【ふるさと納税・光と影】(下) “隠れ国民負担”数百億円?…恩恵は高所得者中心

20170127 02
「ふるさと納税を議員に還元するのか」「直ぐに返金してくれ」――。佐賀県東部の上峰町役場に先月、100件を超える苦情が殺到した。同町が財政難で廃止していた1日当たり2000円の議員手当を復活する議案が、町議会に提出された為だ。同町は、まさに“ふるさと納税バブル”に沸いていた。昨年度決算の歳入は73億円で、前年度から77%増えた。佐賀牛等の返礼品に力を入れ、ふるさと納税での寄付がほぼゼロから21億円に急増した為だ。「町の財政に改善がみられる」。手当復活を提案した議員は、理由をこう説明したが、寄付者からの猛反対を受け、議案を撤回せざるを得なくなった。ふるさと納税は、地方自治体の財政の箍を一部で緩める。それだけではない。実は寄付が増えるほど、国民全体の“隠れ負担”が膨らむ仕組みが埋め込まれている。ふるさと納税をすると、寄付額から2000円を引いた金額分、住んでいる自治体や国に納める税金が減る。例えば、大阪市の住民が受け入れ先で首位の宮崎県都城市に3万円を寄付すると、税負担は2万8000円軽くなる。

実質2000円の負担で、1万円相当の返礼品を受け取れるとする。この場合、寄付した大阪市の住民は8000円分の得になる。都城市も、返礼品の調達費1万円を差し引いた2万円分のプラスになる。一方で、損をするのは大阪府・市だ。本来受け取れた筈の住民税が減る為だ。寄付者の所得水準等にもよるが、2万2000円の減収と仮定。自治体は、税収が減ればサービスを削るか借金をするので、影響を受けるのは住民全体だ。国も、受け取る筈だった所得税(国税)が6000円減る。あまり知られていないが、ふるさと納税で税収が減った自治体に75%を補填する制度があり、1万6500円を大阪府・市に払う。国は、計2万2500円を負担することになる。国から自治体への補填は、「年に数百億円規模になるのでは」(総務省幹部)という。『ぶぎん地域経済研究所』上席研究員の松本博之氏は、「寄付した人が得して、それ以外の国民が損する仕組み」と指摘する。寄付する人の間でも、収入によって大きな差がある。独身者のケースでは、年収300万円なら寄付額の事実上の上限は約3万円。年収1000万円なら約18万円だ。『ニッセイ基礎研究所』によると、所得水準の上位1割の内、ふるさと納税利用者は3.48%。下位1割の6倍に上る。「高所得者ほど制度を使っている」(同所准主任研究員の高岡和佳子氏)。高所得者がふるさと納税から恩恵を受け、中低所得者を含めた国民全体が負担する構図だ。ふるさと納税は、積極的に利用する人が、他の国民を犠牲にして豊かになる面がある。じわじわ拡大する歪みに目を向ける時期だ。

               ◇

山崎純が担当しました。


⦿日本経済新聞 2017年1月21日付掲載⦿
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