【仁義なきメディア戦争】(12) 若者は“ネットファースト”に…老いゆくテレビに新興メディアが挑戦状

20170206 03
今やゴールデンタイムで『テレビ東京』にも負けて、民放最下位の週もあるほど、『フジテレビ』の視聴率は底無し状態が続いている(左画像)。フジの今年3月期営業利益は前期比で半減。コストカットは厳しさを増しており、冬のボーナスは「基本給の2ヵ月分ならマシなほう。給与とボーナスの比率が5対5だったから、年収減がキツい」と、あるフジ社員は嘆く。嘗ては半期毎に基本給の5ヵ月分も珍しくなったボーナスに、底打ちの兆しは見えない。寒風が吹き荒れるのは『TBSテレビ』も同様だ。フジが落ち込んだことで視聴率3位に浮上し、業績は堅調。ただ、「裁量労働制が導入されて、残業代に上限が設けられた」(TBS社員)。民放キー局の中でTBSだけは残業代が青天井だったが、「残業が多い制作部門は収入が大幅に減る」と溜め息を吐く。視聴率・業績共に他局を圧倒する『日本テレビ』も、安閑としてはいない。現場で活躍するのは30代や40代が中心で、「50代になって閑職部署に追いやられている人たちを見ていると不安になる」(日本テレビ社員)と零す。民放各社の業績は、フジを除くと回復基調にある。2020年の東京オリンピック開催に向けて追い風が吹く一方で、あるキー局首脳は「2021年にテレビ広告をインターネット広告が抜いてもおかしくない」と危機感を露わにする。日本の総広告費6兆1710億円(2015年電通調べ)の内、地上波テレビ広告は1.8兆円と圧倒的だ。これを猛追するインターネット広告は1.15兆円で、2桁増で伸び続けている。中でも牽引役はスマートフォン広告だが、これから伸びが期待されるのは動画広告。20代のインターネット視聴時間はテレビに迫り(左画像)、テレビの独壇場だった動画コンテンツがインターネットへと大量に流れ込んでいる。

このトレンドは、広告市場にも波及している。「2014年頃からテレビの見られ方が変わった」と、『ローソン』広告販促部の庄司考志マネージャーは指摘する。テレビ広告で話題性を喚起してきたが、従来のような反応が得られなくなったという。そこで、今年4月に発売した『でからあげクン 夢のミックス味』では、敢えてインターネット広告に絞り込んだ。若者に振り切った内容で制作し、動画共有サイトの『YouTube』で流すと、反響は想像以上。瞬く間にSNSで拡散された。但し、テレビCMを減らすつもりはない。「主婦層やシニア層を意識した内容に見直し、夕方の時間帯に流している」(庄司氏)。全国1万2000の加盟店に商品を仕入れてもらう為にも、テレビCMで幅広く訴求することは不可欠と考えている。「広告戦略の中核は飽く迄もテレビ」と強調するのは、酒類メーカー『サントリースピリッツ』宣伝部の鶴岡剛課長。その上で、「テレビの接触時間が減っている以上、インターネット広告も必要」と補完関係を強く意識する。8月に刷新したノンアルコール飲料『のんある気分』では、記者会見の様子を生放送でインターネット配信した。テレビCMと同じ動画をYouTubeやSNS等で積極的に拡散し、消費者が複数のメディアで商品広告に接するよう仕掛けた。鶴岡氏は、「デジタルネイティブ世代は未成年が中心で、酒類を扱う当社のターゲットから外れる」と分析する。しかし、彼らが成人する数年後、広告戦略が大きく変わっていてもおかしくない。インターネット広告の変化への対応に頭を悩ませるのが、ドイツの自動車メーカーの日本法人『メルセデスベンツ日本』だ。「PCをベースとしたヤフーのブランドパネル広告の訴求力に匹敵するほどのスマホのメディアが見当たらない」(マーケティングコミュニケーション部の禰冝田謙一部長)。主要顧客である50~60代向けには、番組を厳選してテレビ広告を打っている。一方で、30~40代を取り込むには、スマホのターゲティング広告・『フェイスブック』・『インスタグラム』等、SNSの広告を活用している。「嘗ては新聞広告でカバーできたが、現在の30~40代は訴求が簡単ではない」(禰冝田氏)。日用品大手の『ライオン』も、テレビとインターネットで広告ターゲットを変えている。例えば、歯槽膿漏対策の歯磨き粉『デントヘルス』のテレビCMは、50代男性をターゲットに据えてきた。しかし、自社の商品サイトを分析すると、スマホ検索を経由した30代女性の流入が最も多いことに気付いて驚いた。「新たに女性を意識したバナー広告を作り、ターゲティング広告を打つことにした」(宣伝部デジタルコミュニケーション推進室の中村大亮氏)。

20170206 13
「テレビに若者の居場所が無い。視聴者も出演者もシニア層ばかりだ」。3年前から『テレビ朝日』で番組審議委員を務めてきた『サイバーエージェント』の藤田晋社長は、テレビの構造問題に警鐘を鳴らす。そして今年4月、「地上波に無いコンテンツに拘る」と、テレビ朝日との合弁でインターネットテレビ局『AbemaTV』を開局した。藤田社長自ら総合プロデューサーを務め、「自分の仕事時間の95%を割いている」という熱の入れようだ。AbemaTVは24時間、約30チャンネルを放送しており、誰でも無料で視聴できる。アプリのダウンロード数は今月に1000万件を突破し、視聴者数は週間300万人・月間600万人に到達。視聴者は20代以下が多く、主にスマホ経由で見られている。テレビに接続して動画配信サービスを視聴する『Amazon.com』の『ファイアTV』等の機器に対応し、テレビ画面でも視聴できるようになった。収益源はテレビと同様に、番組の前後に入る動画広告がメインだ。番組編成がある為、広告主にとっては旧来型のCM手法を利用できる安心感がある。視聴率ではなく、視聴者数や年齢層のデータの裏付けを基に出稿できる点も魅力だろう。実際、テレビ朝日経由で「AbemaTVに出稿したい」という広告案件が複数舞い込んでいる。ある広告代理店幹部は、「AbemaTVは、スマホでの“ながら視聴”というブルーオーシャンを狙った戦略」と評価する。一方でテレビ局関係者は、「テレビと同じように番組編成をする意味がわからない。いつでも好きな動画を見られるのがインターネットの特長なのに」と批判的だ。賛否両論あるが、「視聴習慣の獲得を狙っている。週間1000万人の視聴者数を目指す」(藤田社長)。来年にかけて200億円を投じ、番組の充実化や独自コンテンツの制作に充てる方針だ。マスメディアになれたら、広告収入は自然とついてくる。

「○○さん、スタンプありがとう」。出演者と視聴者が双方向で交流できる動画サービス『LINE LIVE』が、ユーザー数を伸ばしている。昨年12月のサービス開始から、月間の視聴者数は今年8月に1900万人を突破した。LINE LIVEは、国内で6000万人以上のユーザーを誇るメッセンジャーアプリ『LINE』が展開し、ユーザーは20代以下が中心。毎日、公式番組20本前後に加え、個人が1000本程度を配信している。ライブ配信は、スマホに合わせ縦長画面で行われるものが大半。視聴者がコメントを送ると画面に表示され、出演者やユーザーがリアルタイムに交流できる。「何が起こるかわからないハラハラ感や、モデルやタレントさんとコミュニケーションを取れるプライベート感が受けている」(エンターテイメント事業部の浅野裕介副事業部長)。収益柱は2つある。1つは、“ギフト”と呼ばれる有料スタンプだ。大きく派手なスタンプが画面に表示されると、やはり目立つ。これは、アイドルのコンサートにおけるサイリウムやペンライトのようなもので、一緒に番組を盛り上げようとする雰囲気が醸成される。2つ目は広告で、公式番組は1社提供が中心となっている。例えば、平日12時から生配信するトークバラエティー『さしめし』は、芸能人が食事をしながら対談する人気番組の1つ。スポンサー企業の飲料や外食チェーンのメニュー等を出演者が飲食することで、「商品がコンテンツになる。芸能人が飲食していると、視聴者は『美味しそう』『食べたい』等とコメントしてくるので、広告効果を可視化し易い」(同)。LINE LIVEには、制作会社からも番組企画が持ち込まれている。内容はバラエティー、アニメ、ドキュメンタリー等、多岐に亘る。「コンテンツを流通させるメディアの多くは、参入障壁が高い。チャレンジの場として興味を持つ人は多い」(同)。番組が増えてユーザーの裾野が広がれば、広告機会が生まれる。テレビ局との連携も進んでおり、ドラマやバラエティーの告知として楽屋内の様子等を放送直前に配信し、視聴者をテレビの前へと誘導する。「百発百中で10~20代の視聴率を上げることができる」(同)。今後は番組前後に動画広告を入れる予定で、一段の収益化を目指す。“番組”や“テレビ”といった概念を覆す動画メディアも出てきている。LINE元社長の森川亮氏が創業し、昨年サービスを開始した『C CHANNEL』。メーク、ネイル、ヘアアレンジ、料理等のハウツーが、1分程度の動画に纏まっている。まるで女性誌の特集ページが動き出したかのようだ。“クリッパー”と呼ばれる公式の投稿者らは、全員が若い女性で、一般ユーザーが自作の動画を投稿することもできる。「ターゲットに対する訴求力が大事」と森川氏が語るように、目指すのは“分散型メディア”。フェイスブック・LINE・インスタグラム等、SNSのタイムライン上に動画を大量に流し込む。

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C CHANNELの自社アプリ・サイトの視聴者数96万人に対し、SNS上を合算した総再生数は月間2.5億回に上る。この内の半分が台湾やタイ等、海外のユーザーによるものだ。海外発コンテンツの充実化に向け、現地パートナー企業とも動画制作を進めている。現在の収益柱は広告。視聴者の7割が18~34歳の女性で、化粧品・食品・飲料メーカー等が高い関心を示している。テレビと同じ動画広告を流すのではなく、商品の使い方解説やアレンジメニューといったプロモーション動画を作成・配信する。「半年から1年後には、『F1層(※20~34歳女性)と言えばC CHANNEL』と言われたい」(森川氏)。4月にはTBSテレビと資本提携し、同社のドラマの広告スポンサーがC CHANNELにも出稿する等、連携が進んでいる。「動画の最先端のモデルを作りたい」と意気込む森川氏は今後、オリジナルドラマの制作を予定する。1話1分程度の縦長動画で、課金を考えている。インターネット通販も計画する等、F1層向けメディアとして様々な仕掛けを準備している。台頭するインターネットの新興メディアに対し、大手広告代理店幹部は冷ややかだ。「世帯普及率9割のテレビに広告を出すと、短期間で新規顧客を獲得できる。インターネット広告ではたとえ1000億円投じても全世帯の4割に届けるのがやっと」。インターネットは対象者を絞り込めるのが魅力だが、訴求力ではどうしてもテレビに劣る。現状では、広告主もテレビとインターネットを巧みに使い分けている。しかしこれから、インターネット発のマスメディアが誕生しても不思議ではない。「オリンピック開催の2020年までに、家庭内のテレビがどこまでインターネットに繋がるかが焦点」(民放幹部)。テレビがインターネットに繋がると、テレビ番組とインターネット動画の境目が曖昧になる。テレビがスマホと同じように、様々なコンテンツを映し出すディスプレイとなった時、果たして“メディアの王様”としてのテレビ局はどこへ向かうのだろうか――。


キャプチャ  2016年11月19日号掲載

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テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
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