【科学捜査フロントライン】(05) “迷宮入り”は許さない…科学捜査が真犯人を追い詰める!

時効・迷宮入り・完全犯罪…。事実、警察を嘲笑うような事件が未解決のままである。だがしかし、科学捜査の進歩によって、数々の未解決事件(コールドケース)が溶かされようとしている。 (取材・文/ノンフィクションライター 八木澤高明)

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1996年9月9日、東京都葛飾区柴又3丁目で、上智大学4年生の小林順子さん(当時21)が殺害され、自宅が放火された事件は、多くの人の記憶に残っていることだろう。犯人は、順子さんが1人で自宅にいたところを狙って侵入し、2階にいた順子さんの手足を粘着テープ等で縛り、刃物で首を刺して死に至らしめた。その後、犯人は証拠隠滅の為に、家の3ヵ所に火を放った。木造2階建ての住宅は全焼し、順子さんは2階6畳間で布団が掛けられた状態で発見された。布団と玄関付近に残されていたマッチ箱の内側から、家族のものではない血痕が検出された。犯人は、順子さんに抵抗されて負傷していたのだ。順子さんはTシャツに短パン姿で、暴行された形跡は無く、犯人が粘着テープを用意していたこと等からも、「計画的であり、身近な者による犯行ではないか?」と推測された。事件発生の日に順子さん宅を電柱の陰から見つめていた男や、事件発生時刻に駅の方に走り去った若い男等、幾つもの不審者情報が寄せられていたが、犯人には結び付かず、虚しく年月だけが過ぎていた。だが、最新の科学捜査により、送宮入りしていた事件に一筋の光が差し始めた。2009年、粘着テープから犬の毛が検出されたのだ。小林さん一家は犬を飼ったことがなく、“犬に囲まれて生活している者”という犯人の生活風景が見え始めた。更に2014年、布団とマッチ箱に残されていた血痕のDNA型鑑定が行われ、順子さん一家とは一致しない、犯人のものと思われるDNAが検出された。警察庁は2004年頃から、DNA型のデータベースの整備を始めていて、過去の事件の容疑者や、犯行現場の遺留物の鑑定結果等、約60万人分のデータを持っている。残念ながら、その中に該当者はいなかったが、今後、何らかの形で適合するDNA型を持つ人物を探し出せれば、犯人を特定することができる。最新の科学捜査により、犯人へと近付いていることは間違いない。1995年7月30日、八王子市大和田町のスーパーマーケット『ナンペイ』大和田店の2階事務所で、当時17歳と16歳の女子高生アルバイトと、パートの女性(当時47)の3人が射殺された。女子高生2人は粘着テープで口を塞がれ、両手を縛られ、至近距離から後頭部に1発ずつ発砲されて即死。パートの女性は、体は縛られることなく、銃把で殴り付けられ、金庫の前に突き飛ばされた後に射殺された。

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犯行時間は僅か5分ほどだった。女子高生2人が脳幹を撃ち抜かれていたことから、犯人は相当な銃の使い手だったことがわかる。拳銃自殺を試みた者が脳を撃っても、脳幹を撃ち抜かない限り即死することはなく、混濁状態にはなるが、暫く呼吸できるという。犯人は、2人の脳幹を的確に撃ち抜いていた。事件後、犯人の足取りは掴めず、未解決事件となっていたが、科学捜査によって、2015年2月、「犯人が女子高生を縛る際に使った粘着テープに残されていた指紋と、10年前に死亡した人物の指紋が合致した」というニュースが流れた。警察庁には1000万人分の指紋データベースが保存されており、粘着テープの指紋は、その内の1人と8点が合致したのだった。同一の指紋と認定するには12点の合致が必要だが、今回の合致における精度は1億人分の1とされる。だが、テープに指紋を残した人物が真犯人かどうかは、既にその人物が亡くなっていることもあり、定かではない。ただ、最新の科学捜査が新たな可能性を生み出しているのは事実である。日本の事件ではないが、近代犯罪の走りとして有名な事件と言えば、ロンドンのイーストエンドで起きた“切り裂きジャック”による連続売春婦殺害事件である。1888年8月31日から11月9日の約2ヵ月間に売春婦5人を殺害し、死体を切り刻んだ残忍極まりない事件――。犯人は犯行予告を新聞社に送り付けており、今で言う“劇場型犯罪”の走りであった。犯人が的確に内蔵の一部を取り出したりしていることから、医師や精肉業者等の刃物を扱う人間が疑われたが、結局は逮捕には至らなかった。ところが、最近の科学捜査によって、「犯人のものと思われるDNA型が検出された」というニュースが流れた。4人目の被害者のショールに残されていた精液からDNAを抽出し、容疑者の1人として名前が挙がっていたポーランド系イギリス人のアーロン・コミンスキーの子孫からもDNAの提供を受けて鑑定したところ、何と一致したというのだ。事件当時、コミンスキーは殺人現場の近隣に暮らしていて、目撃証言によって逮捕されたが、証拠不十分の為、不起訴となっていた。「遂に切り裂きジャックの正体が判明したか」と世間を騒がせたが、鑑定を依頼された生化学者が鑑定過程でミスをしていたことが明らかとなり、真犯人は再び闇の中へと消えてしまった。科学捜査の発展によって、以前では考えられなかった遺留品で、犯人を特定する可能性が高まったことを窺わせるエピソードである。

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■犯人の似顔絵を“DNA表現型解析”で作成…『プラチナデータ』は実現する!
「これが犯人の顔です」。事件現場の証拠物件から採取されたDNAを解析すると、犯人の背格好・顔立ち・年齢・性格までがわかるようになる。これにより、検挙率100%・冤罪率0%の世界が実現する――。作家の東野圭吾が2010年に出版した小説『プラチナデータ』(幻冬舎文庫)では、こんなDNAを使った近未来の捜査の世界が描かれている。事件捜査におけるDNA型鑑定は、これまでは個人を識別する為に行われ、現場に残されたDNA型と容疑者のDNA型が一致するかどうかが焦点になってきた。しかし、東野圭吾が描いた世界では、「現場で犯人のDNAさえ採取すれば、それを解析するだけで犯人がわかってしまう」というのだ。こんな世界は、作家が頭の中で考え出した絵空事という訳ではない。現実の世界でも、DNAから高いレベルで犯人像を割り出すことができるようになっている。「FBIが研究を進めていて、近い将来、DNAからかなりのことを炙り出すことができるようになる。日本の科警研でも、『既に研究を手がけている』と聞いています」と、『法科学鑑定研究所』の冨田光貴所長も言う。この方法は“DNA表現型解析”と呼ばれ、アメリカの研究機関では既に、DNA型解析により人種・肌・目・髪の色、更には大まかな顔形までわかるようになっているという。実際、DNA型解析から犯人の似顔絵が作成され、一般に公開されたケースもある。これらを行う為には、これまでに集められた何千人ものDNA型情報と外見をリンクさせたデータベースを使い、現場で採取されたDNAをコンピューターで解析して、そのDNA型の持ち主の身体的な特徴を割り出していく。今のところ、この技術は犯人の特定ではなく、犯人像と合わない人を容疑者から外すことで、捜査の効率を高めるものとされている。しかし、これから研究が進めば、プラチナデータの世界が現実になってくることは間違いない。犯罪者が確実に逮捕されるのはいいことだが、DNAで全てがわかってしまう。それが本当にいい世界なのだろうか。


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