【男の子育て日記】(35) 8月盛夏

水道橋博士と東京でお会いした時のこと。「いやぁ、ウチのメルマ旬報に育児日記を連載してほしかったなぁ」。すいません。『新潮社』の“女帝”G編集長から、先に指令が下ったものですから。「育児日記を書こうと思ったのは、“ボブ・グリーンの父親日記”の影響なんでしょ?」。ん? 何ですかそれ。ボブ・グリーンと言えば、1980年代に『週刊プレイボーイ』でも連載を持っていた人気コラムニスト。当時、そんなに熱心に読んでいた訳ではないけど、「実は自分には音楽のセンスが無くて、ブルーススプリングスティーンの4枚組ライブアルバムのどこが良いのかわからない」と告白したテキストは覚えている。確か、町山智浩さんはどこかで、「あいつはハゲを隠している」って書いてなかったっけ。ま、いっか。という訳で早速、古本を探して読みました。『ボブ・グリーンの父親日記』(日本語訳は西野薫・中央公論社)は、1982年6月11日から1年間、愛娘・アマンダとの日々を綴ったコラム集だ。35歳の時に、結婚11年目の奥さんとの間に漸くできたお子さんなので、嬉しさと戸惑いが素直に語られている。1ヵ月の長期取材に出かけなければいけなかった時のこと。「8ヵ月前まで彼女は存在していなかった。だが、今ではアマンダが家にいないと僕の生活にぽっかりと大きな穴があいてしまうということが、はっきりわかった。彼女に会いたいあまり胸が疼くほどだ」。

微笑ましく、細やかな幸せ。国も人種も時代も違うけど、共感することは多い。でもねぇ、酷く腹が立ったのは10月13日、アマンダが生まれて4ヵ月のところだ。奥さんが赤ん坊を2時間、家政婦に預けようとしたら、ボブが罵倒し出すのだ。「だってもう4ヵ月も…」(※補足:誰にも会っていない)と奥さんが訴えると、「君の両親も来たし、僕の両親も来た。コロンバスにも行ったじゃないか。誰にも会ってないとは思えないがね」「僕はとにかくアマンダが1人で残されると思うと、落ち着いていられないんだよ」。じゃあ、お前がおんぶして取材先に連れて行け! 妻がほんの2時間、赤ん坊と離れて1人の時間を持つことも許さないのか。当時、ボブの発言を「尤もだ」と支持した読者は多いだろう。いや、今も大して変わらないか。「母親たるもの、愛する子供に全てを捧げろ。ちょっとの時間でも赤ん坊から解放されたがるなんて母親失格だ」とか言いそう。母性信仰を押し付けるな、マザコン野郎どもめ。お前らは、女が男より高い社会的地位を掴むことを許さないし、女に性欲があることも認めない。保守系というより、クソ男根野郎だよ。この本も、『ボブ・グリーンの父親風を吹かせる日記』に改めたほうがいい。ふぅ、すいません。ちっとエキサイトし過ぎました。僕って生真面目。後日、博士にお会いした時に読んだことをお伝えした。博士、ニンマリ。「ボブ・グリーンは、あの本を出してから約20年後、『女子高生とヤッた』と疑われて、勤めていた新聞社を辞めることになるんですよ!」。オラも気を付けよう。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2017年1月19日号掲載
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