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【大手町企業研究会】第3部・NTT(01) ドコモ復帰、反撃の切り札

12月、『NTT』が『NTTドコモ』を完全子会社化し、新たなグループ体制がスタートする。世界の通信業界でアメリカや中国勢の存在感が高まる中、28年ぶりの再結集で再び存在感を示すことができるか。

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「ドコモは変わらなければいけない。危機感を持ってほしい」――。昨日朝、NTTドコモの社長に就任した井伊基之は、社員向けのメッセージで強い調子で呼びかけた。表面化した携帯電話料金の見直しについて、井伊は「デビュー戦だ」と周囲に漏らす。ドコモは新たに格安ブランドを導入し、主力ブランドの料金体系も見直す。押されていた『KDDI』や『ソフトバンク』よりも割安感を打ち出し、顧客を奪い返す。NTT社長の澤田純が以前から温めていた構想だ。澤田と井伊は、共に大学時代にアメリカンフットボールで汗を流した経験を持ち、気脈を通じていた。澤田と井伊は、ドコモの上場廃止が正式に決まった先月27日、官邸に首相の菅義偉を訪ね、井伊のドコモ副社長から社長への昇格を報告した。嘗て総務大臣を務め、通信業界に強く睨みを利かせる菅は、井伊に「期待している」と伝えたという。料金引き下げは、NTTの筆頭株主である政府の意向でもあった。NTTがドコモを株式公開買い付け(※TOB)する計画が動き始めたのは、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言下の4月下旬のことだった。「ドコモを完全子会社にしなければ勝ち残れない。吉沢さんの考えを聞かせてほしい」。澤田は永田町のドコモ本社を訪れ、44階の社長室で、同い年のドコモ社長(※現在は取締役)である吉沢和弘と2人で向き合っていた。吉沢は即答を控えた。

ドコモはグループの稼ぎ頭としての矜持は強い。ただ、「一つに纏まったほうが強いだろう」という考えは吉沢も共有していた。幹部とも相談した末、5月に「グループが強化されるなら」と同意した。澤田の中でドコモに対する不満は、NTT副社長に就任した2014年から常に渦巻いていた。嘗て6割に上ったドコモの国内携帯電話のシェアは現在、KDDIやソフトバンクに迫られ、4割を切る。澤田の元に毎月の会議で示されるドコモの契約数は、低下を辿った。幹部に打開策を問い質しても、芳しい答えは返ってこない。政府による料金値下げへの求めに対しても、反応が遅過ぎると映った。NTTは1980年代後半、“世界一の企業”だった。企業の価値を示す時価総額が世界トップだったのだ。しかし、通信とITの融合が進む中、『グーグル』や『Amazon.com』等GAFAと呼ばれるアメリカの巨大IT企業や、中国の『華為技術(ファーウェイ)』が台頭。存在感は年々薄れていった。NTTの儲けの約半分はドコモが稼ぐ。NTTが海外勢に伍していくには、ドコモを強くするしかない。TOBはNTT復権への切り札だった。国内のTOBとして最大規模となる4兆円を超える取引は、社内で“フラワープロジェクト”と呼ばれていた。幹部は、議事録が残る取締役会ではなく、“意見交換会”という名目で侃々諤々の意見を交わした。感染防止の為、通常の取締役会はオンラインで行なうことも増えていたが、この問題については必ず顔を合わせて議論した。社外取締役を中心に、年間の最終利益の約5倍にあたる資金を投じることに、懸念の声が強く上がった。幸い、コロナ禍を受けた金融緩和による低金利で、資金を調達し易い。幹部は「金利が5%の時代だったらできなかったかもしれない」と振り返る。慎重な意見は徐々に消えていった。通信行政を所管する総務省の問題意識も同じだった。ある幹部は「NTTとドコモが別の方向を向いているようだ」と感じていた。「ドコモは料金見直しも研究開発もスピードが遅い」。日本の通信業界は、高速・大容量通信規格『5G』の展開で、米中や韓国、欧州にも後れを取っている。嘗てはNTTを肥大化させないことに腐心してきた同省に、今や反対論はなかった。9月29日、大手町で澤田と吉沢が記者会見に臨み、完全子会社化を発表した。澤田は「ドコモはシェアは高いが、利益は3番手だ」と何度も口にした。一方で、「ドコモとNTTには其々研究力がある。2つを融合し、世界を引っ張っていく技術を生み出していく」と反撃を誓った。 《敬称略》


キャプチャ  2020年12月2日付掲載
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テーマ : 経済ニュース
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