『社会保険診療報酬支払基金』が日本を滅ぼす――医療費を破綻させる“厚労利権”の牙城、“財布”に使う現役厚労官僚とOBたちの呆れた実態

高齢化が加速度的に進む日本では、2060年、65歳以上の高齢者1人に対して現役世代1.3人で支えるという“肩車社会”が待ち受ける。高齢化率の上昇に比例して、国民医療費も膨張の一途で、2019年に消費税率を10%へ引き上げても、将来の医療費はとても穴埋めできない。厚生労働省は、在宅医療の促進等、国民の負担を増やすことで経費を抑制しようと躍起だが、この陰で濡れ手で粟のような“利権の巣窟”に、国民の血税が湯水の如く注がれている。それは『社会保険診療報酬支払基金』(以下“支払基金”・東京都港区)と呼ばれる特別民間法人で、厚労省と旧社会保険庁の“別動隊”と化している。医療機関と健康保険組合の間に立って、名ばかりの審査を『日本医師会』等へ丸投げして、審査料名目で巨費を懐に収めるカラクリだ。その詐取的な組織と集金システムの全容を解明する。

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厚労省によると、2014年度の国民医療費は40兆8071億円に上り、8年連続で過去最高を更新した。このままでは、天井知らずで半永久的に膨張していく。こうした事態に、財務省や厚労省は「もっと大幅に消費税率を引き上げていかなければ、財政破綻は避けられない」と口を揃える。一方で厚労省は、費用の嵩む入院治療から在宅医療へ誘導したり、新薬の特許期間が満了後に製造・販売されるジェネリック医薬品の使用を奨励したりしている。最近も、『小野薬品工業』が販売する高額な新型癌治療薬『オプジーボ』の薬価を臨時で引き下げることが決まったばかり。医療費を始め、社会保障費が爆発的に増大する流れで、こうした政策は止むを得まい。だが、事はただ単に“高齢化”の3文字で済まされる話ではないのだ。医療費削減が叫ばれる一方で、診療報酬の審査支払機関の存在については、意外なほどに知られていない。保険診療を行う医療機関は、患者の自己負担分を除いて、『健康保険組合』に“診療報酬”を請求する。この診療報酬は、厚労省が作成する“診療報酬点数表”に基づいて計算されている。健康保険組合は全国に一千何百も存在することから、医療機関が個々の健康保険組合に請求するのは非効率だ。この為、医療機関と健康保険組合の間に立って“診療報酬明細書(レセプト)”を取り纏め、患者への診療行為の妥当性を審査して、健康保険組合から医療機関への支払いを仲介するのが、審査支払機関の本来の役割である。健康保険等の被用者保険は支払基金が担い、国民健康保険は各都道府県にある『国民健康保険団体連合会』がその任を負う。ところが、何れもその役割を全く果たしていないばかりか、「旧社保庁関係者が仕切る支払基金は利権の巣窟」(医療専門紙記者)と目されている。支払基金に求められるのは、医療機関が施した医療行為の妥当性を検証し、不要、或いは不正な医療行為が行われないように監視することだ。ところが、支払基金も国民健康保険団体連合会も全く機能していないのが実情だ。

支払基金は、2015年度に6億8000万件のレセプトを審査した。レセプトの審査料は、オンラインか電子媒体の場合、1件当たり医科・歯科で89円、調剤で44円。紙媒体では其々、101円・56円かかる。全て合計して、支払基金が対価として受け取った審査料(事務費収入)は、何と726億円にも達する。これは、支払基金の総収入781億円の93%を占める。それが、4310人の職員と4674人の審査委員の人件費として消えていく。この中に、後述する医師会の委員への委託費用等も含まれる。ところが、それだけの費用をかけて、不正な請求分として炙り出される診療報酬明細書の総計は、たったの430億円分に過ぎない。審査料の59%であり、“不正明細書の総額より審査料のほうが遥かに高い”という馬鹿げた不合理が罷り通っているのだ。その一方で、不正請求の抽出率は、件数ベースで1.5%、金額ベースで0.3%と、表向きは極めて少ない。東京都内在住の開業医は、「過剰請求や不正診療が、こんなに少ない筈はない」と断言する。何故、こうまで不正請求の摘発が生温いままなのか。それは、支払基金が審査を各地の医師会に丸投げしているからだ。前述した4674人の審査委員の主要メンバーは、実は医師会に所属する医師なのである。診療報酬を貰う側の医師らに、同業者の収入を減らすことになる厳しい査定を期待するほうが間違っているのだ。相撲取りが行司を兼ねるような出鱈目であり、八百長が起きて当たり前なのである。支払基金の審査は、各都道府県の支部に設置された審査委員会が担当する。委員会は、医師や歯科医師等の診療サイド・保険者代表・学識経験者で構成され、この三者は同数になるよう規定されている。だが、実態は医師会の独壇場だ。嘗て、日本医師会の幹部として同業務に関わった人物は、「支払基金には審査能力は無いので、専門家に丸投げするしかない」と打ち明ける。各都道府県の審査委員会では、医師会から推薦された保険担当の理事が、審査委員会の副委員長ポストの“指定席”に就くのが慣例。彼らは地元の政治家の後援会幹部を務める等して、「政治への影響力が非常に強い」(前出の幹部)。他の委員が彼らの意向に沿わない意見を言おうものなら、「(本人や家族が病気等の時)何かあっても面倒は看られませんよ」とやんわり脅すこともあるという。審査基準そのものを医師会が作るのが「暗黙の了解」(同)で、「地元医師会役員の経営する診療所の査定は甘くなるし、審査基準は極めて恣意的・お手盛りで決まってしまう」(同)。全国の審査委員会が年間にチェックするレセプトは、凡そ6億8000万件。これを4674人の審査委員で捌くから、1人の審査員が年間に約14万5000件を処理する勘定だ。とても正確なチェックなど望むべくもない。いや、寧ろ笊に水を注ぐが如く、「素通し」(審査経験のある医師)となっているのが実態だ。

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首都圏の勤務医が内情を明かす。「CT(コンピュータ断層撮影)等、高額の医療機器を導入したら、できるだけ稼働させるように理事長から“お達し”があります。余分な放射線被曝をさせて、患者さんには気の毒ですが、頭痛や腹痛を訴える人には片っ端からCTを撮ります。誰でも一目でわかる高額の不正請求ですが、バレることは先ずありません」。こんなイカサマが常態化していては、不正の為に持ち出しが増える企業の健康保険は維持できる筈がない。企業は、独自に査定したり、或いは支払基金以外の組織に依頼することも原理的には可能だ。ただ、その場合、企業は患者が通院する医療機関の同意を得なければならないことが、厚労省の局長通知で決められている。手続きが煩雑で、一々やっている企業は無い。企業の中には、支払基金にクレームを付けるところもある。ある製薬企業の社員は、「我が社は支払基金からレセプトが来ると、独自に調査する。そして、金額ベースにして2~3%程度は“不正”と査定して、支払基金に突き返す。すると、全て査定が認められる」と語る。これは、支払基金の審査委員会による不正査定率の実に10倍に達する。裏返せば、90%の過剰請求や不正診療が見過ごされている計算になる。正確な審査で2%の医療費を削減できれば、その額は約1000億円にも相当する。この製薬企業で査定を担当するのは、医師ではなく、多くは薬剤師や看護師だ。支払基金は、医師会の牛耳る審査委員会に丸投げしている理由について、「専門家である医師を自前で確保できないからだ」と説明しているが、それが詭弁であることを示す証左に他ならない。真の理由は、地元の有力者である医師会と軋轢を生じさせたくないだけなのだ。

この詐取的とも言える杜撰な仕組みで甘い汁を貪っているのは、医師会だけではない。その陰で、厚労省や旧社会保険庁の役人・OBたちもお相伴に与る。支払基金は、1948年の設立以来、2010年に山口県柳井市の元市長・河内山哲朗が理事長に就任するまで、歴代理事長は厚労省(旧厚生省)のOBが独占してきた。1990年代以降、理事長に就任した5人の厚労省OBの内、4人は社保庁長官経験者だった。その中には、長官時代に年金手書き台帳を破棄するように命じたことで有名な正木馨も名を連ねている。事ほど左様に、支払基金は理事長以下の面々に至るまで、旧社保庁OBの牙城だ。しかも、彼らの縁故採用だらけで、「人員があまりに多過ぎる」(支払基金関係者)。小泉純一郎政権時代、従来の特殊法人から“特別の法律により設立される民間法人”に衣替えしたものの、実態は何ら変わっていない。辣腕の厚労官僚として知られた中村秀一(現在は国際医療福祉大学副大学院長)は、2008~2010年の間、支払基金の理事長を務めて「利権の改革に取り組んだが、あえなく敗れ去った」(前出の関係者)。体よく天下っておきながら、内部改革を断行するなど土台無理な話だ。抑々、旧社保庁系の連中たちと本気で戦おうとするキャリア官僚は先ずいない。寧ろ、「本省で使えないキャリア官僚を部長級で送り込んでいる」(厚労省キャリア官僚)のが実情だ。旧社保庁の利権には手を付けず、貴重な天下り先として重用――。敢えて彼らと軋轢を生じさせる必要もない訳だ。現在、支払基金の理事16人には、厚労省出身の石井信芳や高橋直人が含まれる。支払基金に詳しい全国紙記者は、「彼らはプロパースタッフと上手くやり、大過なく勤め上げることを願っている」という。因みに、理事の年収は約1100万円。支払基金を“財布”として使うのは、官僚OBだけではない。複数の現役官僚も、部長級の幹部として出向している。支払基金は、レセプトを100%に限りなく近く素通しさせることが目的だから、実際のところ、何ら仕事をしていないも同然だ。医療機関と保険組合の間のレセプトのやり取りをするだけなら、情報通信技術が進んだ昨今、インターネットを使えば済む筈だ。ところが、支払基金は「事務のオンライン化に抵抗を続けてきた」(前出の厚労省キャリア官僚)。医療機関からの診療報酬の請求は、紙媒体からオンラインへ移行するのが世界の潮流だ。しかし、「高齢の医師が対応できない」等の理由を付け、支払基金はオンライン化に寧ろ及び腰となっている。本当の理由は、オンラインでの請求が進めば、支払基金の合理化を要求され、自らの利権を失うことになるからだ。「多くの事務員・審査委員を雇用し続けることが目的化している」と言っていい。支払基金の体たらくは、思わぬところに弊害を齎している。それは、医学研究の分野でだ。

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最近の医学研究、とりわけ公衆衛生分野の研究は、大規模な診療データベースを活用する。アメリカではデータベースとして、政府が管掌する低所得者と高齢者向けの医療保険の支払記録が用いられることがある。この場合、既に存在する登録データを活用する為、低コストで高品質なデータを入手できる。これらの支払記録は、日本ではレセプトに相当する。だが、日本のそれは役に立たない。何故なら、実際とは異なる“レセプト病名”が横行しているからだ。簡単に言えば、医療機関が診療報酬を請求する際に付ける“偽の病名”である。例えば、かかりつけ患者が健診目的で胃カメラを希望した場合、医師はしばしば“慢性胃炎の疑い”との病名を付ける。健診は自費だが、病気の診断なら健康保険で支払われるからだ。“レセプト病名”は、医者の金儲けの手段と化すことが多い。その代表例が“特定疾患療養管理料”。診療所の外来診療では、高血圧・胃炎・糖尿病等32の疾患を対象に、外来で診察する度に2250円が加算される。この為、開業医は、多くの来院者を管理料が取れる疾患の患者に仕立てて、実際と異なる診断を下し、その加算を請求する。1日40人程度を診療する開業医なら、加算だけで年間1000万~2000万円の収入になる。結果、日本のレセプトデータベースは、胃炎や糖尿病等の慢性疾患の病名で溢れ返る。実態を反映しておらず、臨床研究に活用できる訳がない。これが、基礎医学の研究と比較して、我が国の臨床研究のレベルが低い原因の1つなのだ。どれもこれも、支払基金とそこに安住する“給料泥棒”、いや“極楽とんぼ”の仕業に起因する。こんな“ペーパーカンパニー”のような公的組織が野放しにされたままでは、どんなに消費税を引き上げたところで焼け石に水だ。“先ず隗より始めよ”――。医療費抑制を訴える厚労大臣の塩崎恭久は、自浄能力を国民に示すことができるだろうか。 《敬称略》


キャプチャ  2016年12月号掲載

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