【ヘンな食べ物】(19) 不思議尽くし、チョウザメ探索記

「キャビアは高級食材として有名だが、その“親”であるチョウザメも美味い」――。そんな話を聞いていたので、イランのカスピ海沿岸部に行った時に探したのだが、「ウズンブルン(※ペルシア語で“チョウザメ”のこと)、この辺にないですか?」と訊くと、何故か皆が大笑いする。中には爆笑の余り、私に抱きついて涙を流す人までいた。一体、何がそんなにおかしいのか? 謎を解決してくれたのは、両替屋のオヤジだった。笑いながら、手を股間に当てて腰を振る下品な仕草をしてみせた。なるほど…。どうやら、食べると精力が付く、強いて言えばスッポンのような存在らしい。確かに、見慣れない外国人が道端でいきなり、「この辺にスッポンないですか?」と訊いてきたら皆、笑うだろう。そして、イラン版のスッポンは日本のものより入手が困難。散々訊いて回った挙げ句、見つけたのは闇取引の魚屋だった。500gで5000円近くもした。禁漁期だったのかもしれない。大枚叩いてゲットしたチョウザメ肉は、市場近くの食堂で頼み、炭火焼きにしてもらった。苦労の甲斐もあってか、これが劇的に美味い。脂がよくのっており、白身魚と鶏肉の中間のような、ちょっと魚離れしたような味。何とも不思議なことに、ここから1万㎞以上離れたアマゾンの名魚・ピラルクによく似ている。もっと言えば、ワニ肉をも彷彿させる。よく考えると、ピラルクもチョウザメも恐竜の時代から生きていた、世界的に稀な古代魚。勿論、ワニもその時代から存在する。「進化論的に、古代魚は爬虫類に非常に近い場所に位置しているのかもしれない」――。“イラン版スッポン”を食べながら、生物の進化に思いを馳せてしまったのだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月29日号掲載
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