「新会社はゲーム会社ではない」――小島秀夫氏(『コジマプロダクション』代表)インタビュー

昨年12月、大手ゲーム会社の『コナミデジタルエンタテインメント』から独立し、去就が注目されていたゲームデザイナーの小島秀夫氏の新会社が今月、本格始動した。『メタルギア』等のヒット作で知られ、欧米からも最も注目されるデザイナーの1人だ。新会社では、ゲーム以外の分野にも取り組むという。映画や文芸の造詣も深く、“監督”と呼ばれる男は何を企んでいるのか。独立の狙いと、今後の展望を聞いた。 (聞き手/企業報道部 新田祐司)

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「“ものづくり”だけに集中できる環境を作りたかったのです。大企業では、会社全体の予算に合わせて定期的に作品を発売しないといけなかったり、部署間の調整作業もやらなければいけませんでした。これからは、自分に残された10年くらいの期間で何ができるかを考えていきたい」。コジマプロダクションは約1年前、4人の同志と僅か一間のオフィスから始まった。会議室さえ無く、採用面接の会場にはオフィス近くのカフェを指定し、コピーを取る時はコンビニへ走った。それでも人材募集を呼びかけると、世界中から応募が殺到。「凄い実績のあるアニメーター等、本当に色々な方から応募を頂いた」と驚く。今月から本格始動する新オフィスは「最大100人くらいが入る」という規模で、パーティションが無い。オフィス前方にはバーカウンターがあり、一段高いところから全体を見渡せる。「イギリスの会社を参考にした」という小島監督は、この場所を“司令室”と呼ぶ。「会社を大きくしたり、上場したりするのがコジマプロダクションの目的ではありません。会社ではなく、スタジオ。人数を増やして、複数のゲームを同時に作るような経営はしません。作品は一つ一つ手がけていくつもりです」。独立後の第1作目は『DEATH STRANDING』。支援は『ソニーインタラクティブエンタテインメント』から受け、『プレイステーション4』向けに優先発売する予定だ。「先ずはファンの方々が望んでくれているハイエンドなゲームを作っていく」。詳細は秘密だが、「“なわ”の繋がりを表現する」と話す。これまでのゲームは、殴ったり打ったりして相手を追い払う“棒”のゲームだったという。安部公房の小説『なわ』(新潮文庫の『無関係な死・時の崖』に収録)の一説を引用し、「なわは自分にとって善いものを引き寄せる為の道具」と話す。「インターネットが普及し、SNSができて、人は繋がっているが、未だ棒の使い方になっている」と小島監督。「インターネットで繋がった世界中の人々が、なわの繋がりを実感できる作品になる」と言う。「コジマプロダクションは、ゲームだけの組織ではありません。将来は“ゲーム”という言葉が残るかどうかわからないし、ゲームは別の物になるでしょう。架空と現実が一緒になり、医者に行く時も、どこへ移動する時も、日常生活にゲームが入り込んでいくようになります」。

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小島監督は過去にも、携帯ゲーム機用に太陽センサーを採用したゲームソフトを作る等、新しいテクノロジーへの感度が高い。「コジマプロダクションは、テクノロジーで新しい世界へ、新しい空間へ行く為のエンタープライズ号(※『スタートレック』に登場する宇宙船)」だという。その好奇心は、ゲームの枠を超える。「将来は、ゲームも音楽も映画もアトラクションも教育も、デジタルで溶ける」と小島監督。『ウォークマン』が音楽を密室から解き放ち、歩きながらの音楽体験を確立したように、「テクノロジーやエンターテインメントが日常にするりと入り込んで、新しいライフスタイルが作られていく」と言う。「ゲーム以外の業界や企業とも提携を模索していく」とも話す。コジマプロダクションの旗印は“ルーデンス”。オランダの歴史家であるヨハン・ホイジンガが提唱した概念が“ホモルーデンス(遊ぶ人)”で、「遊びこそ人間の本質」と説いた。「見たことのない世界を見て、自分で創りたくなる人もいるだろう」と小島監督。遊ぶ人が創る人になり、また新しい遊びを生み出していく――。そうして人間社会が発展していく姿を、小島監督は思い描く。「現代はツールが揃って、1人でもものづくりができるようになりました。大企業にいなくたって、自分の作品を作って発表できる素晴らしい時代です。今、クリエイティブ(な仕事)をしないのはナンセンスだと思います」。ゲーム業界も、少人数のチームや個人で制作する“インディーズ”が増えている。最近では、大企業が利用するCGの制作ツールが無料で使える。映画『シン・ゴジラ』(東宝)の一部がスマートフォンで撮影されたのが、象徴的な出来事だ。「『ゲームを作りたい。だから、入社後にゲーム作りを教えて下さい』という人は生き残れないし、コジマプロダクションでも採用しません。本当に作りたいなら、もう作っている筈ですから」。小島監督が引き合いの出すのが、昨年公開されたホラー映画『ライト/オフ』(ワーナーブラザース)だ。無名のクリエーターが2013年に動画サイトで投稿した2分の短編映像が話題を集め、正式に映画化が決まった。学生時代は映画に憧れていたが、当時のカメラは高価で手が届かなかった。小説家も、作品発表の場が限られていた。夢破れ、ゲームデザイナーの道を進んだ。「今、学生だったら?」と水を向けると、「映画を撮っていたかも」と恍けつつ、「ゲームは考えなきゃいけないことが一番多くて大変。だからこそ面白い。中々理解してもらえないけど」と笑った。


⦿日本経済新聞電子版 2017年1月27日付掲載⦿

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