自民党が秘密裏に進める政権与党再構築の衝撃――公明・維新に民進“離党組”の糾合狙う

首相の安倍晋三が政権に返り咲いて満4年。依然として内閣支持率は50%を超え、向かうところ敵無しの状況が尚も続く。しかも、安倍は更なる政権基盤の強化策を講じ始めた。但し、“飽くなき一強の加速”は、逆に政界全体に新たな軋轢・化学反応を招来させつつある――。

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先月22日、衆議院議長の大島理森(右画像)が、久々に議長の諮問機関である『議会制度協議会』を招集し、自民党に苦言を呈した。カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法の審議に象徴される自民党の国会運営に我慢がならなかったからだ。「議員立法は、提出者が各会派に十分な説明を行った上で、理解を得る努力が必要だ」。抽象的な物言いながらも、大島の怒りの矛先が安倍に向かっていたことは明白だった。安倍も、大島や衆議院議院運営委員長の佐藤勉に対して強い不満があった。「議長と議運委員長は受け身の公平な議事運営をしなければならないのに、“能動的な国会対策”に乗り出した」。安倍は、周辺にこう語っている。『環太平洋経済連携協定(TPP)』承認案件の採決日程を大島らが先送りしたことへの反発だった。首相と議長がここまで激しく対立した例は、ちょっとないだろう。そして、より注目すべきは、安倍1強による軋轢が与党内にも及んでいることだ。自民党と公明党が連立を組んだのは1999年10月。以来、野党時代も苦楽を共にしてきた自公関係に、深い溝が生まれている。それも、国会と東京都議会の2ヵ所で同時進行中だ。国会ではIR法の賛否を巡って、公明党が自主投票を決めた。“一糸乱れず”が基本の公明党らしからぬ状況に追い込まれたのだった。代表の山口那津男と幹事長の井上義久が反対票を投じ、前代表の太田昭宏らが賛成に回った。IR法の主務官庁を国土交通省に決めたのは、国土交通大臣だった太田とはいえ、党中枢が股裂き状態になった。

それだけではない。“亡国の法案”と切り捨てた弁護士で熱血漢の幹事長代理・富田茂之は、こう漏らしていた。「創価学会婦人部の反対が強い。このままでは、(今年7月の)都議会議員選挙は戦えない」。富田の危惧は、既に現実のものとなった。先月14日午後、都議会公明党幹事長・東村邦浩が突如として、自民との絶縁を宣言した。直接のきっかけは、都議会議員報酬の2割カットを巡る自公間の意見の対立にあったが、真相は「創価学会婦人部からの突き上げ」(自民党都連の幹部)だ。「『小池百合子知事に野次を飛ばす自民党といつまで一緒にやっているんだ』という厳しい声がある」(公明党幹部)。元々、公明抜きでは過半数に届かない自民党にとって、公明党の絶縁宣言の結果、都議会での小池との力関係は激変した。国会の隙間風と、都議会レベルでの決別――。自公は大きな曲がり角に差し掛かった。自民党幹事長・二階俊博と公明党幹事長・井上との関係は、しっくりいかないまま。二階は、予て親密な公明党中央幹事会会長・漆原良夫とは、定期的な会合を重ねている。つまり、一口に“自公連立”と言っても、“安倍-太田”・“二階-漆原”という2本柱が主軸で、公明党現執行部の“山口・井上”は中心から外れたところに位置する。更に、官房長官の菅義偉が介在する“維新ファクター”も、公明党の足元を揺さぶる。日本維新の会が参院選後、急速に“与党化”に向けて舵を切った。先の臨時国会では、TPP承認・年金制度改革法・IR法という3つの重要法案全てに賛成した。昨年7月の参院選後、安倍自民党は衆参共に27年ぶりに単独過半数を回復した。このことは、視点を変えると、安倍は連立のパートナーの選択権を手中に収めたことを意味する。IR法を巡っては、大阪府知事の松井一郎が、大阪の『夢洲万博』誘致とワンセットでIRの建設を目論む。一方、菅の地元である横浜市も、IR建設の最有力候補。長い個人的な関係に加えて、カジノが繋ぐ特異な連携が生まれた。嘗て、首相の大平正芳が、政策毎に予算や特定の法案に関し、“パーシャル連合”という枠組みを志向したことがあったが、「今の安倍政権は、公明と維新を使い分ける“変型パーシャル連合”を模索している」と見ていいだろう。24日のクリスマスイブには、恒例となった安倍・菅・橋下・松井の4者会談が行われた。今回は事実上、維新の“与党入り”のセレモニーと言ってもいいかもしれない。

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ところが、自民党中枢は更にその先を見据える。結論から言えば、“民進党の解体”だ。民進党代表に蓮舫(左画像)が就任して初めて迎えた臨時国会で、早くも崩壊の兆しが見えてきた。重要三法の何れも、表向きは反対を唱えながら、いざ衆議院本会議での採決の場面を迎えると、全員が議場を後にした。党内意見を集約すらできなかったからだ。最早、政党の体を成していない。IR法案に至っては、参議院執行部が蓮舫の意向を無視する形で、自民党と法案の修正で合意した。修正合意は円満成立とイコールだが、蓮舫は安倍内閣不信任決議案を提出し、意味の無い“最後の抵抗”を試みた。その民進党は、国会最終盤になって“選挙近し”の判断から、次期衆院選を視野に世論調査を実施した。結果は、上限が約140議席、下は100議席を割り込むものだった。地域差もはっきりと示されている。北海道・東北・新潟・長野は強いが、西日本はからきし勝負にならず。関東でも、蓮舫の地元である東京と幹事長・野田佳彦の地元である千葉が弱かった。そんな求心力を欠く民進党の動きを凝視していた安倍は、衆議院の解散先送りを決断した。国会の閉幕直前、側近が安倍に問うた。「衆院選の情勢調査をやりたいと考えますが、如何でしょうか?」。安倍は即答した。「やらなくていい」。側近が世論調査を含め、総選挙に向けて準備開始の必要性を感じたのは、先月10日付の朝日新聞朝刊がきっかけだった。『1月解散論 自民に浮上』。記事にはサブ見出しで、“年明け情勢調査へ”とあった。記事内容に、自民党選挙対策委員長・古屋圭司の言動と重なり合う部分がかなりあったことも大きかった。

しかし、ここで解散風にストップを掛けずに年末年始を迎えると、選挙に走り出す議員の動きを止められなくなる。同15日に国会が事実上閉幕するのに合わせて、“解散無し”の情報が一斉に流された。それでも、民進党は早期解散を前提にした準備を止めなかった。次期衆院選立候補予定者に選挙資金を配ったのだった。当選圏内の“B1ランク”までの候補予定者が対象だったが、解散風を煽る自民党の策略に乗せられた可能性がある。安倍が解散見送りを決断したのは、「次の選挙は議席を減らす選挙」(自民党幹部)というのが最大の理由だが、今年は有力国の首脳の交代が相次ぐことに備える外交上の判断も働いた。今月20日にドナルド・トランプが正式にアメリカ大統領に就任するのを始め、フランスや韓国でも大統領の交代が決まっている。「総理の頭には、『激変する国際情勢を乗り切るには、今の安定した議席を維持すべき』という考えがある」。菅は、周辺にこう解説した。更に、自民党の隠された狙いがある。選挙先送りによって生まれる空白期間に、「民進党の弱体化→解体。そして新連立の構築」(自民党幹部)を目指すことだ。具体的に描くシナリオの1つに、“自公民路線”の復活がある。1989年に『ベルリンの壁』が崩壊し、米ソ冷戦構造の終焉、更にイラクのクウェート侵攻に端を発した『湾岸戦争』に直面して、国内政治も自民・社会両党による自社55年体制からの脱皮を余儀なくされた。そこで、新たな政界再編の模索が始まった。その軸が、自民・公明に旧民社党を加えた“自公民路線”だった。旧民社党は、労働組合の中でも官公労を中心にした『総評』ではなく、大手民間企業の労組の全国組織だった『同盟』を支持母体とした。この総評と同盟を軸に統合されたのが、現在の『連合』だ。しかし、連合の内部は今も尚、旧総評系と旧同盟系の溝が埋まらず、原発問題等では再稼働を求める『電力労連』と、旧総評系労組では考え方が180度違う。とりわけ、民進党と日本共産党を軸に自由党・社民党を加えた4党共闘は、連合の中にも異論が根強く存在する。そんな折、連合会長の神津里季生が、刺激的な論考を月刊誌『文藝春秋』最新号に発表した。『民進は共産と握手するな』。既に、二階は神津と極秘に会談する等、“自公民”の枠組みを視野に入れ動き始めている。神津は論考の中で、安倍の祖父・岸信介に触れ、安倍への親和性を示唆している。

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「(岸は)労働や社会保障の分野にも取り組んだ総理でもあったのです。その意味では安倍総理ももともと社労族ですし、岸さんのDNAとどこかで繋がっているような気がします」。神津は先月22日、首相官邸で安倍と会談した。中でも民進党に衝撃を与えたのは、連合事務局長の逢見直人(右画像)が同席したことだ。安倍の連合分断策と受け取ったからだ。二階は常々語る。「民進党には、離党予備軍が最低でも10人はいる」。但し、二階自身が推進してきた従来の民進党の切り崩しとは、大きな違いがある。離党者を自民党に入党させるのではなく、新党を結成させる点だ。ここで見えてくるのは、二階と菅という2人の実力者が、アプローチの手法は違っても、全く新しい政権基盤・連立の骨組みを変えようとしていることだろう。菅は維新を梃子に公明を揺さぶり、二階は“自公民路線”を目指す。菅と通じた維新は、小池が次の踏み台と位置付ける東京都議選への参戦を目論む。安倍は今月中旬にオーストラリアと東南アジア諸国を歴訪し、下旬にはワシントンでトランプと会談する方向だ。それに先立って、トランプの娘であるイヴァンカが来日する。イヴァンカの夫であるクシュナーと、駐日アメリカ大使キャロライン・ケネディーの夫であるエドウィン・シュロスバーグがユダヤ系アメリカ人同士として親交があるという。イヴァンカの来日は、ケネディを介して安倍に伝えられた。着々と手を打つ安倍は、いつ解散に踏み切るのか。自民党選対幹部は、こう断じた。「今年9月以降か、場合により来年1月の可能性もある」。2017年は、選挙に先行する形で政界再編が始まるかもしれない。その軸となるのは“自公民”か、将又“自公維”か――。政界は新たな局面に入る。 《敬称略》


キャプチャ  2017年1月号掲載

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