【走り始めたカジノ】(01) 「何故、良さがわからない」

昨年のカジノ法成立を受け、走り始めた国・地方・企業の動きを追った。

20170118 03
昨年のクリスマスイブ。首相の安倍晋三(62)が昼食相手に選んだのは、『日本維新の会』法律政策顧問で前大阪市長の橋下徹(47)だった。話題の中心は、カジノを含む統合型リゾート(IR)。維新代表で大阪府知事の松井一郎(52)、官房長官の菅義偉(68)も同席し、カジノ推進の4人が顔を揃えた。「よく国会を通せましたね」。橋下・松井は、安倍を称賛した。会合に先立つ同15日未明、IR整備を政府に促すカジノ法が成立。民進党や日本共産党だけでなく、与党の公明党にも慎重論が広がる中、自民党と維新の賛成多数で半ば強引に成立させたからだ。「ご協力をお願いしたい」。安倍はその場で、維新の2人に頭を下げた。今後は、政府がカジノ運営の制度を定める実施法案を作る。ギャンブル依存症等の懸念で反対論はあるが、これまでも、そしてこれからも4人でカジノを進める――。結束を確認する場だった。カジノ法成立までは長い道程だった。2013年に自民党や旧日本維新の会が法案を提出したが、翌2014年の衆議院解散で廃案に。2015年に再提出した時は、審議入りすらできなかった。与党内で公明党が「ギャンブル依存症の増加を招く」等と慎重だった為だ。「何故、早くできないんだろう」「何でこの良さがわからないんだ」。安倍は周囲に繰り返していた。投資・雇用・観光振興も見込めるからだ。転機は昨年7月30日。やはり、4人の会談だった。安倍が、「カジノは次の国会が焦点だ。是非、ご協力お願いします」と橋下に頼んだ。「与党で消極的な人もいますよね?」と橋下が尋ねると、菅が身を乗り出した。「私が公明党と話す」。説得役が決まり、動き始めた。

この頃、公明党代表の山口那津男(64)は「カジノ法は必要ない」と周囲に語っていた。同党の支持母体である『創価学会』では、婦人部を中心に反対論が根強かったからだ。事情を察知した菅は10月下旬、学会幹部に会った。「設計は時間をかけ、与党協議に委ねる」「公明党の主張を盛り込み、依存症対策も取り組む」。将来の政府の実施法案に「公明党の意向を反映する」と約束することで、審議入りを呑ませた。だが、賛成までは無理だった。公明党は意見集約ができず、採決は自主投票に。山口だけでなく、幹事長の井上義久(69)も反対票を投じた。井上に至っては、カジノ法の為に国会を再延長した自民党を批判。与党内はぎくしゃくした。一方、維新は地盤の大阪で逸早く動いた。「大阪によく来てくれましたな」。昨年10月、大阪府庁の知事室。松井は、アメリカのカジノ運営大手『ラスベガスサンズ』傘下の『マリーナベイサンズ』(シンガポール)社長であるジョージ・タナシェヴィッチ(55)を歓迎した。「如何なる案件でも、素晴らしいカジノを運営できる」。タナシェヴィッチは、約3㎝の厚さの企画書を手に、カジノや数千室を備えるホテル計画等を熱心に説明した。翌11月1日には、『MGMリゾーツインターナショナル』社長のビル・ホーンバックルも松井を訪ね、大阪進出への希望を伝えた。松井が想定するのは、大阪湾岸の人工島『夢洲』の開発だ。大阪市は嘗て、夢洲を選手村に2008年大阪オリンピックを招致して敗れ、夢洲が巨大な“負の遺産”になった。開発が頓挫している夢洲にカジノが来れば、そんな“お荷物”が名実共に“夢の島”になる。錬金術は、大阪経済だけでなく、維新にとっても浮沈がかかる。ただ、カジノへの不安の声もある。「経済効果を地元にどれだけ齎すのかわからない」。大阪市此花区の商店会連盟会長を務める大西勝重(75)は話す。商店街で夫と日用品店を営む女性(46)は、「子供が小さいので、周囲の治安が悪くなるのが心配」と眉を顰める。政府は今月6日、安倍をトップとする推進本部の準備室を設置した。菅は周囲に、「大阪には土地がある。万博とセットで大阪は活性化する」と説く。だが、大阪の自民党は維新と距離があり、自民党大阪府連は将来、松井のカジノ計画案に反対する可能性がある。府連幹部も、「維新は薔薇色の事業計画ばかり言いふらしている」と厳しい。官邸と維新の“4人5脚”が進む道は、平坦ではない。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年1月17日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 政治のニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR