【霞が関2017冬】(02) 正念場の経産省外交、通商だけでは限界

「経済産業省の外交の中心は、これまで通商政策だった。対ロシアでは結果的に、“経済を梃子に政治を動かす”というアプローチになった」――。昨年末、経産省幹部は、官民で計82件の合意文書を交わした日露経済協力の成果を振り返った。日露経済協力は、安倍晋三首相が昨年5月にウラジーミル・プーチン大統領に提案した8項目に沿い、経産省が実動部隊の中核となって検討を進めた。同省幹部が“結果的に”と付け加えたように、最初から経産省が仕掛けた訳ではない。当初、官房副長官の立場で経済協力を主導した世耕弘成氏が、昨年8月に経産大臣に就き、翌9月にはロシア経済分野協力担当も兼務したことで、「経産省の関与も次第に濃くなった」というのが実態だ。日露経済協力には2つの特徴がある。1つは、医療水準の向上や、快適で清潔な都市環境の整備等、相手の国のニーズに基づいた広範な協力策を用意した点だ。もう1つは、世耕氏をトップに、省庁の壁を超えた態勢を作ったことだ。世耕氏の下、各省庁の幹部が昨年後半にロシアを頻繁に訪問したことが、当初想定の30件を大幅に上回る82件の合意に繋がった。これらの特徴で、エネルギー中心だった経産省の対外アプローチの幅が広がり、経済協力の質量共に充実した。北方領土交渉の打開を目指した対露経済協力は、投入した人員も破格だったが、こうした枠組みは“経産省外交”の雛型となり、他国との経済協力にも適用されていくことになった。

一例はサウジアラビア。昨夏のムハンマド副皇太子の訪日を契機に、政府が関係強化を目指して設置したのが『日・中東経済交流等促進会議』だ。議長を野上浩太郎官房副長官、副議長を長谷川栄一首相補佐官が務め、各省の次官・局長級がメンバーに名を連ねる。検討対象となる経済協力の分野は、医療・農業・小売りから、ムハンマド副皇太子が強い関心を持つエンターテインメント産業までと幅広い。こうしたアプローチが功を奏したのか、昨年10月に世耕氏がサウジを訪問した際には、本来は格が違うサルマン国王に待ち時間無しで会うことができた。「オバマ大統領やケリー国務長官ですら数時間待たされるのが普通で、異例の厚遇」(別の経産省幹部)だったという。経産省が新たな枠組みを推進するのは、伝統的な通商政策だけでは通用しなくなっていることの裏返しでもある。12ヵ国の複雑な利害を苦労の末に調整し、纏め上げた『環太平洋経済連携協定(TPP)』は、トランプ氏がアメリカの次期大統領に当選したことで、発効が見通せなくなった。イギリスの『ヨーロッパ連合(EU)』離脱決定と、今後のドイツやフランス等の選挙で、ヨーロッパの政治動向も見通し難い。『世界貿易機関(WTO)』の機能不全は言わずもがなで、日本は官民挙げて、国・地域毎にオーダーメード型で経済協力のメニューを作り、貿易の拡大を目指さなければならない時代に入った。足元のアジアでは、通商の覇権を握ろうとする中国との鬩ぎ合いも続く。経産省外交の力はどの程度あるのか。2017年は、その真価が問われる。 (中野貴司)


⦿日本経済新聞電子版 2017年1月10日付掲載⦿
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