「電通はブラック企業じゃない。寧ろホワイトだ」――元社員が赤裸々に語った電通の実態

日常的な長時間労働に、パワハラ行為の数々――。『電通』の過酷さを自身のツイッターで度々呟いていた高橋まつりさんは、自ら命を絶った。世間で言われているように実際、電通はブラック企業なのか? 元社員が、その内情を激白してくれた。 (聞き手/編集プロダクション『清談社』 野中ツトム)

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2015年12月25日、日本を牛耳る大手広告代理店『電通』に勤務していた、東京大学卒で入社1年目の高橋まつりさん(当時24)が、社員寮の4階から飛び降りて自殺した。それから9ヵ月後の翌2016年9月30日、まつりさんの母親・幸美さん(53・左画像)が記者会見を開き、申請していた労災が認定されたことを大々的に発表。電通のブラックぶりが注目されることになった。そして11月7日午前、厚生労働省が電通の東京本社と関西支社・中部支社・京都支社の3支社に、労働基準法違反の疑いで一斉に強制捜査に入った。つまり、国も電通をブラック企業と見做したのだ。しかし抑々、電通は本当にブラック企業なのだろうか? 確かに、自ら死を選んだまつりさんは気の毒かもしれない。だが、自殺する人の大半は、環境の問題ではなく、自らの心の気質の問題で死を選ぶ。これは、皆が経験的に気付いていることだ。まつりさんは現役で東大に合格した才媛で、美人、しかも母子家庭で育った努力家、そんな娘が自殺を選ぶなんてあり得ない、かわいそう――そんな風に思考停止に陥っていないだろうか? 確かに、死んだ人間を悪くいうのは難しい。だが、自殺した人間は完全に正しいのか? そんなことはない筈だ。自殺したからといって、彼女が正義で電通が悪というのは、あまりにも安易な結論と言わざるを得ない。抑々、プライベートで何かがあったかもしれないのに、全部が電通のせいというのは些か偏り過ぎていないだろうか? しかも一部では、「自殺の直前、まつりさんは付き合っていた男と別れた」という噂もある。勿論、その話を鵜呑みにする訳ではないが、会社と同等にプライベートの問題が自殺の原因である可能性もあるだろう。とはいえ、まつりさんの自殺の原因が電通なのかプライベートなのかは、ここでは深く掘り下げない。まつりさんの自殺によって、大バッシングされている電通という会社が、巷間で言われているようなとんでもない会社かどうかを確認したいのだ。

そこで、嘗て電通のクリエイティブ部門で働いていた元社員の村田さん(仮名)に話を聞いた。先ず抑々、電通はブラック企業なのだろうか? 「自分の見方じゃ、多分、電通は世間的にはホワイトだと思うんですよ。全然、ブラックでもなくグレーでもなくて」。だが実際、まつりさんは「月の残業が100時間を越えていた」と報道されているが…。「たった残業100時間で死ぬんなら、死んでなきゃならない人間は沢山いますよ。普通に考えて下さい。定時が朝の9時から17時まで、1時間は休憩なので実質労働7時間。それ以上は絶対に働くじゃないですか、22時くらいまでとか。その時点で1日当たりの残業が5時間なので、1週間で25時間。それだけで月に100時間いくんで。しかも、プラス土曜日とかも出たら、まるっと1日ってことになるので、十何時間が毎週。そうすると、残業は月に160時間以上になるので、普通っちゃ普通ですよ。ここだけの話、常識の範囲です」。まぁ、暴論と言えなくもないが、彼の言い分も一理ある。抑々、一般の中小企業であれば、その程度の残業など当然のことだろう。では、彼女が自殺した理由は何なのか? 「僕の友だちも本社の同じような部署に配属されたんで聞いてみたんですが、仕事自体は厳しいことは厳しいんだけど、一言で言うと『人による』って言っていましたね。例えば、定時17時の仕事が19時まで延びたとして、『19時程度ならいいや』って思える人なのか、『2時間も残っちゃったよ。私、東大卒なのに…』って思っちゃう人なのかってことですよ。そういうプライドもあったんじゃないかな。まぁ、僕の主観も入っていますが、中の人間の忌憚ない感想はそんな感じみたいですよ」。どこの会社でも組織でも言えることだが、“有能”ってことだけで上手くやっていくのは難しい。端的に言えば、まつりさんは電通に合っていなかったのだろう。彼女が上司から溶びせられた「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」という言葉についても、村田さんは分析する。「彼女の配属された部署はダイレクトマーケティングビジネス局デジタルアカウント部とのことですが、インターネット広告ってウェブを作ったり構成したりとかするんで、とんでもないスキルが要求されるんです。C言語とかHTMLなんてわかっていて当然だし、そうじゃなきゃクライアントに説明できません。彼女って、東大卒といっても文系ですよね。新卒で入った文系なんて、絶対についていけないと思います。1人でサイト構築とかやれて、言語とか全部書けるレベルの人がウワーッと山のようにいるので、その中で“東大卒”とか何の意味も無いです。だから、単純に仕事ができなくて、会社で勉強させられている状態を、彼女は“残業”と思い込んでいたのかもしれない。そういうの全然、ザラなんで。『スキルが無いんならデスクで勉強してろ』とか。上司にしてみれば、そんな使えないヤツが会社にいても実戦として機能していないから、『君の残業時間は会社にとって無駄』という発言が出たんじゃないでしょうか」。

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つまり、言い方は悪いかもしれないが、上司の発言はパワハラというより寧ろ真実で、まつりさんの残業は、その段階では会社に何の利益も齎していないから、完全に無駄だった可能性が高い。まぁ、教育期間に関して企業としてどう考えるかだが、少なくとも電通のクリエイティブ系の部署では、スキルは最初からあるのが当たり前で、入社してから学ぶものではない。つまり、「東大卒だから仕事ができるだろう」と安易に配属したことがミスマッチなのだ。「正直、そこは会社が100%悪いんじゃないですかね。何のクリエイティブの経験も無い女の子が、ただ東大卒だっていうだけでそういう部署に配属されたら、結構キツいですね。ウェブ媒体を扱えなきゃいけないので、この商品を売るんだったらフェイスブックでやったほうがいいのか、それともオールアバウトがいいのか、そこらへんの媒体の扱いを広告的な文脈で全部覚えてないといけないですし、大体、“F1層”とか“F2”とか、“コンバージョン”・“KPI”・“インプ”とか、普通の人が言われても訳わかんない言葉がバンバン飛び交っている世界なんですよ。そこに何の知識も無い人が加わるのって、結構キツいと思います」。そして、やはり東大ブランドと東大のプライドが、彼女にとっては大きくマイナスだったことは間違いない。「彼女が多分、同志社とか明治だったら、こんなことになっていないと思います。周囲も、東大卒を前提に仕事できないことに対してキツく当たると思いますし。『東大卒なのに何でこの程度のこともできないんだ!』みたいな。でも、インターネット広告の世界って数字が扱えないと無理なんで。東大の文系じゃ数字は扱えないと思うんで。だから、本来の“仕事もバリバリできる自分”というイメージに現実がついていけないっていう。プライドが高過ぎることもあって、結果的にバランスを崩したんじゃないですかね」。

つまり、村田さんに言わせれば、自殺は飽く迄も彼女自身の問題であって、電通のせいではない。「仮に電通が原因なら、他に何人も死んでなきゃならない」というのが彼の主張だ。因みに、そんな村田さん自身は、パワハラ体質に嫌気が差して電通を辞めたのだという。記事冒頭では「電通はホワイト」と言っていた筈だが…? 「ホワイトって言ったのは労働時間に限った話で、パワハラなんて普通にありますよ。基本的に“お手て繋いで”っていう会社じゃないので。社内の空気は殺伐としていますし、周りが周りを怒鳴っているとか日常茶飯事です。大体、電車の遅延とか、怒っても意味ないことをガツガツ怒っているっていう状態ですよね。言い訳したら言い訳したで、『お前、言い訳すんなよ』と。ガチガチの体育会系みたいなところがあるので」。結局、電通という会社は、こういう気質に馴染める人だけが生き残れる会社なのだ。但し、いくらパワハラが横行しようが、やはり電通にはそれなりの魅力があるという。「やっぱり、給料はいいですね。いきなり入った月から手取り27~28万円とかいくので、それが暫くすれば、簡単に30万・40万になっていく。しかも、新卒で入らなくて、中途でも大丈夫ですからね。社長が“ダイバーシティー”とか訳わかんないこと言い出したんで。『面白ければ何でも入れろ』と(笑)。ブラック問題で批判を浴びてる今が入り込むチャンスかもしれませんよ」。そして、電通のパワハラ体質の根幹にあるのが、極度の“クリエイター崇拝”だ。その構造とは、どのようなものなのだろうか? 「電通では、外部の有名クリエイターをまるで神様のように崇めます。クリエイティブさんが来る時は、お茶菓子を用意して、スタバのコーヒーを置いて、『さぁ、打ち合わせをお願いします』っていうのが普通。しかも、その人の好みをリサーチして把握していないと終了です。例えば、このクリエイティブさんはコーヒーに“おいしい牛乳”を入れるのが好きなのに、それが用意されてなくてフレッシュミルクしかないとなると、臍を曲げて帰っちゃう…みたいな」。しかし、本来はクリエイターにとって電通はクライアントであり、お客様の筈。どうして、そのようなことが罷り通るのか。「それは、特定のクリエイターありきで成り立っている企画だらけだからです。プレゼンの段階で、既に名前を出して企画を通しているんで、仕方ない部分はあるんです。仮に降りられたら数億円が無くなるんで。それはやっぱ、崇め奉るかなってところはありますね。しかも、クリエイターに直に文句を言われるのはプロデューサーとかで、そのプロデューサーが下のプロダクションマネージャーにストレスをぶつけて、今度はプロダクションマネージャーがアシスタントプロデューサーを怒鳴る…みたいな。変なトップダウン構造でストレスが伝承されていくんです」。

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つまり、この厳格なヒエラルキー構造が、電通のパワハラ体質の根幹にあるのだ。そして最大の問題は、目的がストレス解消にあるので、電通における叱責の大半は“感情”でしかないこと。ロジックではなく感情だけで当たり散らすので、特定の仕事のできない人間はターゲットにされ易いのだ。「『コイツは使えない』と見做されたら、もうサンドバッグ状態です。だから、話は戻りますが、高橋さんもサンドバッグだったんじゃないですかね。東大卒なのに」。このように考えるなら、東大卒でプライドの高いまつりさんが自殺してしまうのも理解できなくはない。今までの人生で殆ど挫折体験の無かった女性が全てを否定され、まるでゴミのように扱われたのだ。やはり、自殺の原因は電通そのものにあったのではないか? 「確かにそうかもしれません。でも、この問題って彼女自身の問題と電通の問題が絡み合っているから、厄介ですよね。もう自殺しちゃっているから悪く言うのは難しいんですけど、彼女が本当にちゃんとした良い子ちゃんだったら、こんなことにならないと思うんですよ。たかだか実務経験6ヵ月くらいの何もできてない・していない段階で、『私、もう辛いので…』って言われても…。『いやいやいや』って話じゃないですか。正直、モヤッとしますね。だから、彼女を擁護する気にはなれないんです。他の電通関係者も、陰では『ウチでやっていくには彼女が弱かっただけだ』って言っていますし」。村田さんにとって“ブラック企業”の定義とは、“労働時間が長いのに賃金が安いこと”だという。「労働時間は長いけど、給料は抜群にいい電通はブラックには当たらない」とのことだ。因みに、村田さんは電通を辞めた後、地元の関西に戻り、中堅の広告代理店でクリエイティブの仕事を続けているという。電通や広告業界に対する身内贔屓な部分が無いとは言えないが、実際に働いていた人間にとってブラックな会社ではなかったし、「仕事も楽しかった」と言っているのだから、それも1つの答えなのかもしれない。国が何と言おうと、電通はブラックじゃなかったのだ。


キャプチャ  2017年2月号掲載

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