【科学捜査フロントライン】(10) 美容整形しても容易に特定! 防犯・監視カメラが解決した難事件

防犯・監視カメラの映像は、容疑者を特定するだけでなく、犯行の全容を掴む為にも欠かせないものになっている。以前であれば迷宮入りするような事件も、映像の進化で容疑者を追い詰めることができるようになった。防犯・監視カメラの映像が決め手となった事件の数々を振り返る。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

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近年は、犯罪捜査の過程で、防犯・監視カメラの映像が犯人逮捕に繋がるケースが急増している。街中至るところに設置されたカメラが、犯罪捜査に貢献しているのだ。通常、画像の解析は、カメラに記録された映像を鮮鋭化することから始まる。鮮鋭化した画像から、ある特定の情報を抜き取って解析を行うことが多い。民間の鑑定機関である『法科学鑑定研究所』で行われているそのような作業の1つに、“対人異同識別”というものがある。同研究所では警察関係者からの鑑定依頼も多いが、対人異同識別とは、例えば写真に写っているAという人物と、防犯・監視カメラに写っているBという人物とが同一か否かを特定することを言う。その際には、表面的な目鼻立ちよりも骨格に注目するという。同研究所の冨田光貴所長は、「骨格は、たとえ太ったとしても変わりません。かなり思い切った整形手術をしたとしても、同一人物であるか否かを判定することは可能です」と言い切っている。最新の画像解析による骨格の割り出しに使う方法の1つが、“逆演算投影法”だ。実際の画像より計測して得られたデータから3Dモデルを作成し、監視カメラの画像と照合する方法である。3Dの骨格図はディスプレイ上で自由に動かせる上、様々なポーズを取らせることも可能。これを監視カメラの映像と重ね合わせて、関節の位置等が合致するかどうかを確認するのである。たとえその人物が外見を外科的に変えたり、太ったり痩せたりしても、映像を解析することで個人が特定されてしまうのだという。2003年に長崎市で、12歳の男子中学生が4歳の男児に虐待を加えた後に殺害するという事件が起きた。世間を震撼させたこの事件で犯人逮捕の決め手となったのは、2人が連れ立って歩く繁華街の防犯カメラ映像だった。また、2005年にロンドンで発生した同時多発テロ事件の時には、4人の実行犯が爆弾入りのバックパックを抱えて歩く姿が駅の監視カメラに写っていたことが、犯行の全容を明らかにするのに役立っている。

更に、全国の主要道路に1500台ほど設置されている自動車ナンバー自動読取装置『Nシステム』によって、解決に導かれた事件も数多い。Nシステムは、通過した全ての車両ナンバーを自動的に読み取って記録する装置だが、犯罪に使用された車や盗難車の追跡に効果を発揮することが多いとされている。特に、広域化した犯罪の捜査には大きな威力がある。1994年に起こった『つくば市母子殺人事件』では、犯人が遺体を遺棄する為につくば市の自宅から横浜市へ向かうところが、Nシステムにしっかりと捉えられており、犯人逮捕の決め手の1つになった。また、1993年の『埼玉愛犬家連続殺人事件』でも、被害者の車が犯人の偽装工作によって移動させられた事実を、Nシステムが明らかにしている。更に、一連の『オウム真理教』に関する事件の時には、全国の拠点を車で移動する幹部たちの動きを追うのに役立ち、2008年に起こった『元厚生事務次官宅連続殺傷事件』でも、「Nシステムの記録を活用すれば犯人特定はもっと早くできた」と語る捜査関係者もいる。防犯・監視カメラの映像がきっかけとなって犯人検挙に繋がった事件として記憶に新しいのが、2015年8月に大阪府寝屋川市で発生した『中1男女殺害事件』だ。大阪府警の発表によれば、被害者の中学生に似た男女2人が、事件の起きた13日午前1時10分から5時10分までの間に、『京阪電鉄』寝屋川市駅前の商店街を歩く姿が、付近の防犯カメラに撮影されていた。更に、付近の商店街に設置されていた防犯カメラには、同日午前5時過ぎに軽ワゴン車が行き来する様子が写っていた上、遺体遺棄現場となった駐車場やその周辺にも、不審な軽ワゴン車の映像が記録されていた。大阪府警は「これらの複数のカメラに記録された車の特徴が似ている」と判断し、車の所有者から容疑者を割り出したのである。何らかの事件が発生した時に幸運にも目撃者がいれば、目撃証言を基に犯人の顔貌を再現できる。従来の犯罪捜査で中心となって行われてきたのはモンタージュだ。モンタージュとは、髪型・目・眉・口・鼻・顎・輪郭というように、様々な顔のパーツ写真を組み合わせて、目撃された犯人の顔を作り出すという手法。1968年に発生した『3億円事件』で有名になった。しかし、モンタージュの場合、沢山のサンプル写真を見ているうちに目撃者の記憶が曖昧になってしまう欠点があり、今では殆ど行われていない。現在ではインターネットやスマートフォンの普及により、容疑者と思しき人物の顔写真は、ほぼどこかに存在していると言っていい。従って、捜査側は用意した容疑者写真との照合作業を進めることになる。

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2007年3月、千葉県市川市のマンションの一室のベランダから、行方不明になっていたイギリス人女性の遺体が見つかった。遺体が発見された部屋の住人・市橋達也は、踏み込んできた捜査員を振り切って、そのまま逃走に成功。警察は、捜査員を当初の100人体制から150人体制に増員し、更に手配ポスターを3万枚以上作成する等、市橋容疑者の検挙に躍起となったが、その後の同容疑者の行方は断片的にしか掴むことができなかった。2008年には、イギリスの新聞『タイムズ』が「日本の警察は『市橋が自殺した』と断定」という記事を掲載している。日本の国家公安委員会は即座に同報道を否定するコメントを出したが、「事件が迷宮入りするのではないか」との憶測が強まっていった。ところが、翌2009年に事件は大きく動いた。同年11月、名古屋市内の美容整形外科医が、過去に行った美容整形術の患者カルテの顔写真を整理していた時、報道されていた市橋容疑者と一致する患者の顔写真を見つけたのである。男性には珍しいホクロ除去の手術をしていたことが、気付いたきっかけだった。外見を大きく変えようとして整形手術を行ったことが、逆に仇となったのだ。病院スタッフの通報を受けた捜査員が確認を取ると、骨格等が市橋容疑者のものと一致。これが急転直下の逮捕劇に繋がった。この時、市橋の特定に効果を発揮したのが“顔認証システム”だったと言われている。顔認証システムでは、顔の輪郭・目・鼻・口・耳等の各パーツの特徴を数値化して、顔そのものをバーコードのように管理する。何度整形手術を繰り返そうとも識別できるのが大きな特徴だ。人間の顔には、いくら見た目を整形しても、どうしても変えられない部分が幾つもある。そういった部分を数値化して、一致点を計測するのである。市橋容疑者逮捕の報道がされた時、それまで公開されていた写真と、逮捕された本人の顔の違いに驚いた人は少なくなかっただろう。逮捕以前に町中に貼られていた手配ポスター顔写真の市橋は、一重瞼で目と眉は細く吊り上がっていた。顎は鋭角的で、全体的にシャープな顔立ちという印象だった。ところが、逮捕された彼の顔はまるで別人。二重瞼で、どちらかといえば垂れ目にも見え、下唇は薄くなっていた。手配ポスターと比べると、鈍重な印象を与える顔貌に変貌していたのだ。この事件は、たとえ外見的な見た目が大きく変わっていたとしても、顔認証システムの数値が一致すれば、同一人物であることが見抜かれることを如実に示した事件とも言える。


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