【科学捜査フロントライン】(09) 性能・解析技術が劇的向上…これが最先端の防犯・監視カメラだ!

繁華街等を中心に、その数が増え続けている防犯・監視カメラ。警察だけでなく、民間業者も設置し、その数は全国で300万台を超えると言われている。解析技術も向上し、容疑者の特定等に役立っている。そんな最新技術の数々を紹介しよう。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

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現代社会、特に都市部では、昔に比べて人間関係が希薄になってきている。その為、「以前より目撃証言が集まり難くなった」と語る捜査関係者は少なくない。そのような状況の中で重要視されているのが、防犯・監視カメラの映像記録である。警察が“街頭防犯カメラ”として設置しているのは、2012年3月末時点で全国16都道府県に791台。最も多いのは大阪府の204台で、警視庁管内には港区六本木や新宿区歌舞伎町等、主な繁華街5ヵ所に計185台が設置されている。では、民間のものも含めて、日本全国に合計何台の防犯・監視カメラが設置されているのかといえば、正確な実数を把握することは難しい。しかし、少なく見積もっても300万台以上が置かれていることは間違いない。2008年、ある防犯・監視カメラメーカーが、生産や出荷の統計を基に、「日本の監視カメラ台数は約350万台」という数値を発表したことがある。これが事実なら、凡そ人口36人につき1台の防犯・監視カメラがある計算になる。まさに“神の目”である。防犯・監視カメラの設置目的は、その名が示すように犯罪の抑止にある。高速道路等に設置されている自動速度違反取締装置(通称“オービス”)は、1980年代から日本に導入されたが、フィルム式の古いタイプのまま設置されているところも未だにある。フィルム式オービスの場合、所定の枚数を撮影し切ってしまうと違反者の感知はできないが、それでもスピード違反の抑止効果はある。ダミーのオービスが設置されているだけで、ドライバーには「スピードを控えよう」という心理が働くからだ。防犯・監視カメラの場合にもこれと同じ効果があり、設置されているだけで犯罪が抑止されるのは間違いない。だが、そういった犯罪抑止効果だけではなく、最近では「犯罪捜査や容疑者の検挙に、積極的に監視・防犯カメラを活用しよう」という動きが急速に強まっているのだ。カメラそのものの性能も、従来に比べて飛躍的に進化し、最新の技術が組み込まれようとしている。そういった最新技術を幾つか紹介しよう。

2011年3月から、警視庁は民間業者が設置している防犯・監視カメラの映像と、警視庁が所有している手配被疑者らの画像を自動照合するプログラムの試験運用を始めた。従来も、犯罪捜査に防犯監視カメラの映像は使われてきたが、事件毎に捜査員が映像を個別にかき集めていたのである。多くのケースでは、カメラの所有者から映像データの任意提出を受けていた。しかし、「これではスピーディーな犯罪捜査に問題がある」との指摘は、以前からなされていた。2008年、東京都は『“10年後の東京”への実行プログラム2009』という施策を発表。この中の“最先端技術の活用と官民パートナーシップの構築によるテロ対策”に基づいて警視庁が取り組みを示したのが、『非常時映像伝送システム』である。民間の防犯カメラの映像を、緊急時に警視庁に送信するシステムだ。警視庁警備1課によれば、銀行等の金融機関から警察に事件現場の様子を静止画像で送信するシステムは既に導入済みだが、動画の送信は新しい試みだという。送信対象は大規模災害やテロ通り魔等、多数の死者が出ることが想定される事件・事故に限定されるという。事件情報が入り次第、警視庁が民間に動画の送信を要請。送信の可否は民間側が決めるとされている。飽く迄も迅速な初動捜査が目的なので、警視庁側が録画することはできず、また事態が収束し次第、民間側からの送信もストップされるという。先ずは『東京メトロ』の数ヵ所の駅をモデル地区に指定し、試験運用から始める。東京メトロの全路線に設置されているカメラは約6500台。何れは、防犯・監視カメラの映像を一元的に警視庁と連動させることが企図されているのだ。2020年に開催予定の東京オリンピックでのテロ対策にも期待が寄せられている。人の歩き方には個性が出る。腕の振り幅・歩幅・姿勢等に特徴が現れるので、個人の特定が可能になる。これは『歩容認証システム』(左上画像)と言われ、現在、警察庁の『科学警察研究所』(以下“科警研”)で導入に向けて開発が進んでいる。同システムの長所は、低解像度の映像からでも個人を特定できる点にある。現在設置されている監視・防犯カメラは、殆どが高所から広角のレンズで撮影するタイプだ。民間の鑑定機関である『法科学鑑定研究所』の冨田光貴所長は、「防犯・監視カメラの映像は見下ろす角度で撮影したものが多く、髪の毛に隠れてしまうので、顔を全て捉えるのは難しい」と明かしている。しかし、人間の歩き方の鑑定なら、遠距離から撮影した映像でも個人の特定が可能になる。映像から顔で個人を特定する為には、カメラから10m以内で撮影されていなければ難しいが、“歩容”なら50m先に写っている人間であっても識別できるのだ。警視庁のある捜査員は、こう明かす。「天候は勿論、夜間に撮影された映像では、顔の識別・着衣・所持品の特定も難しい。しかし、歩き方なら不鮮明な映像であっても個人を特定できる上、たった2歩分の映像があれば十分解析が可能です」。

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防犯・監視カメラの映像から事両のナンバープレートを識別するのは難しい。自動車は走行している姿で写るし、プレート自体が小さいので、鮮明に撮影するのは至難の業なのだ。しかし、この問題を解決できそうな画期的なプログラムが開発されている。それが、『低解像度ナンバー推定プログラム』(通称“プレスリー”・右画像)だ。大分県警の科捜研が技術開発したもので、現在では全国ほぼ全ての自治体警察が導入している最新の解析技術である。プレスリーは、逆転の発想から生まれた。通常はボケたナンバープレートを鮮明にする努力をするのだが、敢えて同程度にボケた0001~9999の4ケタのナンバーの画像を用意し、識別対象のナンバーに1つずつ重ねていくのだ。そうすることで、似ている順に上位30パターンがたちどころに表示されるという優れものなのである。対象のナンバーが必ず存在することから考案された方法なのだ。2016年1月、ロシア発のウェブサイト『insecam』が、世界中の監視カメラの映像を誰でも自由に覗き見できるようにしていることが報じられた。世界120ヵ国の監視カメラ映像をリアルタイムで配信していたのである。監視カメラの設置国は、ロシア・アメリカ・フランス・日本・イラン・クウェート・サンマリノ・モナコ等120ヵ国以上に上り、その内訳は、7645台のアメリカを筆頭に、2位の日本が6291台、イタリアでは1992台が対象となっていた。日本では精神科病院隔離病棟・歯科医院・有名コーヒーチェーン店・コンビニ等、業種を問わず覗かれていたのである。insecamの行った行為は勿論、倫理的に問題がある。だが、街中に設置されている防犯・監視カメラがネットワークで繋がれる日は遠くなさそうだ。前出の法科学鑑定研究所の冨田光貴所長は、次のように語っている。「現状の防犯・監視カメラは点になっています。何か犯罪が起こると、捜査員はその点のカメラ映像を追いかけていくのですが、それでは捜査に時間がかかり過ぎます。将来的には、カメラ同士がネットワークで繋がれていくでしょう」。急速に進歩する防犯・監視カメラの性能とその運用。私たちは、“神の目”によって見つめられる社会で生きているのである。

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■イギリスの監視カメラ事情
現在、イギリス国内には600万台以上の監視カメラが設置されているという。イギリス以外の西ヨーロッパ諸国全体の監視カメラ数が650万台程度とされていることを考えても、如何にイギリスに監視カメラの台数が多いかがよくわかる。世界有数の監視カメラ大国だ。『監視カメラコミッショナー(SCC)』によれば、イギリスの都市部で市民が1日にカメラで撮影される回数は平均300回。近年利用が増加している身体装着ビデオ等、可搬式のものまで含めれば、イギリス国民はそれ以上の露出に日々曝されている計算になる。イギリスで初めて監視カメラが設置されたのは1961年、地下鉄のホルボーン駅である。一気に数が増えたのは1990年代に入ってからだ。監視カメラの導入には、「個人のプライバシーを侵害している」という問題が常について回る。当時は、イギリス国内でも導入に反発する声が大きかったという。しかし、1993年に発生した少年2人組による幼児殺害事件が契機となった。監視カメラが凶悪事件の解決に重要な役割を果たしたことから、プライバシー保護の声は徐々に小さくなっていったのだ。昨今は無差別テロの危機も強くなった。2005年に発生した『ロンドン同時爆破テロ事件』では、56人が死亡するという惨事が起きたこともあり、今日では監視カメラ設置を支持する声のほうが強くなっている。


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