【2017年の世界はこうなる】(05) さらば弱腰外交…南シナ海に嵐の予感

20170110 08
「アメリカで新大統領が就任した直後の春には、南シナ海で何かが起きる」――。多くの専門家が、そう考えてきた。ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2001年の春には、米中の軍用機が衝突。バラク・オバマが就任した2009年の春には、アメリカ海軍の音響測定艦が中国船に嫌がらせを受けている。だが、今回は“春”の訪れのほうが早かった。ドナルド・トランプ次期大統領の就任を待たずして、アメリカ海軍の無人潜水機を中国海軍の艦艇が奪う騒ぎが起きたからだ。無人機を奪った理由については、憶測の域を出ない。トランプが台湾・蔡英文総統と電話会談し、更にアメリカが離持してきた“1つの中国”政策の見直しを示唆したことへの報得か。それとも、起こるべくして起きたのか。おかげで、オバマ政権が過去数年間、コツコツと進めてきた米中海軍の雪解けはブチ壊しだ。東南アジア各国の政府は、中国の台頭に益々危機感を募らせ、アメリカや他の周辺国――日本、インド、オーストラリアとの新たな安全保障の枠組みを求めている。中国は、無人機を奪うことで、「失うものより得るもののほうが多い」と判断したに違いない。無人機の技術とデータが目当てか、或いは「中国の潜水艦の傍で無人機を使うな」とアメリカを牽制する為か。だが、最大の動機は恐らく、「アジアにおけるアメリカの影響力には限界がある」とみて、「(中国が死守したい)核心的利益(※特に台湾問題)に口出しするな」と警告を発する為だろう。回収中の無人機を奪われたアメリカ海軍の『ボウディッチ号』は、標的にするにはうってつけだった。2009年に嫌がらせに遭った音響測定艦と同様、非武装。乗組員は殆どが民間人で、偵察と海洋調査が任務だ。

中国軍は、その活動を海南島の潜水艦基地に対する安全保障上の脅威と見做している。理屈の上では、中国海軍の乗組員が全く自発的に無人機を奪った可能性もゼロではない。アメリカの太平洋艦隊情報部門の元トップの話では、2015年10月以降、中国側は南シナ海の国際水域に入るアメリカ軍の戦艦を逐一尾行している。アメリカ国防総省によれば、ボウディッチ号を尾行していたのは中国海軍の潜水艦救難艦。「正体不明の装置を発見し、調査した」という中国国防省の説明は馬鹿げているが、少なくとも、乗組員が政府からの直接指示無しに奪取した可能性はある。そうはいっても、中国政府が突然、無人機を奪ったフィリピンのスービック湾まで、南シナ海における領有権の主張を拡大したとは思えない。寧ろ、トランプの発言を受け、無人機奪取にゴーサインを与えたのではないだろうか。エスカレートする緊張は今後、どこへ向かうのか。トランプの上級顧問(安全保障担当)を務める元CIA長官のジェームズ・ウールジーは、「『アジアの現状を力ずくで変えようとしない』と中国が約束すれば、アメリカは中国の政治・社会システムを受け入れ、それを撹乱するような真似は一切しないことを保証する用意がある」と示唆している。問題は、「その状態を実現する為に、トランプがどの程度まで中国と妥協するつもりなのか」――言い換えれば、「アメリカとアジアの利益をどの程度、犠牲にする覚悟でいるのか」だ。今回の騒ぎは、「協調と紛争回避を重視してきたオバマの対中外交の有終の美を飾るに相応しいもの」と受け止められる筈だ。5日後に無人機が返還され、危機が回避されたことは、その正しさの証しと評価されるだろう。南シナ海で米中が衝突する事態を何よりも危惧する東南アジアの国々にとっては、非常に喜ばしいことだ。その一方で、「オバマの弱腰は、南シナ海で中国を増長させているだけだ」という批判も根強い。トランプの防衛問題上級顧問であるアレクサンダー・グレイと、新設される『国家通商会議』トップに指名されたピーター・ナバロは、“力による平和”を主張し、オバマの弱腰外交を葬り去る構えだ。“リスク好き政権”の強硬姿勢が吉と出るか凶と出るかは、間もなく明らかになる筈だ。 (ビル・へイトン)


キャプチャ  2017年1月3日・10日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR