【地方が変える・日本を変える】(01) にぎわい、地銀が作る

5年目を迎えるアベノミクスを再点火し、景気回復の足取りを確かなものにできるか――。2017年は、日本経済にとって正念場になる。実現には、地方からの景気の底上げが不可欠だ。国の交付金や外国人の“爆買い”といった一時の追い風に頼るのではなく、持続的に稼ぐ仕組みを作り上げようと奮闘する現場の姿を追った。

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地方銀行が自治体等と協力して、眠った資産を磨き直し、賑わいの場に変える。そんな事例が広島県尾道市にある。瀬戸内海に面した街道沿いの複合施設『ONOMICHI U2』(右画像)は、室内に自転車を持ち込めるホテルやカフェ等が人気で、2014年3月の開業以来、年間20万人近くが訪れる。“サイクリストの聖地”と呼ばれ、海外からの観光客も少なくない。元々は築70年の港湾倉庫だったが、県がリニューアルを計画。『広島銀行』が取引先のネットワークを生かし、施設の運営事業者を呼び込むと共に、資金支援を行った。広島銀行は、“一国一条の主”として独立志向の強い地銀としては、異例の挑戦にも乗り出した。昨年4月、ライバル同士でもある周辺6県の地銀とタッグを組み、民間企業とも協力して『瀬戸内ブランドコーポレーション』を設立。100億円規模のファンドを設け、瀬戸内海を巡るクルーズ船の建造や、古民家を宿泊施設に変える事業等への投資を決めた。広島銀行から同社に出向している佐々本博士さん(49)は、「地方経済の縮小は、地銀にとって死活問題。同じ課題を抱える者同士、“得なら組もう”という時代に変わっている」と話す。

カネを出すだけでなく、人も出す。地銀が地域の力を取り戻す為、積極的に関わり始めた。古くからの湯どころながら、嘗ての賑わいが失われた長野県山ノ内町の湯田中温泉。店舗の廃業で、櫛の歯が欠けたようになった街の一角で、街づくり会社『WAKUWAKUやまのうち』が、築150年の古い旅館の改装工事を手がけている。会社の設立を呼びかけたのは、地元の『八十二銀行』だ。旅館業者や不動産業者らが参加して、2014年に発足。休業した旅館や空き店舗を借り受けて改装し、新たなオーナーに橋渡しする。既に、4軒のカフェやレストラン等がオープンした。八十二銀行は、この会社にファンドを通じて事業資金を拠出するだけでなく、“エース級の人材”を送り込んでいる。その1人である宮沢広昌さん(38)は、「長野県の多くの温泉地は疲弊している。企業を元気にし、雇用を増やすには、個々の事業者への融資だけでなく、地域全体の底上げが必要」と話す。地域の盛衰は、地銀の将来を左右する。『鹿児島銀行』が昨年9月に農業法人『春一番』を設立したのは、県で盛んな農業が衰退することへの危機感だ。日置市から畑を借り、行員を動員して、約5万本の玉葱の苗を植えた。作物の販路確保を重視し、青果会社からの出資も受けた。東南アジアへ輸出する目標も掲げる。従業員は、社長の吉満隆裕さん(46)を含め、同行からの出向者3人。吉満さんは直前まで支店長を務め、農業の経験は無い。上村基宏頭取から突然の指名を受け、「銀行員の自分が農業法人の社長になるとは。青天の霹靂」と苦笑いする。先月、約3000㎡の畑では、青々と伸びた数十㎝の葉が風に揺れていた。ただ、現場は試行錯誤の連続だ。一部の苗は植えた深さが不適切だった為、十分に育っていない。「農業は予想以上に手強い」と吉満さん。期待と不安が入り交じる中、最初の収穫を2ヵ月後に迎える。

■問われる“目利き力”
地方経済の再生には、地元企業の支援等、地銀の積極的な役割が必要だ。資金の貸し出しで稼ぐ従来の地銀のビジネスモデルは、人口減少や低金利によって行き詰まる可能性が指摘される。地銀にとって、地方の再生にどれだけの知恵を出せるかは、自らの生き残りに直結する。金融庁も、森信親長官の下、地銀に対して担保や保証に頼らない融資を促す等、新たな金融行政方針を打ち出した。地銀に対しては、「融資先が一部の優良企業に偏りがち」との指摘も根強い。だが、地域に深く、広く張り巡らせた人・情報のネットワークが、地銀の強みの筈。成長の芽を見い出す“目利き力”が問われている。


⦿読売新聞 2017年1月4日付掲載⦿

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