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【変わる不動産市場】(04) 猫の額から抜け出したい

20210430 05
中国で営業職に就く32歳の戴永雪。上海市の西の外れに夫と住むシェアハウスの広さは、僅か8㎡だ(※左画像)。浴室とトイレは共用で台所もなく、狭い部屋のカウンターに炊飯器と電磁調理器を並べる。5歳の息子がいるが、とても一緒には住めない。息子は江蘇省揚州市の実家に戴の両親と暮らす。夫婦の収入は歩合で安定しないが、「小学生になったら少しでも良い教育を」と、来年には隣接する蘇州市花橋鎮に小さなマンションを買いたいと思っている。浙江省杭州市のトラック運転手である王少華は、休日もほぼ取らず、働き詰めで貯蓄をしている。出身は安徽省。地元に残した妻子と老親が暮らす家は煉瓦とコンクリートの粗末な造りで、冬の寒さは耐え難い。貯金は安徽省に家を買う為のものだ。中国国家統計局によると、先月の新築住宅は主要70都市の内、62で前月比値上がりした。上海や北京の中心部では、平均的な家族用で1500万元(※約2億5000万円)を超える物件も多い。

大都市から離れても家を持つのは簡単ではない。過剰開発やバブル懸念も囁かれる中で、需要を支えるのは戴や王の「少しでも快適に過ごしたい」という根源的な欲求だ。不動産価格の上昇を生み出すのが実需なら、恩恵を受けているのは地方財政だ。中国では地方政府が最終的に土地を売却する。中国を代表する大都市の広東省広州市、福建省福州市、陝西省西安市の昨年の総収入に占める土地売却の割合は50~60%台に上る。中国全体の売却額は8兆4142億元と、日本の国家予算を上回る規模だ。市況が崩れれば、金融システムのみならず、財政も破綻する。ここ数年、各地で不動産の販売条件は厳しくなった。銀行は当局の指示で不動産融資を絞り始め、広州市は4月に住宅ローン金利を引き上げた。政府が崩さないと感じるからこそ、中国人の心理には土地神話が宿る。ただ、綻びも見え始める。上海から南に車で2時間30分。深圳の再来を謳う新都市、杭州湾新区には開発が頓挫した大規模マンションや戸建て住宅が並ぶ。生産年齢人口は2013年をピークに減少に転じ、新たな街を創り出す程の力は失われつつある。不動産市場は盛り上がるが、各地でバブルの足音も近付いている。 《敬称略》 =おわり

                    ◇

伴百江・和田大蔵・原欣宏・張勇祥・堤健太郎・松本萌が担当しました。


キャプチャ  2021年4月17日付掲載
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テーマ : 経済ニュース
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Author:George Clooney

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