働く男たちに迫り来る“死のリスク”を徹底検証! 過労死vs孤独死、悲惨なのはどっち?

大手広告代理店『電通』の女性新人社員の過労自殺が大きく報じられているが、実際に過労死が最も多いのは40~50代だ。そして、本誌が度々報じているように、この世代はもう1つの大きなリスクを抱えている――。 (取材・文/フリーライター 青山由佳・加藤カジカ・森祐介・山田文大・奥窪優木・編集プロダクション『プレスラボ』 紐野義貴)

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「私の夫は仕事に殺されました」――。厚生労働省庁舎前でマイクを握った女性は、そう声を張り上げた。11月は、厚労省が定める『過労死等防止啓発月間』だ。全国各地でシンポジウムが開催された他、過労死遺族や支援者で構成される『全国過労死を考える家族の会』による防止啓蒙活動が行われた。「今、過労死を巡る状況は、嘗てない深刻な問題になっています。だからこそ、状況を改善したい」。同会代表を務める寺西笑子氏は、そう思いを語った。今年9月、電通の新人社員が労災認定されたのを始め、過労が原因の痛ましい死は後を絶たない。過労死の人数を測る目安になるのが、厚労省が発表する労災に関するデータだ。これには、“脳・心臓疾患”と“精神障害”に分けられた労災申請件数等が出ている。労災の請求件数の推移(図①)を見ると、昨年、脳・心臓疾患と精神障害(自死)で亡くなった人は合わせて482人。ただ、その内、労災の支給が決まったのは189人なので、実に6割以上は労災を認められていないことになる。それだけでなく、「様々な理由で労災の申請すら諦めてしまった人も数多くいる」(寺西氏)というのが実情だ。そして、労災請求の年齢別データ(図②)を見ると、40~50代が最も過労死のリスクに曝されていることがわかる。6年前に49歳(当時)の夫をくも膜下出血で亡くした小池江利さん(54)が語る。「和歌山県内の介護老人福祉施設で事務員として働いていた夫の業務が増加したのは、同じ施設の事務員が2人辞めた頃からでした。その後、施設側は新しい事務員を雇うことはなく、真面目で“仕事ができる人”だった夫への負担は更に増えてしまった。発症前の4ヵ月の内、月150時間以上の残業をしていたこともありました。あまりの仕事の多さに、宿直の日でも殆ど睡眠を取らずに仕事をした日も多かったようです」。家族で食事ができるのは週に1度ほど。そして、いつも通り仕事に向かった夫は、変わり果てた姿となって家族の元に帰ってきた。「残業中、施設の倉庫前で倒れたんです。くも膜下出血でした。ストレッチャーで運ばれていく夫は意識が無く、医師からは『いつ急変するかわからない』と言われました」。

入院から1週間後、意識が戻ることも無く、3人の子供と妻を残して、夫は帰らぬ人となった。労災認定は下りたが、施設側の誠意の無い姿勢に対し、訴訟を決意。凡そ6年の時を経て、漸く今年2月に被告の法人・理事長・施設長と勝利和解に至ったという。自らも夫が過労自死で亡くなった経験を持つ前出の寺西氏は、「中年世代は会社で板挟みになって、プレッシャーを受けている」と警鐘を鳴らす。「上司と部下の間で受けるストレスや、名ばかり管理職で責任と仕事量ばかり増えて疲労が蓄積し、過労に陥る人が多い。また、勤続年数が長いほど中々転職にも踏み切れない。そうして体や心が壊れた末に辿り着くのが、過労死という最悪の結末なんです」。また、過労死の他にも、中年はもう1つ、“悲惨な死”のリスクを抱えている。全国で年間3万件以上発生していると言われる“孤独死”だ。孤独死現場の“特殊清掃”を行う『あんしんネット』事業部長の石見良教氏が指摘する。「孤独死と聞けば高齢者のイメージを持ちがちですが、実は40~50代男性のケースのほうが多いんです。うちが関わる特殊清掃現場の7割ほどを占めている印象です」。『日本少額短期保険協会』の統計でも、孤独死者の内の8割を占めるのは男性で、その死亡時年齢の平均は59.7歳となっている。石見氏が続ける。「中年男性の孤独死現場で目立つのは、糖尿病の合併症等で死亡したケースです。その上、独身で定職にも就いていなかった為、長期間発見されないままだった。職務上、遺品から故人の経歴等を調べるのですが、銀行口座を見ると、高い給料を貰っていた人でも、ある時点から入金がピタッと止まっていたりする。忙しく働いていた会社員が、何らかの病気や怪我をきっかけに休職や退職を余儀なくされて、孤独死へと転がり落ちたケースは山ほどあります」。例えば、42歳で自宅で孤独死した独身男性の場合、上場企業の社員として第一線で働いていたが、心身の疾患によって半年ほど前に会社を退職。しかし、身内には「休職中だ」と話していたという。「心配をかけたくない気持ちなのか、本人のプライドなのか、孤独死してしまう人には、自分の現状を周囲に話していないケースが多い。『助けて』と言える人がいないんです」(同)。この42歳男性の死因もまた、糖尿病の合併症。リビングのソファに座ったまま腐乱した遺体が発見されたのは、死後1ヵ月以上経ってからのことだった。現場の部屋(右上画像)は、ハイエンドのオーディオ機器・高級調理器具・料理本等が残されており、男性が健康だった頃は、気ままな独身生活を謳歌していたことが窺えたという。そんな残置物の中からは、髪を整えてスーツに身を包んだ故人の写真も発見された。現場に立ち会った彼の母親によると、数年前に撮った見合い写真だったという。「その写真に目をやりながら、母親が『だからあの時、結婚しておけば…』と呟いた一言が、今でも耳から離れませんね」(同)。『厚生労働白書』(平成27年版)によると、男性の生涯未婚率は24.2%。既婚者でも3組に1組が離婚している現代では、孤独死のリスクを抱えたまま人生を折り返す男性は更に増えていくだろう。以下、過労死と孤独死、その両方の危険性について更に迫っていく。

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■過労死…労災件数は氷山の一角、実際にはもっと死んでいる!
「中年の過労死の場合、大きく影響するのが自律神経の不調です。というのも、40歳を境に自律神経の回復力は著しく低下するからです」。そう話すのは、医学博士で『東京疲労睡眠クリニック』院長の梶本修身氏だ。過労が脳と心臓の疾患に繋がる流れを解説する。「過労で自律神経が不調になると、体内の血流や心肺機能に影響が出ます。血圧が上がったり、血管内皮が脆くなることで、脳内の血管が切れたり、心臓に酸素が行き届かなくなるせいで、狭心症や心筋梗塞リスクが高まるのです。このように、脳と心臓の疾患は、過労との因果関係が非常に深いんです」。クライアント常駐型のシステムエンジニアとして働く鈴木純さん(仮名・45)は、夜勤明けのある日、一緒に飲みに行った同僚(当時42)が過労死するのを目の当たりにした。「当時のクライアントは某大手銀行で、毎月200時間近い残業をしていました。仕事終わりのある日、飲みに行った際に、家族ぐるみの付き合いをしていた同僚が、ビール1杯数んだだけで寝てしまったんです。鼾もし出して、揺すっても起きない。『これはおかしい』と教急車を呼びましたが、数時間後には脳疾患で亡くなりました」。亡くなった同僚は生前、まさに身を粉にして働いていたという。「僕らは同じチームで動いていたのですが、トラブルがあれば夜中でも呼び出されるし、心が休まる時間はほぼ無い。無茶な納期の案件を数日徹夜して間に合わせても、『死ぬ気でやればできるんだよ』の一言です。彼が死んだ件も、会社はメールで社員に伝えただけで、直ぐに他の人が彼のポストに収まった。労災は認められたようですが、彼には奥さんと1歳の子供がいたのに、本当に不憫で…」。

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また近年、著しく増えているのが精神疾患による過労死(自殺)だ。しかし、梶本医師によれば、過労で鬱病を発症するのは「ある意味、体が自衛の為に行う“真面な反応”」なのだという。「例えば、風邪を引いた時に気分が沈むように、自分の体調が限界を超える前に『これ以上動いてはいけない』と、体が自然と自らを鬱状態にさせるんです。これは自然な反応で、寧ろ危ないのは、達成感ややり甲斐を感じることで感覚が麻痺し、疲労感を感じなくなっている状態です。すると、体のリミッターが外れて、ある日突然、バタッと倒れたりする。真面目に仕事を頑張ってしまう人ほど危ないのは、これが原因です」。働き方や周囲との人間関係によって、過労の状況は十人十色で変わってくる。これが、いざ倒れた際に「過労死だ」と証明するハードルになっているのだ。過労死弁護団の玉木一成弁護士は、「パワハラ等、心理的要因が主要な原因の過労自死は、立証が難しい」と話す。「過労死で労災と認められない場合、大きく2つの理由があります。1つ目は、長時間残業を証明できないこと。もう1つが、パワハラ等、本当の原因・実態が証明できないことです。特に2つ目は、遺族が『パワハラがあった筈だ』と訴えても、会社が『指導の範囲だ』とすれば、中々労災と認められない」。宮崎県在住の桐木弘子さん(59・左下画像)も、過労死を認めさせる為に戦った1人だ。自動車販売店で 整備士をしていた息子は、23歳で過労の末に車の中で練炭自殺した。生前、「僕にばかり仕事を押し付ける」と漏らしていた息子は、上司からのパワハラや、残業時間を月に20時間と決められていた為に、タイムカードを押した後も働かされていたという。しかし、立証できるだけの証拠は集められなかった。

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「証拠を集める為に、会社の終業時間を調査しに行ったり、弁護士を何人もお願いしたりしました。けれど、会社は徹底して口裏合わせをして、証言を出させなかった。結局、控訴審まで持ち込みましたが、結果は覆りませんでした」。証拠集めや裁判でかかった費用は600万円近く。借金や保険の解約による努力も報われなかった。「厚労省発表の“労災請求件数の多い職種”では、自動車運転従事者が上位に来ます。これは、トラック運転手等危険が伴う仕事だということもあるのですが、抑々、勤務時間を証明する証拠が残っているからです。労災が認められるのは、申請の内の4割程度しかありません。結果に納得がいかない場合、行政機関に2回の不服申し立てができますが、そこで結果が覆るのは僅か2~3%ほどです」(前出の玉木弁護士)。また、前出の寺西氏によれば、「遺族が労災申請自体を諦めるケースもある」という。「息子や娘を亡くした親御さんは、証拠収集ができず、『不当な判断をされるくらいなら…』と申請をされない方も多いんです。抑々、生前の職場の実態を知らせてもらえない家族が、労災の立証責任を負うこと自体がおかしいのです」。世に出る数字よりも更に多くの人が、過労で命を失っているのだ。医薬品メーカーに勤める木下耕さん(仮名・39)の大学時代からの友人は2年前、過労自殺した。「彼は、同業の医療機器メーカーの研究職に就いていました。化学系の研究開発の部署はどこも似たりよったりで、残業を残業とも思わず、連日、只管にデータを取るのが仕事。手応えや結果が約束されているものではありません。そんな中、友人は上司から『お前はこの1ヵ月、何も結果を出してない。泥棒と一緒だ』等と、毎日のように叱責されていた。『それはパワハラだ』と言ったのですが、『今の研究が実ったら大丈夫だよ』等と苦笑いしていました。それが鬱病の前段階の躁病だと気付かず、『やる気の表れだ』と彼の家族も僕も誤解してしまったんです。その後、鬱状態に陥り、近所の神経内科に行くと、『専門医に診察してもらったほうがいい』と紹介された。彼が朝方の公園で首を吊ったのは、その専門医にかかる前のことでした。正規の診断前であったことが災いして、労災すら下りませんでした」。

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過労による心身の消耗は、人間の正常な判断力を狂わせる。自死に至ってしまうケースがある一方で、その矛先が犯罪に向かう人もいるという。ITベンチャーに勤めていた田中博之さん(仮名・35)は、週3日は徹夜を強いられる過酷な業務の最中、「仕事から逃げる為には、死ぬか捕まるしかない」と考え、コンビニで大量に万引きをした過去を持つ。「今思うとおかしな話ですが、その時の僕には“死ぬ”か“捕まる”かの2択しか無かったんです。だから、見つかるように態と店員の目の前で万引きをした。思惑通り、警察を呼ばれたけど、初犯だったこともあり、即釈放になりました」。田中さんは会社に呼び戻されるが、直ぐに重い精神疾患で措置入院することになったという。「結果として過労から抜け出せましたが、5年経った現在も精神安定剤が手放せない生活です」。また、大手広告代理店で契約社員として勤めていた内藤健太さん(仮名・37・右画像)は、「仕事から逃げる為に社長を殺そう」とアイスピックを会社に持ち込んだという。「月100時間を軽く超えるほど残業をしているのに、営業担当から『もっと仕事して下さいよ』と言われ、完全にキレてしまった」。一時は自殺も考えたが、「どうせ死ぬなら社長を殺そう」と前述の行為に至ったという。しかし…。「会社が大き過ぎて、社長室がわからなかったんです。トイレの個室に籠もって悩んでいる時に、仲が良かった同僚から連絡が来て、正直に打ち明けたら『今直ぐ病院に行け』と説得されて…。診察結果は重い精神疾患で、翌日には直ぐに入院することになりました」。精神科医の朝倉孝二医師は、このように過労から犯罪に走る理由を、“選択肢の欠落”であると解説する。「人は、仕事や人間関係でトラブルを抱えた時、解決・逃避・我慢からベターな選択肢を探すのですが、過労で視野が狭まると、極端な選択肢しか見えなくなってしまうんです。その結果、自殺や傷害事件を選んでしまうことも少なくありません。また、人が快感を得る時には、脳内でドーパミンが分泌されているのですが、仕事等で悩みを抱えている人は、『気を紛らわそう』とドーパミンの快楽に身を浸したくなる傾向があります。偶に、真面目と評判だった会社員が痴漢で捕まった等の事件が報じられますが、それも、過労のストレスを回避する為に、ドーパミン分泌による“強い快感”を得ようとするからでしょう」。過労は、人の心をこうも簡単に壊してしまうのだ。

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■孤独死…仕事が全てだった男たちが陥る“寂しいエンディング”
『東京都監察医務院』によると、孤独死と見做されるケースでは、「遺体発見までの平均期間に男女で差がある」という。男性が死後3週間なのに対し、女性は死後1週間で短い。女性よりも男性の遺体の発見が遅れる傾向について、前出の石見氏は、「男性は女性に比べて、社交性に乏しい。だから、死に気付いてもらうまで時間がかかる」と話す。「独身で40代ともなると、学生時代の友人も結婚して疎遠になり、『職場の人としか繋がりが無い』という人は多い。地方出身者だと、家族や親類とも然程連絡を取らないでしょう。そんな中、離職や休職をきっかけに“孤立無援状態”になる人が出てくる。我々の特殊清掃には通常、遺族が立会うのですが、中には会社の同僚が仕方なく立ち会った現場もありました」。人知れず死んだ男たちは、遺体の腐敗臭で周囲にメッセージを送ることになる。冬場に発見される場合、夏頃に亡くなった遺体が漸く見つかるケースも多いそうだ。そんな孤独死に至るまでには、生前から始まる幾つかの予兆があるという。「わかり易いのは、自宅の“ゴミ部屋化”です。孤独死の現場は、健全な心理状態の人なら、そこで生活するのが耐えられないくらいゴミで一杯になっていることが多い。そんなゴミ部屋からは、断捨離や整理術の本が発見されることもあり、故人が荒れ果てた生活から抜け出そうとした姿が見て取れます。この時点でSOSのサインを受け取ってくれる人がいれば、孤独死は避けられた筈ですが…」(同)。そういったゴミ部屋の住人も、決して最初から荒れた生活を送っていた訳ではない。バリバリ働いていた人が、ある日突然、転落するケースも少なくないのだ。

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「大企業に勤めていた40代男性の場合は、超過労働に耐えられず、会社を辞めた途端に妻に離婚されてしまったようです。余程ショックだったのか、荒れた1人暮らしの末に行き着いたのは、病気による孤独死だった。離婚した元妻が遺品整理に立ち会ったというのが、何とも皮肉です」(同)。また、中年男性の孤独死の場合、糖尿病からの合併症で死亡する場合が多いことには先程触れたが、前出の梶本医師によれば、「自宅での1人飲みも突然死のリスクを高めることになる」という。「例えば、お酒を飲んで寝ると大きな鼾をかく人は多いですよね。鼾というのは、喉の奥で呼吸が詰まっている状態で、酸欠状態に陥って心拍数が高まり、心筋梗塞を起こすことがあります。寝酒をして就寝すると、この状態になり易くなる訳です。1人暮らしの男性は、『飲み過ぎだ』と注意してくれる人もいないでしょうし、このパターンで孤独死に至ったケースはかなりあると思います」。一人身男性の細やかな楽しみにも、孤独死の危険は隠れている。孤独死には、高い代償も発生する。発見が遅ければ、体液が床下まで浸透し、特殊清掃を施さねばならない。その場合、「特殊清掃費用自体は、最大で7万円ほど。これは、腐乱した遺体から出た体液が染み付いた床板や畳等を処分する費用です」(前出の石見氏)。ただ、畳や床板の新調やゴミの撤去費用等は別途かかる。孤独死現場はゴミ部屋と化していることも多く、1K~1DKの物件ならば、残置物撤去処理費用等も含め、酷いケースだと100万円近くかかることも。そういった費用は基本、遺族が払うのだが、相続放棄した場合は物件オーナーの負担になる。また、遺族側に物件所有者から更なる請求が来ることも。49歳男性が孤独死したケースでは、オーナーと揉めた末に、リフォーム代と家賃差額2年分の108万円が請求されたという。死後でも問題は起きるのだ。

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家族を孤独死させた遺族は、様々な苦難に直面する。千葉県の老人ホームで看護師として働く水野涼子さん(仮名・52)は、義理の兄が都内のアパートで1人で死んでいるのを発見した。「2年前に夫の兄(59)が孤独死しました。当時、義兄は癌でしたが、『住み慣れた家で暮らしたい』と言っていたんです。体調を心配して、夫は定期的に兄に連絡していたんですが、ある日、急に連絡が取れなくなったんです。それで、私たちは直ぐに上京して、兄の部屋の鍵を開けると、いつもと“空気”が違いました。陰鬱とした静けさの中、奥へ進むと、彼が血を流しながら倒れていたんです。それを見た夫は腰を抜かしてしまいました。私は蘇生処置を試みましたが、既に死後かなり経っていました。救急隊と警察に連絡した後、鑑識の人から『心肺停止によって死亡した』と知らされました。いくら癌とはいえ、まさかこんな急に亡くなるなんて…。兄の葬儀では、『悪いのは自分だ』と家族の誰もが自分を責めていました。義母は今でも、自分を責めています。何故なら、過去に何度か義兄の結婚を反対した経緯があったんです。私も看護師としての見通しが外れ、兄を独りぼっちで死なせてしまいました。だから、やりきれなさしかありません…」。家族の孤独死は、遺族の精神だけじゃなく、“金銭”にも負担を与える側面がある。秋田県に住む田中聡美さん(仮名・57)は、糖尿病によって従兄弟(57)を失い、その対処に追われた。「都内のアパートで従兄弟の遺体が発見されたのは、死後6日後でした。遺体の損傷が激しく、体中が膨らんで家族でも判別できない状態…。検死の結果は糖尿病の合併症だったのですが、私たちは病気だったことすら知りませんでした。従兄弟はフリーのプログラマーだったんですが、口座を見ると、半年前から仕事ができなかったみたいです。警察から遺体を引き取った後、直ぐに火葬の準備に入りました。すると今度は、従兄弟が住んでいた不動産屋の家主から連絡があったんです。220万円近くのアパートの全面改装費用と供養料を請求されました。秋田に帰った後に行政書士に相談して、何とか費用は90万円弱に下げることができたのですが、従兄弟の死でかかったお金は、葬儀・遺品整理・部屋の改装等、合わせて約300万円。幸いにも、従兄弟は貯金を残していたので何とかなりましたが、まさかこれだけお金がかかるとは…」。

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今年3月に協議離婚し、現在は1人暮らしの高橋ジョージ氏(右画像)。先日、『しくじり先生』(テレビ朝日系)に出演した際には、「人と会う機会が減る」「若し死んだら何日間発見されないんだろう」等、「1人暮らしの中で孤独死の危険を感じている」と語った。そんな高橋氏に現在の心境を聞くと、「離婚後の孤独感の“第2波”を実感している」という。「離婚して、家から妻と娘がいなくなった時は、凄い虚無感に襲われました。それは暫く経つと慣れてくるんですが、落ち着いた頃に寂しさの“第2波”が来るんですよ。例えば、行政から送られてくる通知や選挙の投票用紙。俺1人分しか来なくて、『あぁ、1人なんだな』と再認識させられるんです」。現在、高橋氏は58歳。自身を“老人に片足突っ込んでいる状態”と称しながら、「健康には、やはり気を使うようになってきた」という。「例えば、風呂に入る時。寒暖差でぶっ倒れないように、事前に風呂場をしっかり温めたりしますね。やっぱり、心が弱ると体も弱まるんですよ。それも半端ないスピードで。俺も精神的に参って、体調を崩す日が続いていましたから。孤独死をする人もきっと、心からやられていくんだと思います」。本来ならば、体調の変化に最初に気付くのは家族だ。しかし、一人身ではその存在がいない。だからこそ、「頻繁に顔を合わせるようなコミュニティーに所属して、誰かとフェイストゥフェイスで会わないといけない」と話す。「高齢者は年齢的に“死”を日々、意識しているんでしょうけど、僕ら40~50代の場合は突然来るんですよ。だから、親兄弟でも友だちでもパチンコ仲間でもいいから、自分の異変に気付いてくれる存在が必要なんです。俺も結婚はもうしなくていいけど、ルームシェアみたいな同居人は欲しいと思いますね。誰かといれば孤独死なんてしませんから」。高橋氏自身、最近はバイカーチームで仲間と交流を深めているとか。彼が身を以て得た教訓は、同じような境遇の人にとって参考にすべき“ロード”と言えそうだ。

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■過労死と孤独死のリスクが高い“過重労働独居者”の危機意識
労働基準法で定められた“過労死ライン”は、状況によって差はあれど、月平均80時間の時間外労働が目安とされている。これを1日当たり4時間と言い換えると、実に多くの人に当て嵌まるのではないだろうか。更に1人暮らしならば、孤独死のリスクも自ずと高くなる。本誌は、月80時間以上の残業が常態化している独身男性100人(35~45歳)にアンケートを実施。すると、激務に耐える彼らの75%は、「何かしらの“体調の異変”を感じている」と答えた(図④)。自覚症状としては、頭痛・目眩・不眠等が多かった(図⑤)。「きつい営業ノルマがあって、日中は常に外回りで、夜は会社で資料作り。サービスも合わせて、月に100時間は残業しています。すると、帰宅しても体は疲れているのに、全く眠れなくなる。会社のトイレで意識を失ったこともありました」(38・広告営業)。自動車部品メーカー営業の男性(42)の体験は、大人としての尊厳すら失われる事態だった。「ある日、クライアントとの会議中に『何か臭わない?』という話になったんですが、自分では何も感じなかった。でも、帰り道で上司から『スーツが汚れている』と言われ、初めて自分が大便を漏らしていることに気付いたんです」。精神疾患で失禁をするケースがあるというが、彼もストレスで知らないうちに鬱病になっていた。「それからは常に紙パンツを穿くようになり、精神科に通院をしながら働いたのに地方に左遷されて、結局は退職しました」。また、過労によって性器に異変が起こることもある。都内で内科泌尿器科のクリニックを経営する大和宣介氏が解説する。「過労によって、性欲の低下を感じる人は多いです。元気が無くなって中折れしたり、酷くなると若年性EDになってしまう人もいます。また、ヘルペスウィルスを持っている人は、過労で免疫力が低下すると、口や性器に発疹が出ることがあります。口の場合はそこまで痛みは無いのですが、性器のヘルペスは悼みも強く、非常に辛いです」。先程のアンケートによると、そういった体調不良を自覚しても、「市販薬で誤魔化して仕事を続ける」という人が殆ど。だが、過労の怖いところは、ホッと一息吐いたタイミングで体が悲鳴を上げることだ。

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「よく言われるのが、『土曜の早朝ゴルフの第1ホールが危ない』という話です。金曜まで忙しく働いた後、疲労を引きずったまま朝イチでゴルフに行く。1番ホールでドライバーを打ってコースを走り、グリーンでパターを打とうと息を止めた瞬間に、脳の血管がプツッと切れてしまう」(前出の梶本医師)。図⑤のアンケートにあった“手足の痺れ”や“呂律が回らない”という症状も、脳の異変が絡んでいる疑いがあるという。「これらの症状が慢性的に出る場合は、脳の異常を疑ったほうがいいでしょう。最悪の場合は脳梗塞のリスクもある。あまりにも酷い場合は、やはり一度、病院に行ったほうがいいです」(大和医師)。また、過労に加えて1人暮らしの場合は、孤独死に繋がる可能性も高くなる。「孤独死のニュースを見て危機意識を持つか?」という問いでは、8割弱が孤独死リスクを「実感している」という結果に(図⑥)。ファミレスチェーン店長の男性(36)は、こう嘆く。「1日12時間労働なんかザラで、アルバイトがいない時は自分が穴埋めをするので、会社の奴隷のような状態です。おかげで、メタボと揶揄われていたお腹がげっそり痩せて、久しぶりに会った友人には『癌じゃないのか?』と真顔で心配されました。今は毎晩、『寝たまま過労死して目覚めないんじゃないか?』と怖くなる。まぁ、アルバイトの誰かが見つけるでしょうけど」。更に、「若し死んだら誰かが1週間以内に発見してくれるか?」という質問では、3割が「誰も発見してくれない」と答え、更に約5割は「会社の人」と回答した(図⑦)。仕事以外の人間関係が如何に希薄になってしまっているかがわかる結果だろう。前出の石見氏によれば、中壮年で孤独死をした人には、幾つかの特徴が見られるそうだ。糖尿病を抱えていたり、部屋がゴミ部屋化しているのもその1つ。他に、「カーテンを年中閉め切っている」「公共料金の督促状がある」「万年床である」といった傾向も。それらに当て嵌まる人は、既に孤独死の危険性が高いということだ。「こういった条件を1つひとつ自分から離していけば、知らず知らずの内に孤独死を遠ざけられるのは明らかです。部屋にロープを張って洗濯物を干している人も多い。空気の入れ替えもしていないということです。朝夕に空気を入れ替えるだけで気分が全然違うのに、それすらしなくなっている人がハイリスクになる」。

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高齢者なら見回りサービス等といった地域・行政のサポートがあるが、中高年の場合は「元気なのが当たり前」という認識があって、それが無い。だから、ある日突然、誰にも看取られずに亡くなることになる。「だから、僕ら現場の人間の結論としては、中高年は自分で自覚して生活を改めるしかない。例えば、友だちを月に1度でいいから自宅に招くようにすれば、『家を綺麗にしよう』という意識だって芽生えます」。冒頭で紹介した42歳で孤独死した男性の場合、両親には離職を言えず、仲の良かった大家にだけ「精神的な病気で会社を辞めた」と伝えていたという。「彼は1度だけ、父親に電話をしたことがあったそうですが、殆ど何も話さなかったようです。『あれがきっとサインだったんだろうな』と父親は話していた」。過労死を避けたくても、仕事を辞めたり転職をしたりと、抜本的に働き方を変えるのは、多くの人にとって難しい。ならば、忙しい日々の中で、少しだけ生活をマイナーチェンジして、過労死に繋がるような疲労を避ける努力が必要になる。「先ずは、『疲れている時こそ酒を飲むな』と言いたい。極度の疲労で自律神経機能が落ちているにも関わらず、体のセンサー機能を落とすアルコールを摂取すれば、無評吸や心筋梗塞にもなりかねません。自律神経を回復させるには、質の良い睡眠しか方法はありません。日本では睡眠薬に抵抗を持つ人が圧倒的に多いんですが、疲れている時は、コップ1杯のビールよりもよっぽど睡眠薬のほうが体に害が無い。他にも、『あと数時間後には出社しなければ…』という時でも、横になって目を閉じるだけで情報が遮断され、脳も回復します。下手にコーヒーを飲んで中途半端に眠気に耐えるより、ずっと体に優しいです」(前出の梶本医師)。また、前出の寺西氏は、どれだけ働いているのか勤務実態を把握することの重要性を指摘する。「残業を含め、『月に自分はどこでどれくらいどんな仕事をしているのか?』を認識しておいて下さい。自分の仕事量を客観的に見ることで、働く姿勢や意識も自ずと変わってくる筈です」。そして、隙あらばサボることも重要だ。「人が多い空間で働く人ほど、1~2時間おきにサボって下さい。元々、人が多い空間はストレスを感じ易く、ある研究ではネズミでも2日で胃潰瘍になる。自販機でコーヒーを買ったり、煙草を吸ったり、頑張り過ぎないのが、過労死を避ける一番の方法なのです」(梶本医師)。過労死や孤独死をする中年男性たちは、殆どニュースになることはない。貴男には、本当に体調が悪くなった時に「助けて」と言える人がいるだろうか? 健康に生きている今こそ、我々は彼らの“最期”から学ぶべきなのだ。

■過労死と孤独死を避ける為の“仏十則”
①疲れている時こそ酒を飲むべからず
②寝酒の1杯よりも1錠の睡眠薬が効果的
③「あと1時間後には出社」でも目を瞑って横になる
④自分の勤務時間を客観的に把握しておく
⑤職場では無理をしないで1~2時間毎にサボる
⑥友人を月に1度は自宅に招くようにする
⑦万年床を止めて毎日窓を開けて換気を行う
⑧生活の変化が起きたら恥ずかしがらずに身内に言う
⑨「社会的なサポートは中年には無い」と知るべし
⑩本当に体調が悪くなったら誰かに助けを求めるか把握する


キャプチャ  2016年11月29日号掲載

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