【トランプ氏の世界】(03) 米仏との対立緩和に期待――ドミトリー・トレーニン氏(『カーネギー国際平和財団モスクワセンター』所長)

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ロシアにとって、今年は国内経済の立て直しが焦眉の課題だ。ウラジーミル・プーチン大統領は、どのような経済発展モデルを打ち出すのか。2018年春に予定される大統領選にも絡んでくる。今年、選挙を前倒しする可能性も取り沙汰されている。プーチン氏の意に適えば、前倒しの可能性はあり得る。外交面では今年、露米間の対立が和らぐことをある程度は期待している。ヨーロッパではフランス等、幾つかの国との対立関係も緩和されるかもしれない。対露制裁は、少なくとも今年前半までは続く。後半どうなるかは、フランスの新しい大統領が制裁にどのような立場を取るのか、制裁解除に動くとすれば、他に加わる国があるのか――。ヨーロッパ内で何らかの合意が形成され得るかどうかにかかっている。「露米関係改善で、ロシアが日本と接近する動機が減る」という意見には同調しない。ドナルド・トランプ氏は、「ロシアへの接近は、日本が国益を実現する為だ」という風に受け取るだろう。それは極自然なことだ。

トランプ氏は、国益重視の政策を推し進めるだろう。トランプ氏は、アメリカの一定の支配層、特に経済界の欲求を体現しており、経済問題で強硬な立場を取るとみられる。一番困難な立場に陥るのは、最も近いパートナーたちだ。特に中国は、トランプ氏にとって、地政学面よりも経済通商の面でライバルとなる。ロシアは国益を前提に外交を進めてきた。より国家的なトランプ政権のアプローチで、米露はより実利的な対話をするようになるだろう。互いに受け入れ可能な合意が直ぐに達成されるとは限らないが、何らかの合意を得る可能性はバラク・オバマ政権よりも大きい。肝要なのは、米露が対立の深みに嵌まった状態から抜け出すことだ。トランプ氏は軍事力増強を目指すだろう。アメリカが核戦力を(軍縮)条約の枠内で増強させる限りは、脅威とはならない。但し、効果的なミサイル防衛(MD)システムを構築した場合、ロシアの核兵器の抑止力が無力化されてしまい、脅威だ。トランプ政権下で露中関係が変わることはない。アメリカがロシアを対中同盟に引き込んだり、中国が露中同盟に格上げを図るとも思わない。“露中協商”という言葉が相応しい。戦略的パートナーシップ以上だが、同盟以下。露中関係には独自の力学があり、譲歩し合い、柔軟さを持った関係を維持するだろう。ヨーロッパが対露政策を変える為には、ヨーロッパの主要国の1つが政策を転換する必要がある。フランスでは、(自国の独自性を重んじる)“ドゴール主義”が復活するかもしれない。仮に現実になれば、先ずはイタリア、そしてオーストリアやギリシャが続くだろう。現在、我々はそうした幾つかの兆候を目の当たりにしている。これを“アメリカ帝国の崩壊”と呼ぶことはできないが、ある種の変容が起きているのは確かだ。

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■核軍縮競争への懸念
トランプ次期大統領は先月22日、「アメリカは核戦力を大幅に強化・拡大しなければならない」と自身のツイッターで表明した。ロシアのプーチン大統領が国防省の幹部会議で、自国の“核ミサイルの能力の強化”を指示したことに、過敏に反応したようだ。プーチン氏は、トランプ氏と米露関係改善に向け、対話を進める考えで一致するが、「新たな核軍拡競争に繋がりかねない」との懸念が、ロシアでも出始めている。

■「同じ言葉で話す」  花田吉雄(本紙モスクワ支局長)
「トランプ氏とプーチン氏は、多くの問題で合意ができなくても、同じ言葉で話すようになるだろう」――。トレーニン氏は、両氏の今後の関係をこう評した。“同じ言葉を話す”とは、ロシア語で“互いに理解し合う”という意味だ。オバマ政権は、ウクライナ情勢・シリア内戦・アメリカ大統領選に介入したサイバー攻撃を巡って強硬姿勢を緩めず、対立は深刻化した。トランプ政権になっても米露関係が簡単に修復するとは言えないが、トレーニン氏は「同じ言葉で話せば、協力の可能性は遥かに大きくなる」と、首脳間の対話外交に期待を込める。来年に大統領選を控え、プーチン氏は国益を重視しながら、アメリカと共に様々な課題に立ち向かうだろう。


⦿読売新聞 2017年1月5日付掲載⦿

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テーマ : 国際政治
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