【霞が関2017冬】(01) プラザ合意の財務官が見る日米関係と円相場

ドナルド・トランプ氏が今月20日にアメリカ合衆国第45代大統領に就任し、日米関係や外国為替市場への影響が注目されている。トランプ氏は、同じ共和党で俳優出身のロナルド・レーガン元大統領と比較して語られることが多い。レーガン大統領時代に財務官を務め、1985年の『プラザ合意』の調整役として奔走した大場智満氏に、トランプ時代の日米関係を聞いた。 (聞き手/上杉素直)

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――トランプ氏とレーガン氏は、どこが似ていて、どこが異なりますか?
「共に“B級”だというのが共通点。トランプは、経営者とはいっても、一流企業の経営者ではない。レーガン氏は元々、B級の俳優だった。大統領就任以前にワシントンの政治経験が無いことや、選挙期間に大胆な発言をしてきたことも似ている」
「レーガン政権では、共和党の重鎮であるハワード・ベーカー氏が、常にレーガン大統領の近くにいて、要の役割を担った。トランプ陣営には、そういう人材がいない。敢えて言うと、娘やその夫だろうか。大統領に就任する前の段階で、既に周辺の人材面で違いを感じる」

――日米の置かれた状況は、1980年代と現在で異なります。
「1981年に就任したレーガン氏は、日本に強い関心を持っていたが、トランプ氏は日本より寧ろ中国に目を向ける筈だ。1985年時点のアメリカの貿易赤字の35%が日本だった。今は、アメリカの貿易赤字の6割以上が中国で、日本が占める比率はドイツやメキシコよりも低い。論点は為替レートに行き着き、レーガン政権当時に『円を強くしなければいけない』となったように、人民元を強くするような話に繋がっていくのではないだろうか」

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――レーガン政権時代、主要国はドル高是正へ協調するプラザ合意に至りました。
「1980年代に入って直ぐ、日本は自動車や繊維といった個別の品目で、アメリカの世論の攻撃を受けた。私が財務官に就いた1983年には、アメリカは『個別品目をやってもダメで、円を強くすべきだ』という風潮になってきた。1983年10月にハワイで極秘に会談したレーガン政権の関係者から、『日本は金融市場の自由化を進めてほしい』という意向を示された。直後にドナルド・リーガン財務長官が来日し、大蔵省の竹下登大臣(当時)に『金融自由化をやってくれ』と求めてきた」
「実際には、日本の金融自由化が進んでも、円は然程強くはならなかった。そして、1985年にベーカー氏が財務長官に就任し、アメリカが為替介入を考えるようになっていった。僕は、同年3月くらいにはアメリカの姿勢の変化を掴み、アメリカ側と交渉を進めた。その結果が、1985年9月のプラザ合意だ。合意は、日米関係が軸になっているところに、英独仏が加わったというのが実態だった」
「アメリカの大統領には、どこまでいっても“強いアメリカ”・“強いドル”という考えが頭に残っている。プラザ合意の直前もそうだった。合意文書の原案は、“ドルが弱くなることが望ましい”だった。ところが、ベーカー財務長官が『表現を変えて欲しい』と頼み込んできた。大統領に原案を見せたら、『表現がダメだ』と言っていたそうだ。仕方なく、“ヨーロッパの通貨と円が強くなることが望ましい”に直そうとしたら、今度はヨーロッパ勢が『癪に障る』と言い出した。その部分の最後に、“ドルに対して”と念押しするように触れる妙な表現にすることで、ヨーロッパ勢が漸く納得してくれた」

――主要国が為替介入やマクロ政策運営で電撃的に合意する『第2プラザ合意』はあり得ると思いますか?
「プラザ合意は、“マクロ経済政策の協調”と“協調介入”の2本立てだから価値があった。今はもう無理だ。日米欧に新興国を加えた20ヵ国・地域(G20)会議は『機能しない』と評され、日米欧の主要7ヵ国(G7)は、当時のG5に比べて影響力が小さい。世界の国内総生産(GDP)に占める比率は、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)がG7に匹敵する規模になった」

――“トランプ相場”と呼ばれる円安基調の為替相場は続きますか?
「為替相場を、大蔵省国際金融局の時代から50年に亘って見てきた。僕が最初に注目したのは、“インフレ率格差で為替レートが決まる”という“購買力平価の論理”だった。だが、“係数として何を使うか”・“いつを基準にするか”等で、い如何なる相場も説明がついてしまうので、『ダメだ』と思った。今は、短期的には金利差、中期的には経済成長率・雇用・経常収支といったファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)。そして、長期に購買力平価――という説に立つ。短期の動きは金利差な訳だから、アメリカの金融政策に注目すべきだ」

――日本は、どう振る舞うべきですか?
「難しいね。やっぱり、日米同盟はしっかりしないといけない。ただ、アメリカがアジア太平洋の問題を考える時、主眼は中国にある。非常に残念だけど。アジア太平洋の中心が、日米から変わらざるを得ないだろう」
「トランプ次期大統領の金融・財政政策は、先ず減税だ。アメリカが法人税も所得税も減税となると、日本も法人税を下げざるを得なくなるかもしれない。その税収減をどうするかとなると、ヨーロッパのように直接税から間接税へシフトするしかない。消費税率を8%から10%に上げるというのに大騒ぎしていたんじゃ困る。何れ15%を考えないといけないのだから」


⦿日本経済新聞電子版 2017年1月3日付掲載⦿

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