【2017年の世界はこうなる】(10) トランプとプーチン、蜜月はいつまで

20170110 16
ドナルド・トランプがアメリカ大統領選での勝利を決めた日の朝、ロシア連邦議会では、速報に接した議員たちが大歓声を上げた。大統領のウラジーミル・プーチンも、逸早く祝電を送った。曰く、「両国関係を危機的状況から脱却させ、喫緊の国際的課題への対処等において協力していきたい」。多分、プーチンの予想通りだったのだろう。選挙戦中からトランプは繰り返し、「プーチンはオバマより偉大な指導者だ。彼となら上手くやれる」と秋波を送っていた。予備選の段階でも、「毅然とした対応をするが、ロシアとは今のようなやり方ではなく、友好的に付き合っていく考えだ」と言っていた。何とも親密な2人だが、扨て、蜜月はいつまで続くか。トランプは、2017年1月20日にアメリカ合衆国大統領に就任したその日から、“怒れる元超大国”ロシアが、アメリカとその同盟国に対して繰り出す猛烈なスパイ活動や悪質なプロパガンダに対処しなければならない。前任者のバラク・オバマのように、ロシアの“サイバー戦”を受けて立つのか。それとも、面倒な経済制裁を終わらせて、プーチンが影響力を拡大するのを許すのか――。トランプの選択肢は、この2つしかない。イギリスの諜報部『MI5』長官のアンドルー・パーカーは2016年11月、実に異例のことだが、『ガーディアン』の取材に対し、「ロシアが国家機関とその力を総動員して、自らの外交政策を国外に広める為、益々攻撃的なプロパガンダ・スパイ活動・破壊工作・サイバー攻撃を展開している」と警告した。目には見えないが、ロシアによるサイバー攻撃は既に始まっていて、激しさを増している。これが、一度も公職に就いたことの無い次期アメリカ大統領を待ち受ける現実だ。

この1年で、ロシアは益々大胆且つ級密な作戦を展開するようになった。ウクライナではサイバー攻撃で大規模な停電を引き起こし、アメリカのホワイトハウスやドイツ連邦議会のサーバーにも侵入したとされる。東西冷戦の終結以降、欧米に対するこれほどまでの攻撃は無かった。「欧米諸国がロシアの威厳を傷付けようとし、ロシアの伝統的な勢力圏で革命や反乱を扇動しているのは明らかだ」とロシア側は信じている。今世紀に入ってジョージア(グルジア)やウクライナで起こった民主化革命も、2012年にモスクワで起きた大規模な反プーチンのデモも、「全てはロシアの弱体化を狙ったアメリカ主導の陰謀だ」とプーチン周辺は信じ、国民にもそう信じ込ませている。アメリカの次期大統領にトランプが決まると、ロシアのテレビでは、プーチンに友好的な発言をするトランプの映像が繰り返し流れた。トランプは2016年夏、アメリカのテレビ番組で「私の知る限り、クリミアの人々は『ウクライナよりもロシアと一緒になりたい』と考えている」と語っていた。しかし一方で、プーチンを非難するかのように、「クリミアはロシアに奪われた」とも発言している。少なくとも、これまでのところ、トランプの発言には一貫性が無い。「トランプ政権になれば、ロシアに対する経済制裁は終わる」と期待するのも的外れだ。共和党議員の多くは制裁を支持している。ロシアのハッカーたちは、トランプの勝利に一役買ったかもしれない。しかし、トランプ政権がロシア政府を落胆させるようなことがあれば、今度は同じハッカーたちがトランプに牙を剥くだろう。ソビエト連邦時代にKGBの情報員として、旧東ドイツのドレスデンに駐在していたプーチンは、当時はできなかったことを今やろうとしている。単なる情報収集では満足せず、情報を使った見えない戦争を遂行しようとしているのだ。この路線は、ロシアの軍事戦略に、所謂“ハイブリッド戦争”として明記されている。つまり、「軍事力を使うこと無く、政治目標を達成する為、先に情報戦を仕掛ける。その後、軍事力の行使が容認されるような国際世論を形成する」。その為の“情報戦部隊の育成”に総力を挙げるという。ロシアとアメリカの国益は一致していない。ロシアはヨーロッパの分断と混乱を望んでいるが、アメリカはヨーロッパの団結と繁栄を望んでいる。

20170110 17
シリアでは、ロシアは「自国軍事力と外交力で、バシャル・アサド大統領のような独裁者を守れる」という実績を作りたい。だが、アメリカはずっと、全ての反体制勢力が参加できる民主的な選挙の実施を求めてきた。ウクライナはどうか。ロシアは、この国を再び、自分の勢力圏に取り込みたい。それが無理なら内戦を長引かせ、EUへの加盟を阻みたい。だが、アメリカの共和党は(珍しくオバマ政権と歩調を合わせ)、旧ソ連圏の諸国がロシアの拡張主義と戦うことを一貫して支持している。トランプがプーチンを甘やかせば、ヨーロッパの北東端に位置するバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)もウクライナと同じ運命に落ちかねない。何れも嘗てはソ連に併合されていた国で、ロシア系の住民が多く暮らしている。トランプは選挙戦中、「北大西洋条約機構(NATO)は時代遅れで高くつく」と批判し、アメリカ以外の加盟国が相応の費用を負担しない限り、NATOの相互防衛義務を引き受けないことを示唆してきた。大統領就任後も、この姿勢を維持するようなら、プーチンはロシア系住民を“守る”という口実の下に、バルト3国(何れもNATO加盟国)の不安定化を試みる可能性がある。「(NATO加盟国の)防衛義務とロシアに関するトランプの主張は、『単なる選挙用のレトリックに過ぎなかった』と信じたい」。2016年10月のリトアニア総選挙に勝利して首相となった中道派のサウリウス・スクバルネリスは、トランプ勝利の報に接した時、そう語っている。果たして、スクバルネリスの願いは通じるだろうか。彼が幸運ならば、大統領就任後のトランプは、アメリカの同盟国がどこかを直ぐに理解し、リトアニアのような親米国を守ることの重要性に気付くだろう。「今の世界は極めて不完全であり、誰を友とするかを自由に選べるとは限らない」。トランプは2016年9月、そう語っていた。「しかし、誰が敵かを見誤ってはいけない」。扨て、プーチンは友か、それとも敵か――。答えを先延ばしにしている余裕は無い。 (オーエン・マシューズ)


キャプチャ  2017年1月3日・10日号掲載

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