【トランプのアメリカ・身構える世界】(04) 自国優先、“怠惰な4年”に

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ドナルド・トランプ大統領のメキシコ投資への“呟き介入”。自動車産業では既に、年間70万台分以上が標的になった。“最も雇用を創る大統領に”はいい。だが、問題がある。先ず、雇用流出の根拠だ。アメリカの自動車3社が本国で最も車を生産した1999年と2015年を比べると、3社の生産規模は確かに18工場・362万台減った。だが、同じ期間に、日韓欧の企業はアメリカで生産も雇用も増やしている。アメリカ勢の減少はメキシコ移転というより、海外勢に押された結果と言えた。2つ目は、アメリカメーカーの振る舞いだ。業界団体の『アメリカ自動車工業会』は、新政権にバラク・オバマ大統領時代の厳しい燃費規制を緩めるよう、嘆願書を送った。メキシコを諦める代わりに、収益源の大型車が売り易くなるよう、規制緩和を交換取引した――。そんな見方が専らだ。東京大学の柳川範之教授は、「“怠惰な4年”になる予感がする」と話す。

自国優先の貿易を志向し、企業も大統領の顔色を窺いつつ、「居心地の良い環境を作ろう」と従順を装う。トランプ政権は、“親ビジネス”か“反ビジネス”か。経済閣僚や助言組織には企業経営者が多い。法人税率が引き下げられ、環境規制と石炭などエネルギー開発への規制も緩和されそう。これらは、産業界には“心地いいトランプ”だ。一方、反グローバルの政策が増え、企業が海外で生む利益には課税の手が及ぶ。移民規制も濃厚だ。これは“居心地悪いトランプ”だろう。グローバル化の象徴とも言える自動車産業は、原材料も含め、100ヵ国以上に跨る国際貿易で成り立っている。日本車の海外生産は37ヵ国・地域で1800万台を超え、国内の2倍もある。そんな産業を自国の都合で閉じ込めたり、締め出したりする国が相次げば、世界経済の持続的成長など期待できなくなる。環境で言えば、オバマ政権の規制は確かに厳しく、「企業には重荷だった」との声もある。だが、規制は技術革新の原動力にもなる。注目すべきは、意外にも中国だ。世界最大の自動車市場である中国は、2018年から『NEV』と呼ばれる厳しい環境規制を導入。電気自動車の普及で先行してガソリン車で勝てない日欧の自動車大手を追い抜こうとする政策を始める。最近は、“中国のイーロン・マスク”(※『テスラモーターズ』の最高経営責任者)を自称する起業家も多数出てきているという。日本企業はどうすべきか。『日本たばこ産業(JT)』の小泉光臣社長は、「企業買収を含め、敢えてグローバルに、技術革新にもっと根を張るしかない」と話す。保護主義の先には縮小均衡しかない。であれば、政治が変わっても“グローバル”・“革新”こそが不変の道標だ。日本企業にとっては、まさに真価が問われる4年の始まりである。 (編集委員 中山淳史)


⦿日本経済新聞 2017年1月24日付掲載⦿
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