【仁義なきメディア戦争】(07) 『アマゾンジャパン』の電子書籍読み放題サービス、尚も続く全削除

20170105 10
『Amazon.com』の日本法人である『アマゾンジャパン』が、電子書籍の読み放題サービス『Kindle Unlimited』を始めたのは、8月3日のことである。アメリカでは2014年7月に開始。既に11ヵ国で展開しているAmazonの独自サービスだ。日本での利用料は月980円(税込み)で、開始当初から和書12万冊以上が読み放題となった。『集英社』や『KADOKAWA』は参加を見送ったが、『講談社』や『小学館』等の大手出版社が参加に踏み切ったからだった。ところが、開始から僅か1週間足らずで、事態は思いもかけない方向に進む。出版社に何の断りも無く、読み放題になっていた作品が一部削除されたからだ。「何故、一部の作品を一方的に削除したのか」。8月中旬以降、講談社はAmazonに問い合わせると共に、削除された作品の復活を求めた。削除された講談社の作品は十数作品。その過半数は写真集で、残りは実用書だ。9月に入っても進展は無く、「著作権料等の支払いについての契約見直しに応じなければ、1000超の講談社作品を全削除されるかもしれない」――。そんな声も、現場からは聞こえ始めていた。そして9月30日の夜。出版各社に激震が走る。講談社の全作品が読み放題リストから姿を消した。講談社を含めて、全削除された出版社は一時、20社前後に及んだ。翌営業日に当たる10月3日に、講談社は以下の抗議文を自社のホームページに掲載すると共に、マスコミ各社に送付した。「アマゾン社が独断でこのような配信停止措置を採り得るものではないと考えておりますし、今回のような事態を、読者の皆様や提供した書目の著作者のかたがたにご理解いただくことが困難であると考えています。【中略】出版社として大変困惑し、憤っております」

同じく、全削除された小学館も、翌4日に改善を申し入れた。だが、11月に入っても、講談社や小学館の作品は読み放題から全て削除されたままである。異常事態と言っていい。何故、このような事態に陥ったのか。その謎を解くカギは、Amazonが各出版社に持ちかけた契約内容にあるようだ。講談社は「秘密保持契約があり、契約内容は言えない」、アマゾンジャパンも「個々の取引関係に関わることの為、コメントは控える」と多くを語ろうとしないが、関係者の話では、Amazonは読み放題の対象作品を多く揃える為に、出版社に支払う利用料を通常より多くする契約を提示していたという。即ち、ダウンロード数や、ダウンロード後に読んだページ数に応じて利用料を払うのが一般的だが、ダウンロード後に読者が1割以上のページをめくれば“全て読んだ”と見做して、利用科を支払うというもの。契約は年末までで、状況を見て、来年以降の新たな契約を結ぶかどうかを改めて交渉することになっていたようだ。全国紙が報じているのは、「Amazonは日本の漫画文化を見誤り」「こんなにも短期間に閲覧されるとは思いもよらず」「開始1週間で5ヵ月分の予算を超過してしまった」というストーリーだ。しかし、これには出版業界から「インターネット上で書籍販売を手掛けるAmazonは、今や日本一の書店。日本の市場にそこまでウブとは考えられない」との異論の声が上がる。「サービス開始間もなく削除するとは。最初から条件見直しを早々に言う腹積もりだったのではないか?」との恨み節すら聞こえてくる。抑々、講談社はAmazonの読み放題サービスに、漫画を1作品も提供していない。“想定外の漫画文化”という筋では、説明がつきそうもない。事態は収束に向かう気配すらないが、普段、本を読まない人がこうしたサービスに触れて、読書の楽しみに目覚める可能性は十分ある。出版業界に明るい兆しが出ることを期待して、サービス開始に乗った企業もある。ユーザーに対してもAmazonは不誠実だ。気に入らなければサービスを解約すればいいものの、予告無く出版社丸ごと削除の可能性があるのでは、安心して利用できない。Amazonは一刻も早く、出版社・著作者・読者が納得する道を示すべきだ。

20170105 02
■『NTTドコモ』の雑誌読み放題サービス『dマガジン』成功の秘訣
総合週刊誌・写真週刊誌・女性週刊誌等の雑誌が、スマートフォンやタブレットで読める『NTTドコモ』の『dマガジン』。1冊丸ごとという訳ではないが、立ち読み感覚で最新号の主要な記事をほぼ読むことができる。例えば、『週刊文春』2016年11月10日号をクリックしてみよう。『“小池劇場”大混乱』・『“レコード大賞のドン”謝罪告白』等、主だった記事の全文が読める。同誌に限らず、全体の約7割を読めるというのが、dマガジンの売りだ。立ち読み感覚の読者にとっては十分過ぎる情報量と言えそうだが、紙の雑誌を毎号購入している読者にとっても、dマガジンはメリットが大きいようだ。再び、週刊文春を例に取ろう。紙媒体を買えば1冊400円台(※特大号や合併号等、号によっては変動する)だが、dマガジンなら何号読んでも月額400円(税込み432円)の定額制だ。紙なら、週刊文春だけで毎月1600円(1号400円×4号)払っていたのが、主要記事しか読まないのであれば月400円で済む計算になる。dマガジンのサービス開始は2014年6月。当時の加藤薫社長(現在は取締役相談役)が「安くし過ぎたか!」と嬉しい悲鳴を上げるほど急成長し、契約数は2年足らずで300万を突破した(右画像)。ただ、「月額500円を超えると大きな契約の伸びは期待できない」という冷静な市場分析が背後にあったのも確かだ。ドコモが出版社との交渉を始めたのは、2014年1月のことである。外資系出版社との話は直ぐに纏まったが、小学館・集英社・講談社等といった大手出版社との交渉は当初、難航した。「味方と思ってもらえるまでに時間がかかった」と、当時の担当者は語っている。「雑誌のコンテンツを潰すものではなく、読まれる為の仕組みである」「収益を還元できる」と丁寧に説明して回った。破格の条件で釣るようなことをしなかったのが、結果的に双方の信頼感を醸成したのかもしれない。79誌でスタートしたdマガジンだが、現在は166誌(11月7日現在)と、2年強で2倍以上に増えている。それでも、月額400円のままで据え置いている。月額400円で300万ユーザーだから、月間収入はざっと12億円。年換算では144億円だ。この中から閲覧実績に応じて各出版社に収益が分配される仕組みや、電子化のコストが出版社の持ち出しなのは、アマゾンジャパンの読み放題サービスとほぼ同じだ。それなのに、dマガジンは出版社と大きなトラブルを抱えることも無く、急拡大した。地道な信頼構築こそが、その秘訣だったのかもしれない。


キャプチャ  2016年11月19日号掲載

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