【男の子育て日記】(33) ○月×日

8月9日 数日前から体調が悪く、病院で診てもらったところ、「熱中症ではないか」との診斷。経口補水液『OS-1』をガブ飲みし、一旦治まったのも束の間、四肢が筋肉痛のような痛み。処方されたロキソニンとアリナミンを服用したが、人生初の蕁麻疹。全身が痒くてたまらん。

8月10日 両手首が棒のように固い。指先に全く力が入らず。ペットボトルの蓋を捻ることも、鼻を穿ることも、お尻を拭くこともできない。勿論、一文を抱っこすることも。経験の無い恐怖。死ぬのが怖いんじゃない。一文を抱き締められなくなるのが怖い。この子が20歳になるまで元気に働かなければ。妻に一文の保育園の送り迎えをお願いする。別の病院で診てもらったら、「それ、熱中症じゃないよ」と、怖い病気をちらつかされてビビる。

8月11日 パニックから、自宅で一文と2人でいることが堪え切れなくなり、妻の東京仕事に帯同。滞在時間は13時間。「何やってんだ俺」と素面に戻る。

8月14日 指先が少しずつ動かせるようになる。

8月16日 赤坂で大雨の中、一文を連れてトンカツ屋へ。親使いの荒さには定評のある子だが、店内で狂ったように泣きじゃくる。他のお客の迷惑になるので、軒先で30分ほどあやす。グラビア撮影を翌日に控えて、エステのハシゴから戻って来た妻に迎えに来てもらった後、冷えて脂が固まったカツとご飯と味噌汁をかきこみ、逃げるようにホテルに帰る。やれやれとビールを飲んでいたら、一瞬、目を離した隙に、一文がビール缶で遊んでいるではないか。真っ青になって、一文の口回りをチェック。ビールを飲んでいないか怖くなる。「何をやっているんだ俺は」と落ち込む。「たけちゃんは子育てに向いていないよ」。妻がいつか感情に任せて言い放った言葉が、頭の中でぐるぐると繰り返される。

8月17日 「赤ん坊が泣いています。妻はグラビア撮影に行きました。『とりあえず乳首とまんこは死守してくる』『ハメ撮りになったら呼ベよな』。赤ん坊が泣いています。正気ではない夫婦です」。このツイートを書いた後、白石一文宅を訪問。久し振りにお会いしたら、ダイエットですっきり痩せていた。絶好調のご様子。「どっちにも似ていないねぇ。ほんとのパパは誰?」「どこが可愛いんですか? 喋れもしないのに」。師匠、飛ばしますねぇ。「色が白いね。外人みたい」。松江哲明さんのとこの、超絶可愛いダブルの赤ちゃんの写メを見せる。「えっ、見分けが付かないけど。取り替えてもわからなかったんじゃない?」。その後、白石一文流子育てレクチャーを受けて帰宅。撮影から戻ってきた妻。薄らと頬を上気させている。何かあったのか。

8月22日 日赤で再検査。指先が動かなかったのは、「筋炎ではないか」とのこと。「ウィルス性で、最近流行っていますよ」と医師。念の為、一文とのディープキスは控えよう。夏休みの無い夏。気ばかり疲れて。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2016年12月29日・2017年1月5日号掲載
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