【トランプショック】(15) アジア安保と保護主義憂慮――トミー・コー氏(元シンガポール駐米大使)

20170106 01
――ドナルド・トランプ氏勝利を、どう受け止めましたか?
「アジアは心配している。アメリカの政策がどこに向かうか判断できない。シンガポールには、新大統領とのパイプは無い。各国共通の難題だ。世界は未知の領域に入った」

――アジア各国が最も憂慮する点は何ですか?
「トランプ氏の真意がわからないことだ。中でも、大きな懸念は2つある。1つは、アジア太平洋の安全保障への影響だ。アメリカが日本や韓国と結んだ同盟関係を維持できるかどうかは、極めて重要だ。日韓との同盟は、域内全体の安定に大きな意味を持つ。トランプ氏は、この重要性を理解しているのだろうか?」
「もう1つが、保護主義の台頭だ。環太平洋経済連携協定(TPP)が発効する可能性は低い。TPPは、単なる貿易の枠組みではない。アメリカがアジアとの関係を深め、アジアがアメリカと連携を強める為に欠かせない枠組みだ。トランプ氏が打ち出す具体的な通商政策を、注意深く見守る必要がある」

――米中関係はどうなりますか?
「中国国内では、『(民主党候補だった)ヒラリー・クリントン氏より与し易い』との声もあった。中国は、ビジネスマンの扱いに長けているからだ。だが、トランプ氏の対中政策の行方は予測できていない。中国も焦りを感じている筈だ」

――アジアでも“トランプ現象”が起きる可能性はありますか?
「グローバリゼーションには、勝者と敗者がつきものだ。シンガポールも同じ難題に直面する。トランプ氏は、敗者に寄り添って勝った。だが、保護主義を強めれば、国の競争力は落ちるだけだ。敗者を救い上げる政策が必要だ。トランプ氏の勝利から学ぶことは少なくない」 (聞き手/シンガポール支局 吉田渉)


⦿日本経済新聞 2016年12月19日付掲載⦿
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