【日本の政治・ここがフシギ】第1部(05) 強すぎる? 議会解散権

20170131 05
“解散風”――。日本の政治ニュースでは、よくこんな言葉を目にする。最近では2009・2012・2014年と、2~3年毎に衆議院解散があった。主要先進国をみると、ここまで頻繁に解散をする国は珍しい。世界では、解散は時代遅れになりつつある。「解散権をいつでも行使できるのは変だ。勝てる時に都合良く選挙をするのは、ずるいやり方だ」。こう話すのは、イタリア出身のパンツェッタ・ジローラモ氏。イタリアは1948年の共和制移行後、16回の解散を経験した。だが同国では、慣例の任期満了直前の解散や不信任を突き付けられた例等を除くと、大統領が自ら解散権を行使したのは1回だけだ。『主要7ヵ国(G7)』の内、解散の制度があるのはアメリカを除く6ヵ国。過去60~70年で、ドイツは3回、フランスは5回しか解散していない。イギリスは2011年、解散を任期満了か下院の可決時に限る法整備をした。安定政権で財政再建に取り組む目的だが、連立与党が“抜き打ち解散”封じを求めた面もある。

カナダは2007年、解散を原則4年に1回にした。解散権は残るが、「政府は法律を守る筈」(『日本カナダ学会』副会長で中央大学の佐藤信行教授)という。「安定した政権を維持する為だった」。京都大学の待鳥聡史教授は、イギリスやカナダの動きを説明する。日本は1947年の憲法施行後、解散は23回に上る。首相の主体的な判断で、憲法第7条に基づいて天皇の国事行為として解散する“7条解散”が定着し、回数は多い。解散権は首相の“伝家の宝刀”・“専権事項”と言われ、所謂“大義”が無くても、いつでも国民に信を問える政治的な武器だ。2005年には小泉純一郎首相が郵政解散で大勝し、『郵政民営化法』を成立させた。解散は、難しい政策を実現する推進力になる。時機を選んで民意の支持を得れば、政権の安定にもなる。一部の衆議院議員は参議院について、「緊張感が無く、市井の声に鈍感」とまで話す。「選挙が遠いなら、もっと政策に力を入れられるのに」。昨年暮れ。ある野党議員は、地元で支援者との忘年会をハシゴして嘆いた。昨年は7月の衆参同日選や2017年初めの解散が噂され、文字通り“常在戦場”だった。野党からは、「解散は内閣不信任の際に限定すべきだ」との声も上がる。一方の安倍晋三首相。「野党が『何で解散するんだ』と言ったので仰天した。野党は『早く解散してくれ』という気持ちで臨めば、初めて論戦も建設的になる」。今月8日放送のNHK番組で、こう語った。

■政治に意見する場をもっと  パンツェッタ・ジローラモ氏(タレント)
――日本とイタリアの政治の違いは?
「日本よりイタリアのほうが、政治が日常の生活に入っている感じだ。政治への参加意識が強い。例えば、選挙中ではなくても、街中の広場で政治家が演説し、数百人が集まる。私も若い時からよく行っていた。日本には、一般市民が政治に日常的に意見する機会が中々無い。その場を増やすべきだ。実際に会うと政治家に親近感が湧き、距離が縮まる筈だ」

――日本は、首相が解散権を持つ。
「いつでも行使できるのは変だと思う。外交成果等を出して支持率が高まって、勝てる時に都合良くやるというのはずるいやり方だ。選挙で争点が無く、圧勝した後に難しい政治テーマを進める。私にとっては、特定秘密保護法がそういう印象だった。共和国の王様みたいな感じがする」

――日本は、首相の国会出席日数がかなり多い。
「イタリアでは、首相は大事な時だけ議会に出る。『首相が呼び出されたら何が何でも行かなければいけない』というのはおかしい。大学のように、『出席すればするほど先生の評価が高まる』という考え方なのか? 国民は本当にそれを求めているのか? 外交や内政で結果を出すことを望んでいるのではないか? 新たなルールを作って、出席義務を緩和すべきだろう」

――日本は、女性議員の割合が少ない。
「若い世代、特に女性が政治の世界に入らないと、変化は起こり難い。投票率が低い若年層の政治への関心も高まらないのではないか。歴史的にみて、新しいムーブメントを起こせる人は、女性や若い人である場合が多い気がする。首相のイエスマンが多い現状を変える為にも、必要だろう」
「女性が増えない理由として、日本は個人よりグループを優先しがちだ。組織重視は利点もあるだろうが、イタリアでは個性があれば個人が正当に評価される気風が強い。それによって、新しい発想を柔軟に取り入れることができていると思う」

――日本の選挙制度について思うことは?
「自由でないところが多いような気がする。あるテレビ番組の出演契約の中に書いてあった。『政治家と選挙の時に写真を撮ってはいけない』と。『政治家の宣伝になるからだ』と言われたが、変だと思う。アメリカもイタリアも、タレントや歌手がどんどん候補者の応援に出る。『有名人でも一般人でも、やる気のある候補者を表舞台に押し上げよう』とする土壌が無ければ、政治は変わらないだろう」
「供託金等、選挙に出る為のお金が高過ぎるのも問題だ。新風を吹かす意欲的な新人が出難い。政治の世界に多様な人材を送り込む機会を奪っているのではないか」 (聞き手/竹内悠介)

               ◇

■衆院選の民意“目減り”が問題  待鳥聡史氏(京都大学教授)
――他のG7と比べると、日本の衆議院解散の頻度の高さが目立つ。
「日本と外国の政治制度のズレはよく指摘されるが、其々にずれている理由はあるものだ。首相の解散権に制約をかける国は近年、確かに多くなっている。ただ日本は、衆院選だけでなく、参院選や地方選等、あらゆる選挙が政権運営に影響を与えてしまうのが他国と違う点だ」
「毎年のようにあるこれらの選挙が“直近の民意を示している”と捉えられる為、本来、政権選択選挙に位置付けられる衆院選で得られる民意の“目減り”が、他国と比べて異常に早い。そうすると、政権運営上の課題に直面した場合、より明瞭に民意を問う為、衆議院解散・総選挙に打って出る動機が出てくる。この背景こそが問題だ」

――メディアの報じ方にも責任があるのか?
「大いにある。都道府県知事選を含め、『地方選はローカルの政治家を選ぶ選挙である』ときちんと整理すべきだ。それに、今の参議院は衆議院とほぼ対等なので、与党が参院選で負けた場合は首相の責任を問う声が上がり、野党も問責(決議)等が使えてしまう。それで退陣に至るのは、第2院の役割として適切ではない」

――民意を問うやり方には、国民投票もある。
「ヨーロッパ連合(EU)離脱を決めたイギリスの国民投票を振り返ると、実は2大政党のどちらもEU離脱が最優先の政策ではなかった。国民投票は、複数の争点の間の優先順位を付けずに1つの物事について問う為、短期的な視点が強まり易い。やはり、政党が政策の優先順位付けやパッケージ化を行う必要がある」

――“解散権の乱用”とは言えないのか?
「抑々、時の政権に解散を求めてきたのは、歴史的に野党だ。与野党に緊張関係があり、政権を失う恐れを与党が感じていれば、解散権が乱用されることはない。“勝てる”とわかっている状態があるから解散するのであって、首相側に解散権の行使を自制するよう求めるのは無理がある。『解散権の乱用だ』と言う前に、解散と解散の間に政権として何をしたのか、有権者も含め、厳しく問う目線が必要だ」 (聞き手/学頭貴子) =おわり


⦿日本経済新聞 2017年1月20日付掲載⦿

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