【2017年の世界はこうなる】(14) 地球温暖化の軽視は国家にとって最大のリスクに

20170110 23
軍事行動に限らず、何事も成功のカギは計画にある。但し、筆者のように30年も軍人生活を送っていると、「有効な計画とは環境によって常に変化するものだ」ということもわかってくる。環境は時に、驚くほど激変する。アメリカ大統領選におけるドナルド・トランプの勝利も、そんな意外な変化の1つだ。私たちは環境に適応し、新たな事実がわかる度に調整を続けなければならない。そうでなければ、重大な戦略的脅威に対応できないリスクが生じる。重大な戦略的脅威となりそうな最たるものが地球温暖化だ。地表の気温上昇は、経済的にも軍事的にも世界の環境を根本的に変えかねない。気候変動は、軍の世界で言うところの“脅威増幅器”だ。直線的に様々な問題を引き起こすのではなく、既存の安全保障リスクを一段と強化・複雑化し、将来的に軍の任務の頻度・規模・複雑さを高める要因となる。気候変動の脅威の緊急性は、急速に高まっている。北極圏等での軍の活動範囲が広がり始めているのも、その表れの1つ。より強力なハリケーン・台風・干ばつの襲来によって、人道支援活動を軍がサポートする必要性も高まっている。極端な異常気象の増加によって家を追われる人が増えれば、難民の数は今以上に増加し、水・食料・エネルギー等の争奪戦が激しさを増す。その結果、不安定な地域は更に不安定化し、統治体制の脆さ・経済的不公正・社会的緊張が高まり、致命的な紛争が起きるだろう。気候変動を“不安定さの促進剤”と呼ぶのは、その為だ。この点に関して、アメリカの治安当局の認識は一致している。

アメリカ軍は10年以上前から、気候変動を重大な安全保障上の脅威と見做してきた。バラク・オバマ政権が発表した2015年の国家安全保障戦略も、気候変動を「テロ・経済危機・大量破壊兵器の拡散と並ぶ国益への最高レベルのリスクだ」と指摘 していた。実際、アメリカ軍は長年、気候変動を計画策定に織り込んできた。旧日本軍による真珠湾攻撃や9.11テロに代表されるような安全保障上の大失態は、準備不足に起因していた。その反省から、ジョージ・W・ブッシュ前大統領は戦略策定に際して、気候変動の影響を考慮することを国防当局に課す法律を成立させた。トランプ政権が地球温暖化問題にどのような姿勢で臨むのか語るのは未だ早い。トランプは選挙戦中、温暖化防止の新たな国際的枠組みである『パリ協定』からの脱退を含む大幅な方針転換を掲げていた。それが極めて近視眼的な発想であることを、新政権は理解すべきだ。実際には、安全保障的にも経済的にも、温室効果ガスの排出を迎えたクリーンな世界を目指すことこそ国益に適う。クリーンエネルギー革命は既に、アメリカの地方に新たな雇用・カネ・産業を生み出しており、計り知れないチャンスを齎す源だ。経済環境の変化も、そうしたチャンスを後押しする。中国やインド等の新興国は、クリーンエネルギー分野での超大国を目指して凌ぎを削っており、その競争から取り残されることはアメリカの国益にならない。トランプがアメリカを“偉大な国”にしたいのなら、他国との競争に勝ち、アメリカ人に雇用を齎すような未来志向の産業育成に力を入れるべきだ。安全保障の面でも、トランプ政権はアメリカ軍の活動を継続させ、より回復力の強い戦略を練る必要がある。政治の世界では、脅威を無視しても許されるかもしれないが、安全保障の世界では違う。気候変動の現実を否定しても何も生まれず、寧ろ経済を損ない、国家を深刻な危機に曝す。そうなれば、トランプは“アメリカ国民の安全を請け負う”という大統領の重要な任務を果たせなくなるだろう。戦略上の重大なリスクを、政争の具にしてはいけない。気候変動の脅威は、右派と左派の対立とは無関係に、今後もこれまで同様にアメリカの戦略策定に組み込まれるべきだ。我々は、自ら望んだ戦争に備えるだけでなく、好むと好まざるとに関わらずやって来る闘いにも備えなければならないのだから。 (元アメリカ海兵隊准将 スティーブン・チェイニー) =おわり


キャプチャ  2017年1月3日・10日号掲載
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テーマ : 国際問題
ジャンル : 政治・経済

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