【トランプ氏の世界】(06) 対北、制裁と圧力期待――尹徳敏氏(『韓国国立外交院』院長)

20170207 04
ドナルド・トランプ新政権の人事を見ると、2つの方向性が見える。1つはリチャード・ニクソン大統領(1969~1974)のように、「地域への安全保障に関する関与を減らし、同盟国の防衛負担を増やす」という流れだ。一方、ロナルド・レーガン大統領(1981~1989)が唱えた“強いアメリカ”を目指すという側面もある。日本や韓国との同盟の戦略的な重要性は、トランプ氏も理解していると思う。北朝鮮政策は、国際社会が築いた制裁と圧力の枠組みを引き継ぐだろう。トランプ氏は交渉に関し、「自分が達人」と思っていることもあり、これまでと異なる手法で奇襲的に問題解決を試みるかもしれない。1990年代であれば、北朝鮮の核施設への“予防攻撃”ができたかもしれないが、開発が進んだ今、ターゲットを絞るのは無理だ。アメリカが持つ精密打撃能力は高まってはいるが、北朝鮮は移動式発射台を使い、核を持っている可能性も高く、リスクが大き過ぎる。北朝鮮は昨年、2回の核実験と20発以上の弾道ミサイル発射で、核兵器の完成を既成事実化する作業をした。トランプ政権の発足後に、長距離弾道ミサイル発射や、6回目の核実験で勝負に出る可能性もある。

北朝鮮が「アメリカ本土まで届く能力を我々は放棄する」と言う可能性もあり、“核開発の凍結”で米朝に協議の接点ができるかもしれない。その時に備えた対応が必要になる。1つは、制裁による圧力の枠組みを維持することだ。「核兵器に執着する限りコストがかかる」ということを、北朝鮮に常に理解させる仕組みを作らなければいけない。それが無ければ、北朝鮮が核を放棄することはない。北朝鮮がアメリカ本土まで届くミサイルを完成させるには時間がかかるかもしれないが、韓国や日本は既に射程に入っている。我々を確実に保護できるのは、アメリカの“核の傘”しかない。アメリカが保有していた潜水艦発射型の核ミサイルを、北朝鮮の核への信頼できる抑止力として、同盟国に再び示す必要があると思う。韓国が政権移行期にあることに、北朝鮮は大きな関心を持たないだろう。北朝鮮はこれまで、自分なりのスケジュールで挑発してきた。韓国で左派政権ができたとしても、北朝鮮の態度は変わらない。大統領選の有力候補には、『開城工業団地』の再開を主張する意見もあるが、国際社会が努力して作ってきた制裁の枠組みに穴を開けるもので、北朝鮮に間違ったシグナルを送ることになる。在韓アメリカ軍への最新鋭ミサイル防衛システム『最終段階高高度地域防衛(THAAD)』についても同様だ。THAAD配備を撤回すれば、在韓アメリカ軍を1000発以上の北朝鮮のミサイルの脅威に曝すことになる。ミサイル防衛のカバーが無いところにアメリカ軍が配置されることはない。トランプ政権でそのような事態になれば、韓米同盟に大変な打撃となるだろう。

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■発言に一貫性無し
トランプ次期大統領は対北朝鮮政策について、一貫性の無い発言をしており、現時点でははっきりしない。大統領選中の昨年6月には、『朝鮮労働党』の金正恩委員長との直接対話に言及。「バラク・オバマ政権の直接対話拒否の路線を修正する」との見方もあった。しかし、金委員長が新年の辞で「アメリカ本土に到達する核ミサイルの開発が最終段階にある」と表明すると、トランプ氏は自身のツイッターで「そうはさせない」とし、「北に厳しく臨むのでは」と受け止められた。

■韓国大統領選、影響 中島健太郎(本紙ソウル支局長)
北朝鮮の核・ミサイル開発は今年、最終段階に入るとみられる。北朝鮮が“核保有国”となれば、日本を含む東アジアの安全保障環境は一変する。尹氏が指摘しているように、日本も韓国も北朝鮮の核への抑止力として、アメリカの“核の傘”とミサイル防衛に頼るしかない現実がある。日米韓の安保協力強化が急務だが、韓国では朴槿恵大統領の弾効案可決で、日本に批判的な左派の野党が影響力を強めている。一方で、在韓アメリカ軍へのミサイル防衛システム『最終段階高高度地域防衛(THAAD)』配備に反対する中国は、韓国の野党を露骨に懐柔している。今年中に行われる韓国大統領選の結果は、東アジアの地政学に大きな影響を与える。 =おわり


⦿読売新聞 2017年1月10日付掲載⦿

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テーマ : 国際政治
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