【Test drive impression】(07) 『トヨタ自動車 C-HR ハイブリッドG』――トヨタが放った高級スポーツカー顔負けのSUV

発売前の事前発注2万9000台。今から予約しても納車は最短で4月以降というバカ売れ状態なのが、コンパクトSUV最後発の『C-HB』。勿論、メインマーケットとなるヨーロッパで売れなきゃダメなんだけど、「ホントに大丈夫?」と小沢が心配になるほど、このクルマは過激に振り切れている。先ずはデザイン。2年3ヵ月前に『パリモーターショー』で出たC-HBコンセプトが元ネタですけど、か~なりそのまんま。コンセプトカーほどオシリの抑揚はありませんが、びっくりするほどカッコ優先な造りなのだ。全長×全幅×全高はFFハイブリッドで4360×1795×1550と、幅こそヨーロッパ基準ですが、長過ぎず高過ぎずのナイスサイズ。それでいて、大径タイヤが全高のほぼ半分を占めるほどデカい上に、キュッキュッと締まった前後のクビレちゃん。そして、タイヤ回りはグラビアアイドルの如き大胆エロエロ攻撃なのです! 聞けば、その為に『プリウス』と共通のグローバルな“TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)プラットフォーム”を直前変更してまでリアを絞ったそうで、まるで美容整形で顎を細くする為に骨を削る行為。リアのドアハンドルもビックリするほど美観優先の隠しデザインで、高さはなんと130㎝。正直、小さな子供じゃ手が届きませんって。ヘッドライトも昔懐かしフラッシャー風の流れるLEDタイプが選べて、知れば知るほど万人ウケのトヨタスタンダードから外れたデザイン。

走りもハンパなく、トヨタがドイツ車に負けじと高剛性&低重心を狙った骨格だけに、相当いいとは思っていたけど、パワートレインはまさにおいしいとこ取り。最新プリウス譲りの総合120psの1.8リッターハイブリッドのFFと、『オーリス』譲りの116psの1.2リッターダウンサイジングターボの2本立て。特に、ハイブリッドはモード燃費でリッター30㎞台を叩き出す等、「事実上のプリウスSUV?」と思っていたら、走りの質はプリウス以上。あっちも走りは相当なのに、更に入念にブラッシュアップされていて、発進から震動とノイズは激変。上質で滑らか、そしてステアリングのキレは段違い。特に、センター付近の手応えは、ドイツのスポーツセダン斯くやのシャープさ。それもその筈。このC-HB、発売前から世界一のクソ過酷さで知られているドイツの『ニュルブルクリンク24時間耐久レース』に出場。完走どころかクラス3位に入るほど、トヨタらしからぬアホな鍛え方したクルマなんです! 結果、リアサスには一部ゴムブッシュではなく、レーシーなボールジョイントを使っているし、ダンパーはドイツの『ザックス』製と拘りまくり。これほどトヨタの常識を無視したクルマ、しかもSUVっつうのは、不肖・小沢、見たことありません。更なる驚きは、室内&パッケージング。インテリアはトヨタの高級SUV『ハリアー』にも似た派手系プレミアムで、意外にヤンキーウケしそうなマテリアル感。インパネは流行りのレイヤー構造で、質の高いソフトパッドで覆われているし、センターコンソールはプリウス似の造形だけど、よりマットで上質な造り。感心したのがシート。座り心地が良いのは勿論、びっくりするほどサイズに余裕あり。身長176㎝の小沢が長距離走っても楽そう。その分、露骨に割り切ってるのがリアシートで、狭くはないけど、小沢が座って然程余裕が無い上、背もたれはリクライニング機能がカットされていて、ラゲッジ容量も318リッターと、サイズの割に狭め。

兎に角、驚くほどカッコ&走り優先で、びっくりするほどトヨタっぽくない。有名な“80点主義”どころか、“100点か0点か、決めるのは貴方次第”のオールオアナッシング系。確かに、この手の元祖である2010年登場の『ジューク』(日産自動車)や、3年前に登場した『ヴェゼル』(ホンダ)もかなりスタイル優先。それらに勝つ為には、より尖っていないと存在感が発揮できないのもわかる。でも、逆を言うと、ライバルより無難な出来でも、自慢の販売力と客層の広さで台数を稼いできたのが、今までのトヨタの鉄板たる勝利の方程式だった。ところが、開発主査の古場博之氏は「走りとデザイン以外は捨てていい!」と開発陣に言ったそうで、それがガチであることは乗ればビシバシ伝わってきます。しかし、古場氏が口にした言葉は言うほど楽じゃなかったようで、例えば、このC-HBを実際に開発・製造しているのは『トヨタ自動車東日本』。昔の『関東自動車』・『セントラル自動車』・『トヨタ自動車東北』が一緒になった子会社ですけど、そこの某エンジニアはプロト試乗会で、「今回、古場さんは『これが造れたら自分はもうどうなってもいい!』って勢いでした」と真顔で証言。これほどディテールに拘り、走りに拘り、万人ウケ以上にマニアウケを狙った物作りは、トヨタでは異例中の異例だったようで、序でにこの方は「これだけ自由にやっちゃうと、この後の開発がつまんなく感じそうで心配」と吐露。それだけ、C-HBは作り手が思いの丈を尽くして好き放題やって開発したってこと。今時、利便性優先じゃなくて、珍しくカッコと走りに拘ったスポーツカーみたいなSUV。こいつが売れると売れないとじゃ、今後のトヨタは勿論、ニッポンのクルマ造りが変わるような気がしますよ、マジで。


小沢コージ(おざわ・こーじ) 自動車評論家・『日本カーオブザイヤー』選考委員。1966年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業後、『本田技研工業』に入社。1990年に『二玄社』に転職し、自動車雑誌『NAVI』の編集を担当。1993年からフリーに。『週刊自動車批評』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)・『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)等。


キャプチャ  2017年1月30日号掲載

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