三井住友銀行、旧住友の“一党独裁”で蘇る危険な体質――最大の“飛ばし先”を吸収した『銀泉』、過去の清算にメドはついたが

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「私のアイデアとして、人事委員会(※取締役会の任意の諮問機関)に提案させてもらった」――。先月16日の会見で宮田孝一社長(右画像右)はこう強調したが、本当だろうか。今年4月からの新経営体制を発表した『三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)』。『三井住友銀行(SMBC)』の國部毅頭取がSMFG社長に横滑りし、高島誠専務執行役員に取締役の肩書を付与した上で、後任に起用する。SMFGの奥正之会長とSMBCの北山禎介会長は揃って取締役となり、宮田社長が双方の会長職を兼務。國部氏は、新設するグループCEOにも就任する予定だ。金融庁は一昨年来、メガバンクを始めとした総合金融グループに対し、フィンテック等金融と親和性の高い事業子会社の新設を認める代わりに、持ち株会社をグループの中核的存在と位置付けて、その機能を強化・高度化するよう求めてきた。「銀行主導では、傘下の証券会社やノンバンク等に対する監視が十分に行き届かず、責任の所在も不明確で、企業統治上の問題がある」と見たからだ。今回の首脳人事は、こうした当局の意向を踏まえたもので、SMFGは6月下旬の株主総会での承認を経て、“指名委員会等設置会社”へと移行。制度の上からも、持ち株会社の権限をより強める体制に脱皮する。だが、新たにSMBC頭取に就任する高島氏は旧『住友銀行』出身。そして、國部氏も旧住友だ。つまり、これまで“旧住友主導”と言われながらも、持ち株会社社長に旧三井銀行出身者、銀行頭取に旧住友出身者を据えることで、旧行間の微妙なバランスを取ってきたグループ支配の構造が、一連の人事で完全に崩壊。旧住友による、まさに「一党独裁」(事情通)とも言える枠組みが構築されることになるだけに、旧三井側の落胆と衝撃は計り知れない。「ポストの配分比率から見ると2対2で、従来と変わらない」。旧三井の反発を警戒する旧住友幹部の1人は、こう弁明するが、詭弁だろう。確かに、これまで旧行で分け合ってきたSMFGとSMBCの会長ポストは、何れも旧三井出身の宮田氏が独占する。この為、見かけ上の勢力比は同じだ。

しかし宮田氏は、これに伴ってSMFGの代表権を返上。SMBCでも、代表権の無い会長に甘んじる見通しだ。それに何より、CEOは飽く迄も國部氏。宮田氏は謂わば「お飾り」(金融筋)にも等しい存在になり下がる。これを以て“同配分”というのは、どう取り繕っても牽強付会に他ならない。現在、SMFGとSMBCには、重複分や社外取締役の枠を除いて、85の役員・執行役員ポストがある。この内、旧住友出身者が占めているのは53ポスト。既に6割超にも達している。これに対し、旧三井は22ポストで、4分の1強。合併前の旧『さくら銀行』の母体の1つである旧『太陽神戸銀行』の出身者を含めても27ポストで、3割強に過ぎない(残りは中途入行の外国人等)。「このままでは、副頭取以下のポストも遠からず井桁(旧住友の行章)に席巻される」。旧三井出身幹部は危機感を募らせる。既にその兆候はある。役員陣の中で入行年次が最も若く、従って同期の出世レースの先頭を走っているとも言える1987年入行組8人の出身母体をみると、旧三井と旧太陽神戸は各1人だけ。それ以外は全て旧住友で、占有率4分の3と圧倒的だ。旧三井にとって唯一の救いは、早ければ2年後にもSMFG社長ポストを奪い返せる目が、僅かながらも残されたことくらいか。國部氏の頭取就任は2011年4月。今年でトップ在任丸6年に及ぶ。この間、今年度を含めて2度の『全国銀行協会』会長も経験している。流石に「3度目は無い」(SMBC関係者)とみられ、グループ内では「2019年春には後進に道を譲ることになる」との声が強い。そうなると、後任は頭取昇格が決まったばかりの高島氏ではなく、高島氏の入行年次である1982年入行組を含む残りの古参役員の中から選ばれる公算が大だ。つまり、事の成り行き次第では、1980年入行で、早くから旧三井のエースと目されてきたSMFGの車谷暢昭副社長兼SMBC副頭取に指名が回ってくるチャンスもゼロではないということになる。とはいえ、1980年入行組には、旧住友出身で國部氏の信頼が厚いSMBCの橘正喜副頭取という強力なライバルもいる。これまで1982年組のトップを直走り、同じく経営中枢の企画部門を担うSMFGの太田純取締役兼SMBC専務執行役員の存在も侮れない。ゼロではないとしても、状況は厳しく、当の旧三井出身幹部でさえ、「あの厚顔無恥で悪知恵に長けた旧住友の連中が、一度掴んだ権力基盤をそう易々と手放す筈がない」と悲観的だ。

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それにしても、主導権を保持しつつも、これまでは旧三井に対して、時に過剰とも言える気遣いすらみせてきた旧住友が、いくら当局の意向があるからといって、ここにきて“奇貨居くべし”とばかりに本性を剥き出しにしてきたのは何故だろうか。金融筋の1人は、その答えを次のように解きほぐす。「過去の清算を終えたことに対する自信と矜持の全面的回復」。石油ショック後の安宅産業事件に始まり、1986年の平和相互銀行事件を経て、バブル経済崩壊前後のイトマン事件へと続く旧住友の暗黒史。その深い闇の中で膨れ上がり、手を付けられないままに塩漬けとなっていた不良債権の処理にほぼ蹴りをつけ、向こう傷を負うことも厭わなかった嘗ての強気の姿勢を取り戻しつつあるのではないか――という訳だ。そして、それを裏付けるかのような出来事が、ここ2年ほどの間に『銀泉』(大阪市中央区)なる会社を舞台に相次ぎ起こった。SMBCの支店が入居するオフィスビルや約700ヵ所の駐車場の管理・保険代理店業務等を手掛ける旧住友の親密事業会社で、住友系の不動産賃貸中堅『京阪神ビルディング』と10%超ずつ株式を持ち合う他、『三井住友カード』や『三井住友海上火災保険』、『サノヤスホールディング』傘下の『サノヤスライド』、『アサヒグループホールディングス』等も出資する。その銀泉が2015年4月、同じく旧住友の店舗ビルの開発・管理を祖業とする『大手町建物』(東京都港区)を吸収合併したのである。『東泉建物』・『東泉地所』・『ティーケービル』・『南青山ビルディング』・『吉祥寺エコービルディング』…。戦後最大の経済事件とも言われるイトマン事件は、未だ多くの謎に包まれているが、一説によると、当時の同社の総資産1.3兆円の内、大半が不良化・固定化し、旧住友から3000億円を超える資金が、旧イトマンを通じて闇社会に吸い込まれたとされている。これにより、旧住友が抱え込むことになったと取り沙汰された不良債権は8000億円前後。こうした不良債権の山を移し替えたり、カムフラージュする為に利用され、或いは新設されたと言われるのが、“緊密先”と呼ばれるこれら一連の不動産会社だ。

大手町建物は、そんな緊密先の中でも最大の“飛ばし先”。グループ会社だった東泉建物と東泉地所を合わせ、「4500億円規模の不良債権が移された」とも言われている。その曰く付きの会社を吸収合併したのである。「銀泉も、一時は飛ばし先の1つとして利用されていた節がある。更には、旧住友の融資先企業が地上げに失敗して、虫食いになった土地等の担保物件の受け皿としても使われていた。一先ず更地にして、自社の駐車場物件に組み入れるといった処理に追われていた訳だ。ただ、『既に本体の資産内容はほぼ健全化されている』と言われている。何より、ここ最近は大学新卒の定期採用も行う等、プロパー社員の獲得にも力を入れているとか。そうした会社に、掃き溜めのような会社をくっつける筈がない。被合併会社の大手町建物のほうも、完全無欠ではないにしても、『ある程度は身綺麗になっていた』と見るべきだ」。前述の金融筋は言い切る。だが、不動産業界関係者からは「値段が付くような代物ではない」と呆れられ、「塩漬けにするしかない」と見限られてもいた大量の不良資産を、SMBCはどうやって処分したのか。「2つの追い風が吹いた」というのが事情通らの見立てだ。1つは、2004年頃から始まった不動産のミニバブル。結局はアメリカ発のサブプライム問題やリーマンショックで弾け、これに踊った『アーバンコーポレイション』始め、“新興不動産”と呼ばれた多くの企業が破綻していったが、そこに行きつくまでに相当の不動産を売却処分できたという訳だ。実際、2004年9月には、大手町建物グループが保有する約50棟のビルを、一括して『ゴールドマンサックス』系のファンド『エンデバーリアルティーファンド』に売却したことが判明(※推定対価1200億~1400億円)。イトマン傘下にあった『トータルハウジング』の保有物件等も含めて、最終的には500物件(※同3000億円規模)が売れたとされている。そして第2の風が、2013年からのアベノミクス。日銀による異次元緩和に押される形で、再び地価が上昇。これにより、とことん売れ残っていた不良資産の切り離しにも目途を付けたということだろう。過去の清算完了を窺わせるもう1つの出来事が、銀泉の100%子会社『泉友総合不動産』の昨年3月末での営業終了だ。事情通によると、この会社は一時、「乱脈融資で5000億円が焦げ付いた」とされる旧『平和相互銀行』関連の不良債権の飛ばし先として活用されていたという。その後の再編で、事業内容は不動産の仲介や鑑定業務に変わったが、その一方で、1986年10月の住友による平相銀の吸収合併以降、次々と粛清された旧平相銀行員らの受け皿ともなっていたらしい。それが活動を停止したということは、「人員整理も含めた旧平相銀関連問題も粗方片付いた」ということか。SMBCは、泉友総合不動産の休眠化から約2ヵ月後の昨年6月、2012年まで副頭取を務め、『新関西国際空港』社長に転じた安藤圭一氏を、銀泉の新社長として送り込んでいる。新関空のコンセッション方式への移行による運営主体の交代に伴う人事だが、副頭取クラスの派遣は「前例が無い訳ではない」(旧住友幹部)とはいえ、極めて異例だ。実際、前任者だった勝川恒平氏のSMBCにおける最終的な肩書は、常務執行役員だった。

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銀泉の昨年3月期の売上高は236億円で、営業利益は46億円。これに対して、新関空は営業収益1846億円で、営業利益は593億円。企業規模からいっても、遥かに“格落ち”の感は否めない。だとしたら、この人事の狙いは「旧富士銀行系で銀泉と同様の役割を負わされながら上場を果たし、急成長したヒューリック(旧日本橋興業)のように、何れ大攻勢に打って出る為の布石ではないか」。事情通の1人はこう読み解くが、それならそれで、これも過去の清算の終わりを示唆する事象の1つに違いない。そんな中、國部頭取始め旧住友出身の首脳陣や幹部らが胆を冷やしたのが、昨年10月に明るみに出た大森支店副支店長(※同年7月懲戒解雇済み)による多額の横領事件だろう。架空の会社を作り、ドルを購入する際、通常1ドル=100円のやり取りを1ドル=1円等と書き替えて、大量のドルを手中に。こうして得たドルを売って差益を稼ぐ手口を、同6月までに109回も繰り返し、総額約11億円を詐取していたというものだが、逮捕された元副支店長は旧住友出身。それも、“絶滅危惧種”とさえ言われている旧平相銀出身だっただけに、自らが犯してきた業の深さを感じ取った役員もいたとかいなかったとか。旧住友にとって幸いだったのは、「手口が巧妙で見抜くのは極めて難しかった」(SMBC幹部)とされ、大きくは問題視されなかったことだ。ただ、事件が表沙汰になったのは、折しも次期首脳選びが佳境に入らんかという何とも微妙な時期。9年間も発見できなかった失態に対する責任を問う動きが表面化しても、おかしくはないところだった。今年3月期の上期(2016年4~9月)決算。SMFGは連結業務純益5481億円に止まり、『三菱UFJフィナンシャルグループ』に2000億円近い差をつけられた。ただ、銀行単体の実質業務純益では5120億円と、規模で優る『三菱東京UFJ銀行』を凌駕。1000億円近く水を開け、『みずほ銀行』を含めた3大メガバンクでトップに立っている。とはいえ、その貸出資産の中身を巡っては、一部で危うさを指摘する声も飛ぶ。不動産業界向け融資(含む物品賃貸業)がここ半年間で6800億円超増え、3メガで突出して膨らんだ為だ。“好事魔多し”――。過去の清算は終えても、将来の不良債権をせっせと生み出している危険性も無しとしない。


キャプチャ  2017年1月号掲載

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