【2017年の世界はこうなる】(06) 勝負の年を迎えた習近平の綱渡り

20170110 09
「中国の習近平国家主席にとって、この先の1年は危険な年だ」と言ったら、一笑に付されるかもしれない。何しろ彼は、毛沢東以来の最も強大な権力を手にした指導者と言える人物だ。しかし、それは真の姿ではなく、その権力基盤は思われているほど盤石でない可能性がある。判断の手掛かりになりそうなのは、2017年秋に予定される中国共産党の第19回党大会だ。そこで新たなメンバーとして選ばれる政治局常務委員会(中国共産党の最高意思決定機関)の顔触れがカギになる。習は、党中央委員会総書記に選出された2012年11月以降、着々と権力を固めてきた。汚職追放の名目で、200人以上の高官と将軍を逮捕。その多くは、習のライバルに連なる人物だった。中国共産党内のアンチ習派は、効果的な反撃もできないまま、自分の息がかかった人間を、習が党の重要ポストに就かせるのを眺めているしかなかった。とはいえ、2017年秋の党大会では、権力バランスが変わるかもしれない。習が総書記に再指名されることは規定事実だが、その他の人事を巡っては、政敵との熾烈な争いが起こる。1989年の『天安門事件』以降、中国共産党は権力闘争を避ける為、任期が実際に始まる何年も前から、次期総書記と次期首相を指名している。鄧小平は1992年に胡錦濤を江沢民の後継者に選んだが、引き継ぎは2002年。2007年、党指導部は胡の後継者として、習を政治局常務委員会メンバーに選んだが、総書記に就任したのは2012年だった。しかし、この指名システムは飽く迄も非公式なものだ。その為、慣例では2017年の党大会で2022年からの総書記と首相が選ばれる予定なのだが、習がそれに従う保証はどこにも無い。若し後継指名が無ければ、習は2022年に大きな裁量権を行使できる。自身が3期目を目指すかもしれないし、“秘蔵っ子”を後釜に据えるかもしれない。

一方、中国共産党としては、早めに後継者を決めておきたい。党への信頼が高まり、その正統性を主張できるからだ。だが、習は“レームダック”となり、2期目の5年間は権力を思う存分に振るえなくなるだろう。党大会での後継指名の他に、習には2つの人事案件で、党内からの抵抗を受ける可能性がある。先ずは政治局常務委員会だ。“68歳定年制”のルールに厳格に従えば、現職7人の内の5 が引退することになる(但し、これも“内規”に過ぎない)。若しも、習が3人だけを交代させ、定員を5人に減らして自分の仲間で固めれば、圧倒的な優位に立てる。しかし、政敵が猛烈に反対する筈だから、これは容易なことではない。もう1つは、習の反汚職キャンペーンを率いる中央規律検査委員会・王岐山書記の今後だ。現在68歳の王が2017年にルール通り引退すれば、習は右腕を失ったも同然。しかし、定年制を無視して例外的に彼を続投させれば、引退させられる人間が反発するのは必至だろう。習が、この数年に易々と政敵を排除してきたことを思えば、「2017年の党大会でも勝者となる」と考えたくなる。しかし、“落とし穴”がある。重要な人事には党中央委員会の承認が必要だが、205人の委員にはかなりのアンチ習派がいる(9人は逮捕によって排除されたが)。彼らが一斉に立ち上がり、未だに強い影響力を持つ江沢民等の長老を抱き込んだら、習の練り上げた計画は潰されてしまうかもしれない。ライバルたちは、習政権の実績を突いてくるだろう。2013年以降、中国経済は減速し、債務は急増し、構造改革は進まず、不動産バブルも取拾できていない。大規模なインフラ投資で中国とヨーロッパを結ぼうとする壮大な『一帯一路』戦略も、中央委員会が「野心的過ぎる」と考えたら、習のアキレス健となりかねない。2017年の中国経済は、更なる悪化が予想される。そうなれば、習の権威は大きな挑戦を受けそうだ。金融政策だけでは成長の鈍化に対抗できない。ドナルド・トランプが率いるアメリカとの貿易摩擦や、アメリカの金利引き上げで人民元の価値が下がり、資本の逃避が起こることも考えられる。大都市の不動産価格が暴落したら、資本の逃避が加速し、既に不良債権だらけの金融システムに大きな圧力がかかるだろう。中国における権力闘争の勝者が誰になるかは、誰にもわからない。今のところ、毛沢東以後では鄧小平と江沢民だけに付けられた、党の“核心”という栄えある称号を手に入れた習が優勢に見える。しかし、ライバルたちにとって、来るべき2017年の党大会は、天安門事件以降の政権禅譲システムを維持する最後のチャンスだ。“習にとって危険な1年”と言う所以である。 (本誌コラムニスト&クレアモントマッケンナ大学教授 ミンシン・ペイ)


キャプチャ  2017年1月3日・10日号掲載
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