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【Global Economy】(210) 中国EVメーカー、正念場…コロナ禍と補助金削減で急ブレーキ

成長を続けてきた中国の電気自動車(※EV)市場が踊り場を迎えている。政府の補助金減額に、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。中国政府はてこ入れを図るが、経営難に直面するメーカーも相次ぐ。今後、優勝劣敗が鮮明になりそうだ。 (中国総局 小川直樹)



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今月5日に閉幕した『北京モーターショー』は、EVに代表される新エネルギー車(※NEV)が全出展車両の2割にあたる160台に上り、展示の目玉とするメーカーが目立った。「8月の納車台数は設立以来、過去最高となった」。中国の新興EVメーカー『蔚来汽車(NIO)』の李斌会長兼CEOは、同モーターショーの発表会で胸を張った。蔚来は昨年来、経営不振が続いていたが、4月に安徽省合肥市系企業等から出資を受け、息を吹き返した。広州市の支援を受ける『小鵬汽車』や、9月に上海市政府系企業等から資金調達した『威馬汽車』等、新興メーカーがアピールした。一方、出展を見送ったメーカーも相次いだ。『理想汽車』や『愛馳汽車』、事業停止中の『拜騰汽車(バイトン)』等常連の姿はなく、新興メーカーが競うように新型EVを披露した昨年の『上海モーターショー』から一変した。『中国自動車工業協会』によると、中国の新エネ車販売台数は補助金政策が奏功し、2012年の1.2万台から2018年には126万台と6年で10倍となった。新エネ車の約8割をEVが占める。ところが、昨年は初の前年割れに陥り、今年1~8月は前年同期比26.4%減の60万台に低迷する。通年では「110万台」(協会幹部)と2年連続の前年割れが予想されている。これは、政府が目標に掲げていた00万台の半分程度の水準だ(※①)。資金調達に成功したメーカーが堅調な一方、財務基盤の弱いメーカーには淘汰の波が押し寄せた(※②)。「内外の諸要因により、経営を継続する方法がなくなった」。『賽麟汽車』は8月31日、従業員向け文書で退職手続きに入るように催促した。

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中国誌『中国新聞週刊』によると、賽麟は設立から4年余りの間に工場建設等に約1000億円注ぎ込んだが、販売台数は僅か31台に過ぎなかったという。賃金未払いが伝えられた『漢騰汽車』は、8月から一時帰休が続き、『博郡汽車』は清算する見通しという。中国紙『経済参考報』は、ピーク時に300社を超えていた中国の新興メーカーが今では40社に満たず、今後も“退場”が続くとの見方を伝えた。市場に急ブレーキがかかったのは何故か。第一に、補助金政策の見直しが挙げられる。中国政府は2009年以降、多額の補助金支給により、EVを中心とする世界最大の新エネ車市場を作り出したが、虚偽申請で補助金を不正に受給するメーカーも相次いだ。そこで補助金の絞り込みを始め、昨年6月に支給額を大幅に減らすと、翌7月から販売は急減した。第二の要因は、今年1月以降のコロナショックだ。EVの販売は元々、タクシーや配車サービス会社向けが大半を占めていた。景気が悪化する中、「大口顧客向けが大きく減った」(日系メーカー幹部)という。第三に、補助金が減ったことで、ガソリン車に比べて価格や性能で劣る点が改めて意識されたことだ。EVは高価なバッテリーを多く搭載するので、価格は高くなる。買い替え時の下取り価格も低く、充電場所や時間、バッテリー劣化の懸念は解消されていない。北京モーターショーの会場でも、「使い勝手が良くない」「(エアコンを使う)夏や(気温が低い)冬はバッテリーの減りが早い」といった声が聞かれた。中国政府は昨年1月、メーカーに一定数の新エネ車の生産を義務付けるNEV規制を導入した。生産・輸入台数に応じて割り当てた“目標クレジット”と、販売実績を基に算出した“実際のクレジット”を比較。目標を達成できずマイナスになった場合、目標を達成したメーカーからクレジットを購入しなければならない(※③)。

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規制によって新エネ車の生産を促す狙いがあるが、抑々販売が増えなければ在庫の山を築くだけとなる。そこで今年4月以降、矢継ぎ早に販売てこ入れ策を打ち出した(※④)。当初は今年末に廃止する予定だった補助金支給を、4月に2022年末まで2年間延長した。一部の地方政府は独自の補助金支給等を始めた。7月から農村部への普及キャンペーンも始めた。対象車種に、走行可能距離は短いが価格は安い小型EV等を指定し、販売促進を図っている。来年から2年間は、EVを含む新エネ車を対象に、自動車購入税の免税も行なう。国営の『新華社通信』によると、新エネ車の普及策を政府に助言する専門家委員会は8月、2025年の新エネ車の普及目標は新車販売台数の15~25%と幅を持たせ、ガソリン車の廃止期限を示さなかった。更に、新エネ車としては認めていないハイブリッド車(※HV)を低燃費車として推奨する提言を纏めた。現実に即した普及策に転じたと読み取れる。習近平国家主席は先月の国連総会の一般討論演説で、2060年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする目標を示しており、新エネ車市場の長期的な拡大は確実視されている。メーカーが足元の逆風を乗り越え、成長の波に乗るには、技術革新を急ぎ、消費者に欲しいと思わせる魅力的な車を早期に投入する必要がある。


キャプチャ  2020年10月9日付掲載
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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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