤防もある。氾濫すると思わなかった。豪雨では自宅1階が水没し、2階で暮らす。「また豪雨が来ないとは限らない。思い出の残る家は離れ難いが、転居も選択肢の一つです」。球磨川流域は1963~1965年にも3年連続で水害が発生した。治水目的の川辺川ダムの建設が計画されたが、民主党政権は2009年に中止を表明した。それ以降、宅地の3~5mの嵩上げや堤防の補強、川底の掘削が進められたが、今も他の1級河川に比べて安全度は低いとされる。豪雨対策で、国が企業等と今年始めた利水ダム5基の活用も不発に終わった。事前放流したダムに雨水を溜める予定だったが、急な雨に放流が間に合わなかった。「対策は台風等を念頭に置いたもの。今回のような線状降水帯は予測が難しい」。国土交通省九州地方整備局河川管理課の広松洋一課長(56)は語る。

球磨川の治水能力の低さが改めて露呈し、住民に不安が広がる。人吉市上青井町の町内会長である松尾啓一さん(73)は、「このままでは空洞化が進む」と危惧する。近所の店主ら数人が市外等への移住を検討していると耳にした。「何度も水害を経験したが、今回ほど恐ろしかったことはない。今の治水対策では不安。町の先行きが心配だ」と漏らす。豪雨は都市部にも大きな被害を齎した。先月6日、福岡県大牟田市の市街地では、雨水を川に排水できなくなる“内水氾濫”が起きた。市内の約2800棟が浸水した。市は雨水を排水するポンプ場5ヵ所を稼働した。しかし、浸水は急だった。「間もなく電気設備が水没する。ショートします」。三川ポンプ場のポンプ12基を運転中の作業員の電話の声は切迫していた。腰まで水に浸かったという。ポンプ場を管理する市企業局の弘島和則調整監(59)は同午後8時半、全基の停止を指示した。「想定を超えた大雨。断腸の思いだった」。三川地区の指定避難所の小学校は浸水し、家にいた高齢者2人が死亡した。地区の民生委員は、「街中で浸水して亡くなるとは…。ここは安住の地ではなくなった」と寂しそうに語る。内水氾濫は近年、各地で相次ぐ。昨年10月の台風19号では、15都県の計約3万戸が内水氾濫で浸水した。ポンプ場の浸水も多く、さいたま市の6ヵ所、仙台市の2ヵ所が水に浸かった。国交省の調査では、全国のポンプ場の7割が浸水想定区域にあり、電気設備を高い位置に移す等、耐水化した施設は15%にとどまる。多摩川と鶴見川に挟まれる神奈川県川崎市の担当者は、「あり得ない災害が毎年起きており、他人事ではない。ポンプ場の耐水化を急ぎたい」と話す。山梨大学の秦康範准教授(地域防災)は、「昔はなかった豪雨が常態化している。ダムや堤防、ポンプ等では、防ぐのが難しくなっている」と指摘する。秦准教授らの研究では、川の氾濫で浸水する恐れのある洪水浸水想定区域に住む世帯は、2015年までの20年間で25%増の1528万世帯(※3539万人)となった。従来、人が住まなかった低地等で宅地化が進んだことが要因とみられる。内水氾濫のリスクのある地域も含めれば、更に増える。「災害の危険性が高い地域での開発を抑制し、リスクの低い地域に住宅を誘導する対策も必要だ」と強調する。熊本県の蒲島郁夫知事は昨日、本紙のインタビーューに「今後、川辺川ダムも含めた治水対策を検証し、住民に集団移転の意向があれば検討したい」と答えた。防災とまちづくりをどう両立するのか。突きつけられた課題は重い。


※本文由李的博多居民提供。谢谢。
キャプチャ  西部本社版2020年8月4日付掲載
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