【日本の政治・ここがフシギ】第1部(03) 議論深めぬ廃案戦術

20170125 03
「何とか日を跨いで、廃案に追い込もう」――。臨時国会の会期末だった先月14日、野党の民進党ではこんな言葉が繰り返された。焦点は、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)整備推進法。自民党等が会期末ぎりぎりの成立を目指したが、野党が抵抗。与党は同17日まで3日間、国会を再延長した。今月20日に召集する通常国会でも、構図は同じだ。政府・与党は、働き方改革の関連法案や、犯罪を計画段階で処罰する“共謀罪”の構成要件を改め、“テロ等準備罪”を新設する組織犯罪処罰法改正案等の会期内成立を目指す。対する野党は“対決法案”と位置付け、「延長させるつもりで臨む」(民進党幹部)と意気込んでいる。野党は常に、会期を睨んだ日程闘争を選ぶ。何故だろうか。国会法では、“会期不継続の原則”がある。会期が終わると、各委員会で議決しない限り、審議途中の議案は全て廃案になる。議員数では法案の成立を阻止できない野党には、“会期末までに採決させない”ことが有効な抵抗手段だ。会期延長も“一定の成果”と考える。

駒澤大学の大山礼子教授は、「野党は時間を引き延ばす戦術を取らざるを得ないが、それでは政策論議が深まらない」と説く。欧米の主要国の議会では、会期が終わると原則として廃案になるルールはイギリスにしかない。下院(日本の衆議院)議員の任期中は、議案が継続するのが主流。フランスでは、最長5年も議案が生き残る。国会の会期はどうか。日本の国会は主に、1月召集の通常国会(常会)と、通常は秋に開く臨時国会(臨時会)がある。常会は150日で1回延長できる。一昨年は95日間延長し、245日と会期を取って安全保障関連法を成立させた。ヨーロッパの主要国では、会期の概念は希薄だ。年間の審議日数は少ないが、緊急時に法案審議をする必要がある場合等は、招集手続き無しで審議を始められる。事実上の“通年国会”だ。ドイツでは国会開会前、与野党で全ての審議日程を合意する慣例がある。フランスでは憲法上、野党法案の審議日を設ける。一方、日本は会期と廃案リスク、2つの縛りがある。すると、与野党は会期や審議日程を政治のど真ん中に据える。「日数に悩まされ、国会活動の効率が悪い。会期を巡る攻防は、与野党双方にとって有益ではない」。同志社大学の勝山教子教授は、日本で常態化している日程闘争に苦言を呈する。日本では、“審議拒否”という議員の存在意義を否定する言葉も罷り通る。貴重な時間を浪費し、採決を避ける――。政府の監視役の筈の野党の役割も問われる。

■本当に必要な政治家は少し  大山礼子氏(駒澤大学教授)
――日本の国会は日程闘争が中心だ。
「他の国を参考にしてみると、1月に召集される通常国会を11月くらいまでにして、与野党が合意してスケジュールを決めるのが効率的だ。より政策的な審議ができるようになる。審議時間を引き延ばす野党の戦術は、意味をなさない」

――事実上の通年国会を取る国は多い。
「日本の地方議会でも、通年と選択制にしているところはある。『法律を作る官僚が縛られるから』という理由で会期が限られているが、日程を予め決めておけば、寧ろ官僚にとってもいい」

――国会での首相の出席日数が多く、外交等への影響を懸念する声もある。
「首相の出席を求めるということは、“本当に必要な政治家が少ししかいない”という点を表している。政治家自身も自覚しなければならない」

――他国と比べ、衆議院解散の回数は多い。
「『党利党略で野放図に解散することをおかしい』と思ったほうがいいし、その為の政治教育も必要だ。税金の無駄遣いで、行政の横暴だ」

――解散は、政治の緊張感を保つ手段としてもしばしば使われる。
「与党にしかない“伝家の宝刀”のように煽って、野党と公平な競争はできる訳ない」

――選挙制度では、“1票の格差”が問題だ。
「思い切った政治的決断が必要だ。フランスでは、全選挙区の定数を人口比で決めた。政治家も、自身の地位を守る前に取り組む必要があるのではないか」

――日本の選挙活動には制約が多い。
「煩雑な規定が多く、選挙そのものが身近でないことも、投票率が低い理由の1つだ。戸別訪問禁止等の前時代的な制度は、現代の社会に合わせて、変えるべきものは変える必要がある」

――女性議員を増やす取り組みも途上だ。
「手本になる女性議員もおらず、政治参加そのものに対しても積極的な人が少ないのが現状だ。フランスは2015年、政治的な取り組みとして“男女ペア方式”を導入し、結果的に功を奏している」
「議員立法で提出された“政治分野の男女共同参画推進法案”が成立すれば、努力義務が生じる。政党間で競争させる等、環境を無理にでも整える必要がある」

               ◇

■解散権は政権の実績問う為  大西裕氏(神戸大学大学院教授)
――日本では、首相に解散権がある。
「首相が解散権を持つこと自体は問題ではない。国政選挙が多いことも大きな問題ではない。首相だけでは決められないテーマを有権者に問うべき場合もあるからだ」
「問題は、行使の仕方だ。政権の実績や公約の達成状況を問うているかが大事だ。よく、“解散の大義”という言葉を聞くが、違和感がある。有権者に問うべきは、『これからどうしたいか?』というよりも『これまでどうしたか?』だからだ。現政権の評価抜きに、将来の政権を預けることはおかしい」
「イギリスは解散権を事実上、禁じる形に変えたが、与党の実績を有権者がチェックすること自体は、制度変更の前後で変わっていない。アメリカは下院が2年に1度解散しているが、何をしたか定期的にチェックできる為、これはこれでよい。日本では、政権が何年続いて、何を実現したかもわからずに選挙をしている」

――国会の会期は事前に決まっている。
「巨大与党が会期をコントロールできる会期制は当然、与党に優位に働くが、野党にも力を与える。与党は会期内に法案を通そうとすると、野党に譲歩せざるを得ない場面があるからだ。両面の見方ができる」

――衆参両院の役割はどうあるべきか?
「日本は、衆参の権限がほぼ対等だ。参院で否決が乱発されると、国政が停滞する要因になり得る。それは、民意を反映した円滑な国政運営を進める議院内閣制の理念と、必ずしも合致していない」
「国政を担う内閣の閣僚を選んでいるのは、衆議院のトップである首相だ。衆議院こそ内閣の責任を問える筈だが、衆議院を阻止する参議院があるのはおかしい。参議院の権限をもう少し抑制すべきだ」

――日本と海外の選挙制度を比較して思うところは?
「日本は選挙運動に関する細かいルールが多く、現職を利する。新人が新しい情報を有権者に提供する機会が減るからだ。それは政治に変化が起き難い為、よくない」
「外国人が見て1番違和感を持つのは、記名式投票。世界の殆どの国は記号式だ。記名式のデメリットは無効票の増加。投票の選択肢は決まっているので、態々書かせる必要はない」

――地方議会選挙はどうか?
「かなり歪だ。同じ自治体で1人区もあれば、7人区もある。1人区では、2大政党制のような対決構図があり得るが、複数区では多党制のようになる。国の参院選も同様だ。有権者が何を問われているか、都市部と農村等地域で違う。制度が為政者の理屈で決まっている。全国各地で均一な仕組みにすべきだ」
「選挙管理もかなり不思議だ。選挙管理委員会の委員は事実上、議会が任命し、事務局の人員は首長が任命する。地方では、首長や地方議会の議員の思惑が入り易い仕組みだ。職を左右するような監督を受ける側が、監督を自ら選んでいる。スポーツ選手が審判を選んでいるようなもので、誤審を生みかねない」 (聞き手/竹内悠介)


⦿日本経済新聞 2017年1月16日付掲載⦿

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