【ヘンな食べ物】(20) “アフリカの京都”のコーヒー道

エチオピアは3000年近い歴史を誇り、現存する世界最古の国家の1つとして知られる。独自の伝統文化を誇り、他のアフリカ諸国とは全く雰囲気が異なる。故に、私は“アフリカの京都”と呼んでいる。その象徴がコーヒーで、「古代のエチオピアで見出された」と言われている。実際、私はタナ湖という青ナイル源流の湖の周辺で、コーヒーノキの原生林に出くわしたことがある。熟した赤い実を食べると、ほんのり甘かった。エチオピアでは、茶道ならぬ“コーヒー道”なんてものもある。「女性はコーヒーを上手に入れられないと嫁に行けない」とされており、1980年代の大飢餓の時には、着の身着のままで、でも自前のコーヒーセットだけを携えた女性たちが、続々と難民キャンプに集まってきたという。コーヒーは、一般家庭では食後の楽しみであり、勿論、客人が来ればこれでもてなす。初めてこの国を訪れた時、私は街道沿いの茶屋でコーヒー道を体験した。普通にコーヒーを頼んだら、店の若い女性は何と、生のコーヒーの実を七輪で煎るところから始めた。この時点で、日本のどんな“拘りの珈琲店”も負けである。たっぷり30分もかけて入れてくれたコーヒーは当然、香りも深みも普通のコーヒーとは段違い。何より、“新鮮なコーヒー”というものを私は初めて飲んだ。しかも、「お勘定はいらない」と笑顔で言われ、最高の気分で店を出たところ…同行した通訳とドライバーに詰られた。「茶屋では、コーヒーでお金を取らないんだよ。どうして他のドリンクを何も頼まなかったんだ? 失礼だろ!」。私が「そんなの知らなかったよ」と答えると、「雰囲気で察しろよ!」。物言いのストレートな他のアフリカ諸国と違い、アフリカの京都は何かにつけて空気を読まねばならず、大変に面倒臭いことも初めて知ったのだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2017年1月5日・12日号掲載
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