中国、日本の排他的経済水域(EEZ)周辺海底に命名攻勢…2012年以降に激化の一途、海底陣取り合戦の様相呈す

20170113 14
中国政府が、日本の排他的経済水域(EEZ)の周辺等で海底地形の調査を行い、『国際水路機関』(本部はモナコ)の下部組織に対し、中国語による命名申請を2016年に活発化させていたことが明らかになった。海洋権益拡大に向け、中国は海上だけでなく、海底でも動きを一段と加速させている。この機関は『海底地形名称小委員会(SCUFN)』。国際的に統一された海底地形名を定める機関で、先月21日に2016年の各国の申請状況と登録結果を盛り込んだ最新報告書を公表した。それによると、中国国家海洋局は2016年、日本が鉱物資源開発等の権利を目指して『国連大陸棚限界委員会』に大陸棚延長を申請している海域や、フィリピンやべトナム等と領有権を争う南シナ海等で、50件に上る中国語名申請を行っていた。50件の内の16件は受理され、残りの34件は「沿岸国との係争に発展する深刻な懸念がある」等の理由で受理されていない。受理されていない申請には、日本が大陸棚の延長を申請し、中国と韓国の反対で審査が先送りされている沖ノ鳥島からパラオにかけての『九州パラオ海嶺南部』の8ヵ所や、南シナ海のスプラトリー諸島周辺の21ヵ所が含まれていた。ただ、2012年には、日本のEEZと大陸棚に近接する沖縄県宮古島の南東450㎞地点で、中国が申請した中国語名の『日潭海陵』『月潭海嶺』『日昇平頂海山』が登録された事例もある。中国が申請した海域の多くは公海に当たり、原則的には調査も命名も自由だが、日本が主張する大陸棚やEEZを掠め、日本側の調査範囲とも一部重複している。海洋調査関係者によると、こうした海域を調査する場合は、関係国に詳細な研究計画を提出し、事前調整するのが常識だが、中国は手続きを十分に踏んでいなかったという。海底地形の命名は、国に関係なく、発見者に権利があり、学術的利用を前提としている。ただ、2006年に島根県竹島の領有権を主張する韓国が、韓国語名での命名に動いて政治問題化し、日本との協議後に申請を見送った経緯から、SCUFNは政治的に機微な提案は扱わない規定を設けた。

20170113 15
中国が、日本のEEZや大陸棚延長申請海域の周辺で、海底地形の調査や中国名の申請を活発化させている背景には、命名を通じて自国の主張を既成事実化しようという習近平政権の思惑が窺える。モナコに本部を置くSCUFNを舞台に、海底の権益を巡る日中両国の“暗闘”が年々強まっている。日本は、1993年のSCUFN発足時から、主要メンバーとして海底地形名の登録を積極的に行ってきたのに対し、中国の参加は、初めて北京が会議の開催地となった2011年からだ。中国は、自国開催をきっかけに、海底地形の重要性に注目した可能性があり、その後、SCUFNでは頻繁に日中の対立が起きているという。SCUFNの会議はモナコか委員選出国の何れかで開催され、申請はその約1ヵ月前に行われる。委員同士による事前の回覧を経て、5日間程度の会合で審議し、受理・保留・却下・先送りの判断が示される。一方、2012年10月にニュージーランドのウェリントンで開かれた会議では、中国が日本のEEZに近い沖縄県宮古島の南東450㎞の海域で、5ヵ所の命名を申請した。その5ヵ月前には、日本政府が同海域を含む4海域について、「大陸棚延長の申請が国連大陸棚限界委員会に認められた」と発表していた。中国の5ヵ所の申請の内、『日潭海陵』等の3ヵ所は受理された。しかし、残りの2ヵ所については、日本の委員が「国際的な学術誌で既に“康成海山”・“白秋海山”の名称が使用されている」と主張。他国の研究者の引用例を示した結果、結論は先送りされ、2014年6月、この2つの日本名が正式承認された。また、2013年9月に東京で開催された会議では、岡山大学を代表した研究者が、宮古島北西沖で『多良間海丘』と『多良間海陵』の命名を申請した。しかし、中国の委員が「(中国等)近隣国との間で論議がある政治的に機微な海域に位置する」と反対し、全会一致が原則である為、登録は見送られた。両地形は沖縄県の尖閣諸島にも比較的近く、中国が反応したものとみられる。日本は2015年9月、3ヵ所に中国名が付いていた宮古島南東や九州パラオ海嶺南部等の海域で、計27ヵ所の地形名を申請し、全件受理された。これにより、九州パラオ海嶺南部の南半分15ヵ所に日本名が認められたことになったが、中国は昨年、その南側の8ヵ所について中国名を申請した。結果的には不受理となったが、大陸棚延長等に関わる日本の重点海域で、日中が“陣取り合戦”を行っている様相だ。世界の海底地形に詳しい日本の研究者は、「中国の調査や命名申請が、日本のEEZや大陸棚延長申請海域のギリギリに設定してくる」と指摘し、「意図的なものを感じる」と言い切った。

20170113 16
日本政府は、中国が日本のEEZ付近等の海底地形名の申請を活発化させていることについて、「日本の権益が直接、影響を受けることはない」と分析しているが、中国が海洋権益を拡大させようとしている一環とみて、動向を注視している。日本政府は現時点で、中国側に外交ルートを通じた抗議や申し入れは行っていない。2012年に中国名が確定した沖縄県宮古島の南東3ヵ所は、「公海であり、通常のルールに則った行為」(海上保安庁関係者)と判断している。昨年に中国が申請したものについても、「命名されたとしても学術的なものであり、直ちに日本の権益が影響を受けることはない」(外務省関係者)とみている。だが、日本の大陸棚やEEZの内側で、中国による命名が仮に認められるようなことがあれば、日本の主張する大陸棚を中国側が認めない“補強材料”として利用されかねない。外務省幹部は、「気持ち悪い話だ」と不快感を示している。日本も、海底地形の名称申請は積極的に行っている。SCUFNでは昨年、各国の申請に基づいて名称が承認された海底地形81件の内、日本の申請分が23件に上った。海上保安庁関係者は、九州パラオ海嶺南部について「顕著な地形は日本風の地名で覆われている」と語り、今後も申請を継続する方針だ。 (ジュネーブ支局長 笹沢教一・中国総局 蒔田一彦)

■機先制する態勢整備を
今回明らかになった中国による活発な海底地形の命名申請の動きからは、“海洋強国”確立を目指す習近平政権が、東シナ海や南シナ海で様々な既成事実を積み重ね、“実効支配”を印象付けようとする狙いが浮かび上がる。2010年の中国の命名申請50件の内、21件は南シナ海で中国が主権を主張する“九段線”の内側にある。何れも、申請は8月に行われた。中国は、これに先立つ7月、南シナ海での主権主張が不当だとされ、仲裁裁判所で全面敗訴した。「21件申請の動きは、この判決の余波と無関係ではない」との見方が出ている。また、中国が命名申請した海域には、日本の大陸棚の延長申請箇所の一部が含まれており、周辺の地形には日本名が多数登録され、日本が重点的に調査を行っている。国連海洋法条約では公海での“海洋の自由”を保障しており、一連の中国の活動は厳密には違法とは言えない。しかし、日本の海洋調査関係者によると、中国は近隣国と事前に十分な調整を行わずに調査を行い、近年は日本の調査船の活動が妨害されるケースが相次いでいるという。中国は軍事面・法律面・政治面等、あらゆる舞台で海洋権益に関する自らの主張を正当化しようとしている。日本は反応するだけでなく、機先を制する対応が求められる。その為の人材や予算確保等、態勢整備が急務となっている。 (ジュネーブ支局長 笹沢教一)


⦿読売新聞 2017年1月1日付掲載⦿

スポンサーサイト

テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR