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【回顧2016・政治編】(下) “戦後外交”解決道半ば

20161230 33
首相の安倍晋三は今月27日、アメリカ大統領のバラク・オバマとハワイの真珠湾を訪問し、旧日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊した。安倍は慰霊後の演説で、「私たちを結び付けたものは、寛容の力が齎した和解の力だ」と語り、日米両国の強い絆を国際社会にアピールした。安倍は嘗て、真珠湾訪問に前向きではなかった。昨年、オバマの広島訪問の情報が取り沙汰されると、「オバマ氏は、アメリカ国内の反発で広島には来られないだろう。ならば真珠湾に行く必要はない」と周辺に漏らしていた。オバマが広島を訪問したことが、安倍に真珠湾訪問を決断させたのは間違いない。『広島平和記念資料館』に残したオバマ自作の折り鶴や、被爆者との抱擁――。5月27日のオバマの広島訪問は、日本国民に強い印象を残した。ただ、広島訪問を巡る水面下の日米間の交渉は難航した。日本政府はオバマの決断を促す為、「謝罪は求めない」とアメリカ側に繰り返し伝えた。アメリカでは、退役軍人を中心に、「原爆投下が戦争を終結させた」として正当化する見方が根強く、オバマ政権内にも慎重論があった為だ。訪問が決まった後もアメリカ側は、原爆の残虐さを物語る平和記念資料館の訪問には、「大統領が悪者扱いされる」と難色を示した。

日本が「“被爆の実相”を知るには資料館訪問が不可欠」と粘り、最終的には10分程度の短い見学で折り合ったが、アメリカ側は展示品にまで細かな注文を付けた。オバマは今月27日、安倍との最後の首脳会議で、「広島訪問は、最も力強い思い出の1つ」と振り返った。安倍の真珠湾訪問を巡っては、日本国内の保守層に「無差別大量殺人の原爆投下と、軍事施設対象の真珠湾攻撃を同列にすべきではない」との意見が強かったが、広島でオバマが“謝罪”しなかったことで、安倍も真珠湾攻撃を謝罪せずに済んだ。オバマは広島で核廃絶を訴え、安倍は真珠湾で「戦争を繰り返さない」と表明した。2人の言葉に、広島の被爆者やアメリカ軍人の中には「不十分だ」等と不満を漏らす人もいたが、国家の指導者が自国の“負の歴史”と向き合う点からすれば、ぎりぎりの手法とも言える。安倍は今年、“戦後外交の総決算”として、北方領土問題の解決にも取り組んだが、領土返還は実現しなかった。ロシアのソチやウラジオストク、『アジア太平洋経済協力会議(APEC)』首脳会議の開かれたペルー、そして今月に日本と、今年だけで安倍は、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンと4回、首脳会談を行った。「異常な状態に終止符を打つ」と意気込んだ安倍だったが、今月の会談でプーチンは、日本が領土を取り戻そうとする“本気度”に疑問を呈し、譲歩しなかった。政府筋は、「2015年は日韓で慰安婦問題を解決し、2016年は日露で領土に道筋を付け、2017年は愈々日中を改善する」と外交のテーマを設定してきたが、日露は2017年以降に持ち越された。アメリカでは、次期大統領のドナルド・トランプが来月20日に就任する。安倍はもう一度、トランプと強固な同盟関係を確認し、様々な外交課題に取り組むことになる。 (今井隆) 《敬称略》


⦿読売新聞 2016年12月30日付掲載⦿
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