【2017年の世界はこうなる】(09) コロンビア和平の導き方

コロンビアで半世紀に及んだ反政府左翼ゲリラとの紛争。この戦いを終結に導いたとして、同国のフアン・マヌエル・サントス大統領に、2016年のノーベル平和賞が授与された。サントスは、2012年から『コロンビア革命軍(FARC)』との交渉を開始し、2016年9月に和平合意にこぎ着けた。合意案は翌10月の国民投票で否決されたが、修正を加えた新たな和平合意文書が翌11月末に議会で承認された。イスラエルの元外務大臣で、中東和平交渉に携わったことのあるシュロモ・ベンアミが、コロンビア和平交渉の内幕等についてサントスに聞いた。

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――貴男は、アルバロ・ウリベ前大統領の政権で国防大臣を務めていた頃はタカ派として知られていたが、大統領就任後に和平交渉へと舵を切った。その転身ぶりに多くの人が驚いた。
「転身した訳ではない。過去にもFARCと交渉しようとしたが、条件が整っていなかった為に失敗に終わった。条件の内の2つとは、政府が強い立場で交渉を進める為の軍事的優位性と、地域のサポートだ。私は、前者については軍事力強化によって、後者については現実的な交渉によって条件を整えた」

――ベネスエラの故ウゴ・チャベス前大統領と、キューバ国家評議会の故フィデル・カストロ前議長は、和平交渉においてどんな役割を果たしたのか?
「2人とも、和平プロセス全体に亘って大きな助けとなった。彼らの影響力が、FARCを正しい道へ進ませる決め手となった」

――4年間の和平交渉は、とても長いプロセスだった。何故、それほどまでに複雑だったのか?
「和平交渉とは、いつも複雑なものだ。50年間も対立が続いていた場合は尚更だ。長く民主主義と戦ってきた組織に対し、それを受け入れるよう説得し、合意に達するのは容易ではない。興味深いことに、交渉が長引くのは悪いことではないのかもしれない。ノートルダム大学が、1989~2012年に締結された包括的な和平合意34件の調査を行ったところ、『交渉が長期に亘るほど、よりよい合意が得られる』と結論付けられたという」

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――和平交渉が始まる前の2011年に、紛争犠牲者に対する補償と、土地返還に関する法律が制定された。この法律は、FAFCを交渉のテーブルに着かせる為の“餌”だったのか? それとも、和平と関係なく、貴男はこの法律を支持したのか?
「私は最初から、『犠牲者の権利が、この紛争解決の中核でなくてはならない』と心に決めていた。既に70万人近い犠牲者に補償が行われ、紛争によって土地を奪われた小作農たちには20万ha以上が返還された。紛争が終結する前に、これほどの補償が行われた和平プロセスは前例が無い」

――和平交渉においては、軍や官僚からの協力を得られるかどうかが大きな課題だ。貴男の場合はどうだったか? 軍部内の反対派を煽るような横槍が政敵からあったか? 若しあったのなら、どう対処したか?
「この和平が成功した主要因の1つが、まさにそれだ。私は最初から、軍や警察と情報を共有するだけでなく、彼らが交渉に関与できるようにした。そうすれば、彼らは交渉の妨害者ではなく、支持者になってくれるからだ。『和平は全ての兵士にとっての勝利だ』と私は言い続けた。交渉を決裂させようとする勢力が軍を使って妨害してきたことは何度もあったが、説得と統制によって思い止まらせた」

――ウリベ前大統領は何故、貴男の和平案に強く反対したのか? 彼は本当に「内戦のほうがマシだ」と信じていたのか? それとも、「自分のほうがよりよい和平案を引き出せる」と思っていたのか?
「ウリベも、私たちと同じことをやろうとした。彼が今、批判している和平案の多くの点について、過去に同じ提案をしていたことは記録に残っている」

――国民投票で、和平案は僅差で否決され、和平交渉は崖っぷちに追い込まれた。果たして、国民投票をやる必要はあったのか?
「必ずしも必要ではなかった。『やらなければならない』という法的義務も無かった。皆に反対された。だが私は、当初から『(国民投票の)実施は正しいことだ』と考えていた。『喝采を求めるのではなく、たとえ人気が無くても正しいことをする』というのが、私の統治のやり方だ」

――国民投票での否決を受けて、「再交渉は2018年の大統領選まで長引くのではないか」と多くの人が予想した。和平交渉が選挙の争点になれば、政情は不安定化し、和平プロセスも決裂しかねなかった。
「時機と対話が大事だった。私は、反対派の主張を『政治工作だ』と一蹴せず、新たな合意に向けた話し合いを続けた。FARC側も、議れない条項(※政党としての政治参加を認める・懲役刑の代わりに社会奉仕活動を行う)以外については和平案の修正に前向きであり、反対派の意見に耳を傾けようとした。そのように集中して協議を行った結果、最初の和平案の重要な骨子を残したまま、新たな合意に達することができた。国民投票で否決されたことにより、できるだけ多くの国民の合意を得る為の包括的な話し合いをする機会が得られた。『紛争を終結させるだけでなく、国民が和解を始める契機となる包括的な和平合意に至った』と確信している」

――交渉の間、「もう駄目だ」と諦めかけた時はあったか?
「勿論。とても長く困難な道程であり、何度も諦めようかと思った。だがそんな時は、ハーバード大学の著名な教授の助言に従った。『犠牲者の声に耳を傾けなさい。彼らは、貴方にもう一度、活力を与えてくれるだろう』」

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――貴男は、反対勢力から「停戦一本槍の“シングルイシュー大統領”だ」としばしば非難さ れている。
「私は、これまでにも色々なことで非難を浴びてきた。『共産主義者の工作員だ』とか、(旧ソビエト連邦の情報機関)KGBのメンバーだ』とか、『裏切り者だ』とか。“シングルイシュー大統領”と言われるなど、それに比べれば遥かにマシだ。それでも、“シングルイシュー大統領”というのは事実に反する。コロンビア経済は中南米でトップクラスの健全性を誇っており、社会指標を見ても非常にいい状態にある。私が大統領に就任してから貧困率は12ポイント減少し、極貧層は半分に減った。教育の完全無償化を実現し、教育の質も過去に例が無いほど改善されている」

――コロンビアが麻薬の一大生産・輸出国であることに、多くの人々と各国政府が懸念を抱いている。今回の和平合意により、そうした状況に間違いなく終止符を打つことはできるか?
「和平合意により、我々は違法作物から合法的な作物への転換に、初めて包括的且つ効果的に取り組むことができるようになる。合意以前はFARCがコカ畑を守っていたので、そんなことは不可能だった。莫大な費用をかけてコカを根絶しても、次の日にはFARCが新たにコカを植えるということの繰り返しだった。だが、FARCは作物の転換政策で、我々に協力することを約束している」

――麻薬合法化を支持している理由は?
「麻薬戦争は、世界各地で40年以上に亘って続いているが、勝利の見込みは全く無い。コロンビアは、そうした戦争において最も大きな犠牲と対価を払ってきた国だが、『全く(麻薬撲滅に向けた)前進が見られない』と感じることもある。今よりも人権と公衆衛生に重きを置いた新たなアプローチが必要だ。関係した者全てを刑務所に閉じ込めたところで効果は無い。当局は、麻薬密売ネットワークの最も危険な部分に力を集中すべきだ。だが、これは世界的な問題であり、国を超えた対応が必要だ。私は、この主張を世界に訴えていくつもりだ」

――コロンビアにとって、和平が齎す主な思恵とは何か?
「和平は、あらゆる面で大きな変化を齎すカギとなるだろう。50年に亘る戦乱を経て、思いやりの心すら失った社会が、平和な環境に置かれることでどんなことを成し遂げられるか、想像してみてほしい。官民其々の投資が増加し、大きな成長の可能性を秘めながら、暴力によってその道を断たれていた地方へと流れ込むだろう。農業・工業・観光業が発展に向かい、更なる雇用・進歩・社会的公平を齎すだろう。可能性に限りは無い」

――だが、貴男も以前言っていたように、和平合意はゴールではない。残る任期中、貴男は内戦終結後の様々な厳しい課題に向き合うことになる。具体的には、どんな課題があり、どう対処するつもりでいるか?
「今回の合意により、紛争には終止符が打たれるが、平和を築き上げるには、遥かに長期間に亘る大きな努力が必要になるだろう。主な課題は、コロンビア国民が一丸となり、政府と国全体が協調して、効率的且つ効果的な方法で和平合意を実現することだ。『コロンビア国民には、平和の種を蒔き、その果実を収穫できるだけの才能も意欲も忍耐力もある』と私は確信している」


キャプチャ  2017年1月3日・10日号掲載

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