【労基署ショックが日本を襲う】(04) 記者の超長時間勤務は限界…待遇悪化の新聞社は“蟹工船”

長時間労働の是正機運の高まりは、記者の超長時間勤務に依存した新聞社のビジネスモデルをも、崩壊の淵に突き落としそうだ。そこから脱却できない社は、淘汰の憂き目に遭うだろう。

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「受験者数は年々減っている」――。ある大手新聞社の人事担当者は、こう嘆く。左表のように、嘗て大手メディアへの就職といえば高根の花だったが、崖を転がり落ちるように人気は凋落している。当然、集まる人材の質も下がる。人気低迷理由の1つに、学生が業界特有の前近代的な働き方に“魅力を感じない”ことがあろう。右下表を見てもらいたい。ある大手紙の入社案内に掲載されていた記者の1日の働き方(上)と、取材を基に構成した現実の記者の1日の働き方(下)を比較したものだ。勿論、連日のようにこれほど忙しい訳ではないが、どの記者にもあり得る設定だ。単純計算すると、1日に約20時間働いていることになる。長時間労働自体も過酷だが、更に厄介なのが業界に巣くう“従弟制度”だ。若手記者はキャップやデスクに一挙手一投足を管理され、朝駆け取材の報告から夜回り取材のメモ上げまで、事細かに“ホウレンソウ(報告・連絡・相談)”を義務付けられている。「新聞記者は自らの“裁量”で自由に取材ができる」ということで、専門業務型の裁量労働制の対象となっているが、取材中も頻繁にデスクから携帯電話に連絡が入り、馬車馬のように働かされている状況を見る限り、その裁量権は無いに等しい。

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最近は、労基署から“名ばかり裁量労働制”を問題視される企業が増えており、記者の働き方もいつ槍玉に挙がってもおかしくない。裁量労働制であるが故に、新聞社は記者に対して青天井の高額残業代を支払う必要がなく、原則、事前に決めた“見做し労働時間”分の手当を支払うだけで済む。これが崩れたら、新聞社の経営は立ち行かなくなる。それでも、これまではそれなりの高待遇だったので、超長時間勤務の不満は抑えられてきた。だが、発行部数減・広告減のダブルパンチで、各社の待遇は悪化の一途だ。時代錯誤の長時間労働に待遇の悪化が加わって、“蟹工船”化している記者のボヤキを纏めたのが、左下の図である。他にも、『朝日新聞社』の事件記者は「月の残業は200時間近いが、申告していないだけ」、『毎日新聞社』の中堅記者は「うちは記者に労働時間を申告させていない。デスクが勝手に付けているのだろう」と自嘲気味に話す。労務関係の悲惨な話といえば、第1組合が数年前に過半数割れした『時事通信社』だ。低待遇で有名で、過半数割れ要因の1つが「労務環境改善の期待に応えてくれないので、『組合費が惜しい』と脱退する若手記者が多いから」(中堅記者)というから、何とも悲しい。新聞社・通信社といった大手メディアから他業種への人材流出は一向に止まらず、社内に溜まった不満のマグマは、いつ爆発してもおかしくない。

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長時間労働問題で最近、記者の間で話題に上ったのが、オンラインメディア『BuzzFeed Japan』がスクープした、朝日新聞編集局による記者の労働時間改竄問題だ。記事によると、記者の申告が155時間半に達した月間の措置基準時間(※残業時間に相当)を、上司が勝手に99時間に改竄していたという。上司が産業医による面接指導基準等に達することを嫌った為とみられている。労基署は健康管理も含め、長時間労働に対して厳しい目を向ける。“日本のリーディングペーパー”を自称する朝日新聞ですらこのような杜撰な管理では、他社は如何許りかと思いやられる。また、大手メディアでは女性記者が急速に増えており、彼女ら無しに編集局は回らない。しかし、現状の勤務環境では、女性記者が子育てをしながら働くことは至難の業。夜討ち朝駆け等、記者の超長時間勤務に依存した働き方を見直すことは、編集局マネジメントにおいても喫緊の課題なのだ。長時間労働を是正するには、記者を増やすか、働き方を改革するくらいしか考えられない。人を増やせる体力がある社は皆無。となれば、残された道は、仕事内容を大胆に変えるしかない。だが、紙面作りでも現場記者の動き方でも、何かにつけて業界では“横並び意識”が染み付いており、仕事内容は容易に変わり得ない。日本人の働き方は今、劇的に変化しており、メディア業界にも否応なく労基署の厳しい目が光る。ある全国紙の社会部長は嘗て、「1人ひとりが休み返上、スーパーマンになったつもりで働いてくれ」と部員を激励したが、それは一昔前だからこそ言えた話。記者の超長時間勤務に依存した新聞社のビジネスモデルは、確実に限界に近付いている。


キャプチャ  2016年12月17日号掲載

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