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芸能人は芸能事務所の“奴隷”なのか――芸能界に蔓延る歪んだ搾取システムを徹底暴露する!

能年玲奈や『SMAP』等、所属事務所と揉めたタレントが凋落するケースが後を絶たない。タレントの生き死には全て、所属事務所が握っているのだ。何故、このような人権侵害システムが罷り通っているのか? 利権や癒着に塗れたその内部構造を解説する。 (取材・文/フリーライター 星野陽平)

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先頃、筆者は『増補新版 芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』(鹿砦社)を上梓した。同書は、2年前に刊行した『芸能人はなぜ干されるのか?』(同)に補章を加えたもので、芸能界批判の決定版と自負するものである。抑々、筆者が芸能界に関心を持ったのは、2009年に起きた『北野誠事件』がきっかけだった。同年3月、北野がパーソナリティーを務める『誠のサイキック青年団』(朝日放送ラジオ)が突如として終了し、その後、北野は「番組内等で不適切な発言があった」として謹慎を余儀なくされた。筆者は、雑誌の依頼で同事件を取材する過程で、「芸能界は根本的に違法で不当なシステムの上に成り立っているのではないか?」という疑念を持ち、5年をかけて芸能界の歴史と構造を徹底的に取材・分析し、今回、書籍として纏めたのである。結論を言えば、芸能界は全てがおかしい。真面に批判されれば、芸能界はそれに耐えられないのである。その為、芸能界は業界を挙げてマスコミに圧力をかけ、一切の批判を封殺し、これまでは何とか乗り切ってきた。だが、SMAP分裂騒動で見られたように、近年は芸能界の圧力も及ばないインターネット言論が発達するようになり、それも綻びが見え始めている。筆者の感触では、「芸能界はそれほど遠くない将来、大きく変化せざるを得なくなる筈だ」と考えている。では、芸能界のどこがおかしいのか? 最も問題なのは、タレントの人権問題だ。嘗て大手芸能事務所に所属し、タレントとして活動をしていた女性・A子の話をする。

A子は女子大生時代にスカウトされてモデルになり、トークも得意だった為、活動の範囲を広げていこうとしていた。だが、中々仕事は入って来ず、悩んでいた。そんな時、仕事場でタレントの大竹まことから、こう言われた。「お前、この世界に向いてねぇんだよ。だって、『何でですか? 何でですか?』っていつも聞くだろ? 女ってのはさ、わかっていても『私、わかんなーい』って言ってりゃいいんだよ。それができないなら、この世界なんて辞めたほうがいいよ」。この時、大竹が言わんとしていたことは、女優の杉本彩から教えられることとなった。楽屋でA子が杉本に「仕事を増やすにはどうしたらいいんでしょうか?」と相談したところ、杉本は「誰か付き合ってる人、いないの?」と聞いた。A子が「誰かと付き合ってないと仕事は貰えないんですか?」と聞き返すと、杉本は「貴女、知らないの?」と驚いた。A子が言う。「オーディションに行っても、マネージャーからは『受かる人は決まっているんだけど、顔を見せておくことも大事だから』と言われることもありました。結局、仕事を取る為には、業界の実力者との親密な関係が必要なんです。大手芸能事務所って、その辺りは巧妙で、マネージャーはタレントを業界の実力者と引き合わせて、『後はお2人でどうぞ』という感じになるんです。つまり、『仕事は自分で取ってこい』っていうことなんですね。私には結局、才能が無くて芸能の仕事は辞めましたが、当時の友だちは今も諦めていません。数え切れないほど男と寝ても、大部屋女優から抜け出せませんが…」。昨年5月、アイドルグループ『PASSPO☆』のメンバーだった槙田紗子が、自身の『ツイッター』で「最初から芸能なんてしなければよかった。ブサイクばっか相手にしたし。芸能初めてから何人とエッチしたんだよって」と呟いたことで明らかになった所謂“枕営業”は、今も昔も芸能界のキャスティングに隠然たる影響を与えている。ある映画プロデューサーが語る。「大体、所謂“Vシネマ”だと、基本的に出資をしても半分ぐらいしか戻ってこないから、儲かるということは殆どないんだけど、主演女優から枕営業があるから、クレームが付くことは先ず無いね」。また、別の芸能関係者もこう語る。「グラビア系の芸能事務所の場合、『トップタレント以外は、ほぼ全員が枕営業をやっている』と思って間違いない。俺の知り合いのマネージャーは、『自分のところのタレントをパチンコ屋の社長に枕営業させるのに車で送るのはやるせない』とよく言っているな」。更に、近年はメディアの多様化により、テレビ局の地盤沈下が進行。相対的に大手芸能事務所の影響力が強まり、結果として「女性タレントは事務所の社長や幹部と寝なければ番組に出演できない」というケースも増えているという。

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今のご時世、一般企業であれば、セクハラ事件等が起きれば大問題だろう。何故、芸能界ではこのような悪しき慣行が罷り通っているのか。そこには、「芸能界が極端な供給過多にある」という事実がある。小学生に“将来就きたい職業”をアンケートすると、常に“芸能人”が上位に入るが、「芸能だけで確実に生活できる役者やミュージシャンは、日本にはたった500人程度しかいない」と言われる。「狭き門である芸能界に入れるならば、枕営業も辞さない」という者も少なくない。そして、芸能者は差別されてきた歴史がある。嘗て、芸能に携わる者は“河原乞食”と呼ばれ、社会では卑賤視の対象だった。安土桃山時代、現在まで続く歌舞伎の原型とされる『かぶき踊り』を創始したことで知られる出雲阿国(左画像中央)も、踊りを見せると共に売春も行っていたとされる。江戸時代でも芸能者は制度として厳しく差別され、所謂“士農工商”という身分制度の外に存在する“アウトカースト”だった。歌舞伎役者は浅草等の特定の地域でしか居住が認められず、外出する際は編笠の着用を義務付けられ、旅行は許されず、武士や町人との交友は一切禁じられた。因みに現在、歌舞伎の公演で観客が「成田屋!」等と屋号で呼びかける慣習があるが、これは歌舞伎役者に対する卑賤視に由来する。江戸時代の人気歌舞伎役者には財力があったが、身分が無かった。そこで、役者たちは副業として小さな商店を構えた。これは、「河原乞食ではなく、商人としての扱いを受けたい」という願望の表れだった。芸能という卑しい職業に就く者に、人権など認められない――。そんなコンセンサスが、今の時代にも続いているのである。枕営業等というとんでもない慣習が何ら問題視されず、未だに残っているのは、そうした背景もあるのではないだろうか。

更に深刻なのは、拙著が主にテーマとしている、タレントが“干される”という現象である。資本主義社会では、ものやサービスの価格は需要と供給によって決まる。芸能界でも、人気タレントは需要が高まれば時間に限りがあるのだから、出演料は自然と高まる。だが芸能界では、「需用があっても一切出演できない」という場合がある。それは、タレントが干されている場合だ。タレントが干されるのは大抵、タレントが独立を画策する等して、所属事務所に対して反抗的な態度を示した場合だ。何故、このような現象が起こるかというと、それは芸能界にカルテルがあるからだ。芸能界の業界団体は“引き抜き禁止協定”を結んでおり、基本的にタレントの移籍を認めていない。仮にタレントの移籍が自由となれば、芸能事務所間での競争となり、タレントのギャラが高騰し、事務所が儲からなくなってしまう為である。だから、待遇等に不満を持ったタレントは独立を志向するが、これも殆どの場合、失敗する。タレントの独立を許せば、芸能事務所は儲からない。だから、芸能事務所は業界団体等を通じて、独立をしたタレントを起用しないよう、テレビ局等に圧力を加える。そのタレントが如何に魅力的で視聴率が稼げるとしても、「そのタレントを起用すれば他のタレントは全て共演拒否にする」ということにしておけば、テレビ局は必然的にそのタレントの起用を断念せざるを得ない。移籍はできず、独立も叶わないとなれば、タレントはギャラを不当に搾取され、休日は認められず、枕営業も拒否できない。所属事務所の“奴隷”となるのである。『週刊文春』2015年5月7・14日合併号に、朝の連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK総合テレビ)で国民的人気女優になった能年玲奈が干された経緯が報じられている。その要点は以下の通りだ。

①『あまちゃん』のヒロイン役が決まる直前に、「寮の掃除がなっていない」という理由で、1ヵ月、事務所の掃除当番を命じられていた。
②『あまちゃん』時代の平均睡眠時間が僅か3時間という激務でありながら、月給は5万円でパンツも買えず、実家の仕送りに頼らざるを得ない生活だった。
③事務所が派遣するマネージャーは入れ替わりが激しく、経験不足でトラブルが続出。
④『あまちゃん』終了後は、「態度が悪いから仕事は入れられない」と事務所から通告。映画『進撃の巨人』(東宝)のオファーが能年の知人経由で入ったが、事務所は能年に事前に接触したことを問題視し、オファーを断った。
⑤能年が「辞めたい」と申し出て事務所と決裂すると、能年が頼っていた演技指導者に「洗脳されている」という報道が相次ぐ。

メディアが「不正を告発する」という姿勢を持っていれば、問題があろうとも、何れは是正されるだろう。だが、芸能報道の場合は、文春を除くほぼ全ての大手メディアが芸能事務所寄りの報道をするのが習わしとなっている。それは、芸能事務所を敵に回すような報道をすれば、その媒体や発行元の会社は、芸能事務所から“タレントの一斉引き揚げ”という制裁を科されるからだ。過去には何度となく、メディアが芸能事務所の圧力に屈する事件があった。

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筆者が調べたところ、1971年に起きた『芸能界相愛図事件』が最も古い。この事件は、作詞家のなかにし礼が『週刊ポスト』で当時の売れっ子タレントたちの下半身事情を暴露したものだが、なかにしは業界の圧力で記者を強要容疑で刑事告訴せざるを得なくなり、記者は逮捕され、芸能事務所の業界団体は、同誌の発行元である『小学館』の全ての出版物について取材拒否するよう呼びかけた。斯くして経営危機に瀕した小学館は、新聞各紙に謝罪広告を掲載し、“全面降伏”したのだった。今も、この構造は変わらない。SMAPが分裂騒動を起こしてもテレビは独自報道を一切せず、スポーツ紙は独立を画策したSMAPのメンバーらを“悪玉”として断じ、果ては『フジテレビ』がSMAPメンバーらの“公開処刑”を放送し、『放送論理・番組向上機構(BPO)』のサーバーがダウンするほど視聴者からの抗議が相次いだ。インターネット上では、そうした報道姿勢の異常性が至る所で糾弾されたが、マスコミには一切届かない。では、こうした問題を解決するにはどうしたらいいだろうか。世界のエンターテインメントの中心であるアメリカの芸能界の歴史を調べてみると、嘗ては日本と同様、タレントは契約するエージェントや映画会社等に隷属させられていたことがわかる。それを変えたのが、タレントによる労働組合の結成である。アメリカでも、嘗てはエージェントが素行不良のタレントを飼い殺しにしたりすることは少なくなかった。だが、労働組合がそのような事実を掴めばボイコット決議が下され、組合員であるタレントは問題のあるエージェントとの取引を拒絶する。アメリカの芸能界の労働組合は組織率が極めて高い為、労働組合がエージェントを“干す”のである。日本においても、プロ野球では『選手会』という労働組合があり、2004年にプロ野球再編問題が持ち上がった時にストライキを決行し、その実力を見せつけた。また声優業界では、声優による労働組合が大きな影響力を持ち、過去にはストライキを何度も実行。声優の事務所移籍や独立は、基本的に自由である。芸能界でも、2014年に若手俳優の小栗旬(右画像)が労働組合の構想を雑誌のインタビューで明かし、話題になったが、直後に幾つものスキャンダルが持ち上がり、現在、小栗は口を閉ざしている。だが、芸能界の諸問題を解決する為には、タレントの労働組合の結成が必要なのだ。何れまた、この問題は大きくクローズアップされるだろう。その時、ファンの応援が欠かせないことは言うまでもない。


キャプチャ  第16号掲載

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