【動き出すトランプ主義】(下) 派手な公約、見えぬ財源

20170126 08
盗み・消耗・殺戮・墓石――。今月20日、ドナルド・トランプ大統領の就任演説には、過去の就任演説で一度も使われたことがない言葉が並んだ。アメリカの現状に関する悲観的な認識を表現したものだ。「政治家らエスタブリッシュメント(既存支配層)が“恩恵”を独り占めし、国民がその代償を負担してきた」と対立構図も強調した。トランプ大統領が言う“国民”とは、アメリカの製造業の衰退の影響を受け、雇用不安や所得格差への不満を過える人々のことで、主にトランプ大統領を熱狂的に支えた白人労働者世帯となる。トランプ大統領は、就任初日に発表した6分野の基本政策の1つに、軍の増強を掲げた。陸軍兵士を49万人から54万人、海軍艦船を276隻から350隻、空軍機は1113機から1200機――。トランプ大統領は、選挙中から具体的な数学を出して、軍の増強を約束してきた。「メキシコとの国境に壁を作る」という奇抜な約束も、治安対策の1つとして基本政策に盛り込まれた。実行すれば膨大な費用を伴う事業となるが、トランプ大統領が当初は「メキシコに負担させる」としていた経費の財源は不透明なままだ。

国土安全保障長官に就任したジョン・ケリー氏は、上院公聴会で「不法移民防止には壁の建設より、近隣諸国と協力するほうが効果的」と語っており、壁は“象徴的なもの”で済ませる可能性があるが、少なくとも表面的には公約を実現する方向だ。他にも、バラク・オバマ政権の看板政策である医療保障制度『オバマケア』の撤廃や、道路・橋・港湾等に1兆ドル(約113兆円)規模の資金を注ぎ込むというインフラ(社会資本)整備、法人税の大幅引き下げといった選挙公約も、実行へ向けて準備が進められている。だが、そこに付き纏うのは、「財政的に実現可能なのか?」という疑問だ。専門家の多くは、「不可能」という見解で一致する。「減税を含め、トランプ大統領の公約を全て実行すれば、アメリカの政府債務は今後10年で10兆ドル(約1130兆円)以上増加し、現在の約2倍に膨らむ」という試算まで出ている。大規模な財政出動を伴うトランプ大統領の経済政策は、伝統的に“小さな政府”を旗印とする共和党の基本路線とも相容れない。トランプ大統領は、オバマケアを撤廃する代わりに新たな制度を導入する方針だが、党内には抑々、政府が医療保険に関与すること自体を否定する市場原理主義的な立場を取る議員も少なくない。インフラ整備に対しても同じだ。政府予算の決定権を握る共和党との正面衝突が予想され、調整は容易ではない。ただ、政党内に支持勢力を持たないトランプ大統領にとっては、労働者層の強固な支持は唯一頼れる権力基盤となる。選挙で勝利しても公約を実現する姿勢を示し続け、支持者を繋ぎ留める必要がある。それと同時に、如何に現実と折り合いをつけるのか。それは、新政権が何度となく直面する課題となりそうだ。 (アメリカ総局 尾関航也)


⦿読売新聞 2017年1月24日付掲載⦿
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